佚語を生きる! -いつがたりをいきる-  竜の一族 中巻 偽りの残滓編 

Shigeru_Kimoto

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肆場 六

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「おおりゃ!」

塀の上を激しく飛びまわり義経は斬りこんでいる。相手になっている武者は太刀に持ち替えて応戦するが義経の俊敏さが重武装の武者には応えている。攻撃しては後ろに飛び、すぐさま塀の上を駆け抜けて攻撃する。その連続だ。一方、もう一体の弓兵は義経の身軽さに狙いが定まらないでいた。塀の上で連続的に攻撃を受けていた一体が後退を余儀なくされて、足場を見失いついにバランスを崩した。それを見逃さず義経は体当たりを仕掛け---

当てられた一体ははなすすべなく庭へと落下した。

「よし、頂きだ!」

合わせるように義経も飛び降り落下した武者が仰向けになっているところに馬乗りになり脇差を首にかけ一気に引いた。

しかし、塀の一体が動きの止まった義経に狙いを定め射かけてくる。

「背から矢だ! 御曹司!」

義経の背中に命中し---

寸でのところで振り向きざまに義経が矢を掃い、倒した武者から弓矢を奪うと、既に動かなくなっている塀の上の武者を射抜いた。

「……動かないぞ。どうなった?」

動かなくなった武者を見て義経が驚いている。
そのうちに屋敷の屋根にいた二体も弁慶の投げた槍の餌食になって落ちてきた。

「よ~し。終了だ。みんなお疲れ様。初めての連携にしてはまぁ合格だな。色々細かいところはあるが初陣としては満点だ。どうだ青瓢箪。それぞれの得意な事を使って一つの目的を達成する。これは一人では出来ない。信用し命を預けられる仲間があって初めて出来る事だ。お前も信頼できる仲間を作れ。そうすれば、もっともっと強くなれる。それが理解できたなら俺のところで面倒見てやる。その間はその源氏のなんちゃらは店じまいしとけ、お前にそれを語る資格ができたら名乗ればいい。どうだ? 出来るか?」

「わかりました。よろしくお願いします」

「ふん。いつまでその謙虚さが続くのか楽しみだが、お前が一番下っ端だぞ良いな? 霞が飴買ってこいって言ったら買いに行くんだぞ。お前は“はい”以外の言葉を使えないんだからな」

「霞様、よろしくお願いいたします」

霞が恥ずかしそうに義経の顔だけを見ている。

「青瓢箪。全裸はよせ。着物を着ろ」
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