24 / 56
肆場 一
しおりを挟む
「我が源九郎義経である! 源氏の棟梁を継ぐ者と知っての狼藉か? 場合によっては一族郎党皆殺しの憂き目に合うことと心得よ」
「おい! 弁慶! お前のご主人様だってよ。何とかしろ。霞、屋敷に帰るぞ~」
吉右衛門が後ろを振り返り半笑いどころか腹を抱えて笑っている。
弁慶は口を開けたまま微動だにしない。霞が心配そうに弁慶の顔を見上げ腕をちょんちょんつついているが反応が無い。
今まで必死に探していたのがこんな奴。見たところ二十歳くらいだろう。ひょろっとした男でとても戦場で戦えるような身体つきではない。武家の棟梁……ここまで源氏は落ちたのか。吉右衛門が心で呟いていた。
部屋を出た吉右衛門は、
「ははははは~ひ~」
屋敷中に聞こえる声で大爆笑中だ。しかし、考えるにつけ笑いたくもなる。あれだけ必死に捕まっていると言われて救い出そうとしていた男がそもそも、依頼主の屋敷にいた。それだけでも十分すぎるくらいに操られていた証なのに、それが見つけてみれば、青瓢箪みたいなやつが女と真っ最中で、そこを霞の術で止めらえている。しゃべらせれば威勢だけはいい。ただのガキだ。久しぶりに自分史に残る迷勝負と言わざるを得ない。
「ちょっと吉右衛門。笑い過ぎよ。弁慶が可哀想」
後ろの霞が吉右衛門を諫めるように言っている。
それにしても不憫なのは弁慶だ。霞が言うのも、もっともだ。吉右衛門は、
『まあ、最悪、俺が雇ってやる。それで、手打ちだ。こんな奴の家来になるくらいなら。悪い話じゃないだろう。いずれ話をしよう。でも……今は面白そうだからしばらく見てよう』
「ちょっと吉右衛門。意地悪いわよ」
心を読んでいた霞が右腕を拳骨で殴ってきた。
「おい! 弁慶! お前のご主人様だってよ。何とかしろ。霞、屋敷に帰るぞ~」
吉右衛門が後ろを振り返り半笑いどころか腹を抱えて笑っている。
弁慶は口を開けたまま微動だにしない。霞が心配そうに弁慶の顔を見上げ腕をちょんちょんつついているが反応が無い。
今まで必死に探していたのがこんな奴。見たところ二十歳くらいだろう。ひょろっとした男でとても戦場で戦えるような身体つきではない。武家の棟梁……ここまで源氏は落ちたのか。吉右衛門が心で呟いていた。
部屋を出た吉右衛門は、
「ははははは~ひ~」
屋敷中に聞こえる声で大爆笑中だ。しかし、考えるにつけ笑いたくもなる。あれだけ必死に捕まっていると言われて救い出そうとしていた男がそもそも、依頼主の屋敷にいた。それだけでも十分すぎるくらいに操られていた証なのに、それが見つけてみれば、青瓢箪みたいなやつが女と真っ最中で、そこを霞の術で止めらえている。しゃべらせれば威勢だけはいい。ただのガキだ。久しぶりに自分史に残る迷勝負と言わざるを得ない。
「ちょっと吉右衛門。笑い過ぎよ。弁慶が可哀想」
後ろの霞が吉右衛門を諫めるように言っている。
それにしても不憫なのは弁慶だ。霞が言うのも、もっともだ。吉右衛門は、
『まあ、最悪、俺が雇ってやる。それで、手打ちだ。こんな奴の家来になるくらいなら。悪い話じゃないだろう。いずれ話をしよう。でも……今は面白そうだからしばらく見てよう』
「ちょっと吉右衛門。意地悪いわよ」
心を読んでいた霞が右腕を拳骨で殴ってきた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる