上 下
19 / 56

参場 一

しおりを挟む
 どこかに出かけていた吉右衛門と弁慶が屋敷に戻って来たのは午後三時過ぎだった。早速、少女のいる部屋へと静華を伴って話をしに来た。
そして、

「私の名前は霞。しばらく、ここにいてあげる事にしたわ」

現世うつしよの巫女が吉右衛門の屋敷に降臨した瞬間だ。

「靜華、あんな事、言っているけど?」

「あんたの屋敷やろ。あんたが、決めなはれ。弁慶、面倒見れるん?」

「拙僧は靜華様専属でございますので……吉右衛門どうだ?お主は美女好きであろう?」

「否定はしないが……子供は自主規制の対象だ。そもそも、靜華が連れてきたのだろう?」

「ウチは可愛いから拾っただけや、育てる自信があらへん……弁慶どうや?」

「それなら、市場にでも捨ててきましょうか? “大切にしてください”と貼り紙つけて。一緒にどうだ? 吉右衛門?」

三人が車座になって相談をぶちながら、たらい回しにしている。

「ちょっとあなた達! 私は一人で何でもできるわよ。面倒とかむしろ要らないから、だから、ここにいてあげるって言ってるでしょ。有難がりなさい!」

霞が何やらわめいてはいるが、吉右衛門は無視して考えていた。

「靜華、この自称美少女に仕事手伝わせても良い?」

「何のや? 人探しか? 危ないのはあかんよ。女の子やさかいな」

「危なくは無いよ。俺たちがいるしな。それじゃぁ決まりだ。お前、俺たちと組め。な」

霞をよそに決定する大人達。

「これから、 馬場頼嗣ばばよりつぐに会いに行く。そいつの心を読んでくれ。俺が目で合図するから本当か嘘かをお前の身振りで教えてくれればいい。簡単だろ?」

「霞。あんた、ウチらにかました、あんな大技使ったらあきまへんよ。あんた、あれやるとそのまま気絶していたやろ? それはな、使える技の大きさがあんたの身体にある力の総容量を超えてるんよ。そやさかいな、一発撃つと気絶のように行動不能に陥るんよ。小技を地味に使いなはれ」

「それじゃあ、静華があの力を使ったら?」

吉右衛門が興味本位で聞いている。

「ん? ウチか? まぁ、力が使えたころなら京の街ぐらいはいけたんちゃうか? よかったなぁ。ウチの事本気で怒らさんで。あんた、その辺は上手いもんなぁ。誰にでも特技はあるんやな。まぁ、話は終わりや。霞わかったな?」

「姉様、わかったわ。もう使わないわ。
それと、姉様に言われた通りにやるわよ。その程度の事、造作も無いわ!
二人とも、私の力をそのぼんくら頭に刻むといいわ!!」

霞が任せろと胸を叩いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

処理中です...