17 / 56
弐場 七
しおりを挟む
「お帰りぃ」
屋敷に着くと靜華が少女を寝かせている部屋から出てきて手招きしている。
「どうした?」
「起きたで」
少女は焦点が合わない目を開けて周囲を見回している。丁度、目が覚めたようだ。
二人は少女の足元に座り靜華との話に傾聴している。
靜華の寝間着を着て布団から起きている少女は、眉のところで切りそろえ肩までの黒髪を人差し指でいじりながら、段々と視線に生気が感じられてきた。
黒目がちな丸い大きな目で、まっすぐ前を見つめている。
「ここが何処かわからんやろ?」
「なんなの? あなた達?」
「安心しぃ。ウチらはあんたの味方や」
「味方って言われて、はいそうですか、とでも言うと思っているの?」
「何かやばそうな奴だな」
吉右衛門が弁慶と耳打ちしている。
「おい! そこの下郎共。何をこそこそしている」
少女が、吉右衛門と弁慶を交互に指さしている。
「弁慶~。お呼びだぞ~。お前大好物だろう。あぁ言う感じの奴」
「俺は靜華様の専属だ」
弁慶が認めた。
「なぁ。あんた名前何て言わはるん?」
靜華が少女の目を見て微笑みながら聞いている。
「あなたこそ先に名前を名乗りなさい」
靜華の顔色が変わった。それを見逃さなかった吉右衛門が、靜華の怒り迄のカウントダウンを始めた。
「あんな、ウチはあんたのこと、おっもいのにおんぶしてここまで運んだんよ。礼ぐらい言わんか!」
『はい、10。いや、5』
「誰がそんな事してくれってお願いした?」
「そ、そうやな。余計なことしたのかも、し、知れんな」
『4』
「わかればいいのよ。そんな事より寺はどうなった?」
「のうなったわ」
「そう……私だけ死ねなかったのね……」
「ねぇ。あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
『1』
「おい! このぼんくら共、何回やらせんねん! もう飽きたわ!! ぼけ+ボケで永遠にオチんやろ! 気付けや熟れ過ぎスイカ共が!! ほんまかなわんわ。ウチが滑ったみたいやろ」
急に二人に向き直りキレてくる靜華をみて、
『え? こっち』
「勉強になりました」
と弁慶は平伏している。
「もうあんたもそのくらいにしときぃ。ウチの心読んでみいや。その方が話がはやいやろ。どうぞ!」
と言って靜華は少女に正対している。
「…………」
「どうや? 理解できたか?」
靜華が穏やかな笑顔を浮かべまっすぐに見て聞いた。
「そうね……」
「それじゃあもう一回……
ねぇ、あなた何者なの?」
「私は---」
吉右衛門と弁慶が”あっ”と言う顔をした。
静華の顔がみるみる鬼のようになる。
「このどあほう! そこは“この通りの美少女よ”やろ! 積み上げた前振り全部無駄にしよったな!
お前! あん山に捨てたろか!!!」
「先に行かないから、師匠ね」
吉右衛門が靜華を羽交い絞めにして止めようとしている。弁慶は平伏して少女の代わりに靜華に 蹴られて恍惚の表情だ。
屋敷に着くと靜華が少女を寝かせている部屋から出てきて手招きしている。
「どうした?」
「起きたで」
少女は焦点が合わない目を開けて周囲を見回している。丁度、目が覚めたようだ。
二人は少女の足元に座り靜華との話に傾聴している。
靜華の寝間着を着て布団から起きている少女は、眉のところで切りそろえ肩までの黒髪を人差し指でいじりながら、段々と視線に生気が感じられてきた。
黒目がちな丸い大きな目で、まっすぐ前を見つめている。
「ここが何処かわからんやろ?」
「なんなの? あなた達?」
「安心しぃ。ウチらはあんたの味方や」
「味方って言われて、はいそうですか、とでも言うと思っているの?」
「何かやばそうな奴だな」
吉右衛門が弁慶と耳打ちしている。
「おい! そこの下郎共。何をこそこそしている」
少女が、吉右衛門と弁慶を交互に指さしている。
「弁慶~。お呼びだぞ~。お前大好物だろう。あぁ言う感じの奴」
「俺は靜華様の専属だ」
弁慶が認めた。
「なぁ。あんた名前何て言わはるん?」
靜華が少女の目を見て微笑みながら聞いている。
「あなたこそ先に名前を名乗りなさい」
靜華の顔色が変わった。それを見逃さなかった吉右衛門が、靜華の怒り迄のカウントダウンを始めた。
「あんな、ウチはあんたのこと、おっもいのにおんぶしてここまで運んだんよ。礼ぐらい言わんか!」
『はい、10。いや、5』
「誰がそんな事してくれってお願いした?」
「そ、そうやな。余計なことしたのかも、し、知れんな」
『4』
「わかればいいのよ。そんな事より寺はどうなった?」
「のうなったわ」
「そう……私だけ死ねなかったのね……」
「ねぇ。あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
「ねぇ、あなた何者なの?」
「この通りの美少女よ」
『1』
「おい! このぼんくら共、何回やらせんねん! もう飽きたわ!! ぼけ+ボケで永遠にオチんやろ! 気付けや熟れ過ぎスイカ共が!! ほんまかなわんわ。ウチが滑ったみたいやろ」
急に二人に向き直りキレてくる靜華をみて、
『え? こっち』
「勉強になりました」
と弁慶は平伏している。
「もうあんたもそのくらいにしときぃ。ウチの心読んでみいや。その方が話がはやいやろ。どうぞ!」
と言って靜華は少女に正対している。
「…………」
「どうや? 理解できたか?」
靜華が穏やかな笑顔を浮かべまっすぐに見て聞いた。
「そうね……」
「それじゃあもう一回……
ねぇ、あなた何者なの?」
「私は---」
吉右衛門と弁慶が”あっ”と言う顔をした。
静華の顔がみるみる鬼のようになる。
「このどあほう! そこは“この通りの美少女よ”やろ! 積み上げた前振り全部無駄にしよったな!
お前! あん山に捨てたろか!!!」
「先に行かないから、師匠ね」
吉右衛門が靜華を羽交い絞めにして止めようとしている。弁慶は平伏して少女の代わりに靜華に 蹴られて恍惚の表情だ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。


10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる