127 / 390
9月 リリィさんと海 (後編)
31 未海さん9
しおりを挟む
「………………」
未海さんが玄関のドアを開けて、立っていた。
「良いから、入っていなさい!!」
お母さんが振り向き、激しく言う。
「未海ちゃん! 私とお話しよ!!」
未海さんは少し前に歩み出て制するお母さんの腕を払いのけると、リリィさんの前まで進んだ。
未海さんは、口をギュッと堅く閉じているが、その視線は、子供ながらに覚悟を決めたように俺は見えていて、その視線の先にはリリィさんをハッキリととらえていて、数歩、お母さんの前に出て、リリィさんの前に立つと、ゆっくりと呼吸をして、表情を硬くした。
「リリィちゃん……ごめんなさい……私、ちゃんと、ごめんなさいも、ありがとうも言えてなかった。だから、最初に言わせて……こんなに遅くなっちゃったけど、ごめんなさい。そして、ありがとう……」
クラスでも背の小さな未海さんは、俯いて、小さくお辞儀をして、声なく涙を流していた。頭一つ大きなリリィさんは、小さく見える未海さんを抱きしめて、耳元で小さく囁く……
「……一緒に海を見に行かない?……そこで、お話し……しよう……」
未海さんが玄関のドアを開けて、立っていた。
「良いから、入っていなさい!!」
お母さんが振り向き、激しく言う。
「未海ちゃん! 私とお話しよ!!」
未海さんは少し前に歩み出て制するお母さんの腕を払いのけると、リリィさんの前まで進んだ。
未海さんは、口をギュッと堅く閉じているが、その視線は、子供ながらに覚悟を決めたように俺は見えていて、その視線の先にはリリィさんをハッキリととらえていて、数歩、お母さんの前に出て、リリィさんの前に立つと、ゆっくりと呼吸をして、表情を硬くした。
「リリィちゃん……ごめんなさい……私、ちゃんと、ごめんなさいも、ありがとうも言えてなかった。だから、最初に言わせて……こんなに遅くなっちゃったけど、ごめんなさい。そして、ありがとう……」
クラスでも背の小さな未海さんは、俯いて、小さくお辞儀をして、声なく涙を流していた。頭一つ大きなリリィさんは、小さく見える未海さんを抱きしめて、耳元で小さく囁く……
「……一緒に海を見に行かない?……そこで、お話し……しよう……」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる