15 / 390
4月 始まり
2
しおりを挟む
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「おはよう、佐藤さん」
「おはようございます」
「佐藤さん、おはようございます」
「はい、おはようございます」
俺は、今、大人気者になっている。間断なく挨拶をかわす周りのご学友。教育が行き届いたご家庭なのか、はたまた先生の教育の賜物なのか、とにかく言える事は、教室の一番後ろの窓際の机に座るどこか身の置き場を求めてそわそわしている俺に、彼、彼女たちは何ら分け隔てなく挨拶をくれ、笑顔で言葉を継いでくるのだ。
教室は、2m幅の廊下から入ると、7名×5列の並びに、整然とまでは言えないが、まあ、ある程度整って列を成し、正面の黒板へと向いている。正面の黒板の前に教壇があり、その横、教室の前側一番奥に先生の机がある。最近珍しい床が木造の昔からある学校だ。
「佐藤さん、昨日のアップされてた動画見た?」
「え? まだ、見てないです。今晩……見れるかな、時間空けてみますね」
隣の席の大垣君が自分の中のはやりものの動画についてフォローを入れてきた。昨日だったか?その話題が俺と大垣君の間でやり取りをして……たしか、“見てみます”とかなんとか、大人な回答をしたはずだが、大垣君にはその辺の機微が伝わらず、今、こうして“見てねぇのかよ“といった感じに落ちいっている。
「佐藤さんはお家に帰ったら、何してるの?」
俺の前の席に座り、身体を横に向けてお話ししてくれている、将来有望な美少女、佐々木未海さんだ。あ、前もっていておくが、俺はロリには興味がない。色々、大変な世の中だ。そんな面倒なテーマを真正面から描くほど俺は社会派ではない。宣言しておく、文部省推薦夏休み課題図書を狙いに行く。
……嘘だ。念のため。
くっきりはっきりのお顔立ちに少し茶色の髪の毛をポニーテールにして、お目目が可愛らしい、このクラスの一推し!
未海さん、可愛い~。
もう一度言う、ロリには興味がないぞ。念を押しておく。
「お家に帰ったらですか……大抵は、ご飯を食べてお風呂入って寝ます」
俺は嘘をついた。
実は、俺は勤労児童なのだ。小学校が終わると、夕飯を家で食べて、歩いて10分の勤務先へと向かう。
何故、嘘をついたのか……そうだな。それは小学生に詳細を教えたくない、知られたくない。からだ……
可愛い未海さんが笑顔でお話を継いでくるのをBGMにしながら俺はふと外の景色を眺めていた。
俺の左側には窓があり、比高30mの海岸段丘の上にある学校は、遠くには太平洋が望め、それは、朝の陽ざしを受けてキラキラと輝いて、海岸部には港が見える。海岸平野に這うように形作られた街並みは、朝の忙しい時間を行きかう車列が見て取れる。
視線を手前に落とせば、校庭゙が見え、校庭の端には、緑色のフェンスがあって、そのフェンスに沿うように桜の木々が植えられていて、今、まさに桜色の花びらが木々とグラウンドを覆いつくし、時折吹くそよ風に花弁を散らしながら、南東北のこの地に春の新学期の風景を映し出している。
「おはようございます」
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「おはよう、佐藤さん」
「おはようございます」
「佐藤さん、おはようございます」
「はい、おはようございます」
俺は、今、大人気者になっている。間断なく挨拶をかわす周りのご学友。教育が行き届いたご家庭なのか、はたまた先生の教育の賜物なのか、とにかく言える事は、教室の一番後ろの窓際の机に座るどこか身の置き場を求めてそわそわしている俺に、彼、彼女たちは何ら分け隔てなく挨拶をくれ、笑顔で言葉を継いでくるのだ。
教室は、2m幅の廊下から入ると、7名×5列の並びに、整然とまでは言えないが、まあ、ある程度整って列を成し、正面の黒板へと向いている。正面の黒板の前に教壇があり、その横、教室の前側一番奥に先生の机がある。最近珍しい床が木造の昔からある学校だ。
「佐藤さん、昨日のアップされてた動画見た?」
「え? まだ、見てないです。今晩……見れるかな、時間空けてみますね」
隣の席の大垣君が自分の中のはやりものの動画についてフォローを入れてきた。昨日だったか?その話題が俺と大垣君の間でやり取りをして……たしか、“見てみます”とかなんとか、大人な回答をしたはずだが、大垣君にはその辺の機微が伝わらず、今、こうして“見てねぇのかよ“といった感じに落ちいっている。
「佐藤さんはお家に帰ったら、何してるの?」
俺の前の席に座り、身体を横に向けてお話ししてくれている、将来有望な美少女、佐々木未海さんだ。あ、前もっていておくが、俺はロリには興味がない。色々、大変な世の中だ。そんな面倒なテーマを真正面から描くほど俺は社会派ではない。宣言しておく、文部省推薦夏休み課題図書を狙いに行く。
……嘘だ。念のため。
くっきりはっきりのお顔立ちに少し茶色の髪の毛をポニーテールにして、お目目が可愛らしい、このクラスの一推し!
未海さん、可愛い~。
もう一度言う、ロリには興味がないぞ。念を押しておく。
「お家に帰ったらですか……大抵は、ご飯を食べてお風呂入って寝ます」
俺は嘘をついた。
実は、俺は勤労児童なのだ。小学校が終わると、夕飯を家で食べて、歩いて10分の勤務先へと向かう。
何故、嘘をついたのか……そうだな。それは小学生に詳細を教えたくない、知られたくない。からだ……
可愛い未海さんが笑顔でお話を継いでくるのをBGMにしながら俺はふと外の景色を眺めていた。
俺の左側には窓があり、比高30mの海岸段丘の上にある学校は、遠くには太平洋が望め、それは、朝の陽ざしを受けてキラキラと輝いて、海岸部には港が見える。海岸平野に這うように形作られた街並みは、朝の忙しい時間を行きかう車列が見て取れる。
視線を手前に落とせば、校庭゙が見え、校庭の端には、緑色のフェンスがあって、そのフェンスに沿うように桜の木々が植えられていて、今、まさに桜色の花びらが木々とグラウンドを覆いつくし、時折吹くそよ風に花弁を散らしながら、南東北のこの地に春の新学期の風景を映し出している。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々
饕餮
ライト文芸
ここは東京郊外松平市にある商店街。
国会議員の重光幸太郎先生の地元である。
そんな商店街にある、『居酒屋とうてつ』やその周辺で繰り広げられる、一話完結型の面白おかしな商店街住人たちのひとこまです。
★このお話は、鏡野ゆう様のお話
『政治家の嫁は秘書様』https://www.alphapolis.co.jp/novel/210140744/354151981
に出てくる重光先生の地元の商店街のお話です。当然の事ながら、鏡野ゆう様には許可をいただいております。他の住人に関してもそれぞれ許可をいただいてから書いています。
★他にコラボしている作品
・『桃と料理人』http://ncode.syosetu.com/n9554cb/
・『青いヤツと特別国家公務員 - 希望が丘駅前商店街 -』http://ncode.syosetu.com/n5361cb/
・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』https://ncode.syosetu.com/n2519cc/
ぼく、パンダ
山城木緑
ライト文芸
経営難に陥った堂ヶ芝動物園。堂ヶ芝動物園は起死回生の一手として保護された子パンダを買い受ける決断をする。子パンダを担当する早坂は異変を感じていた。この子パンダは悲しみに暮れている。早坂は子パンダを中国に返してあげようと決断する。
千早さんと滝川さん
秋月真鳥
ライト文芸
私、千早(ちはや)と滝川(たきがわ)さんは、ネットを通じて知り合った親友。
毎晩、通話して、ノンアルコール飲料で飲み会をする、アラサー女子だ。
ある日、私は書店でタロットカードを買う。
それから、他人の守護獣が見えるようになったり、タロットカードを介して守護獣と話ができるようになったりしてしまう。
「スピリチュアルなんて信じてないのに!」
そう言いつつも、私と滝川さんのちょっと不思議な日々が始まる。
参考文献:『78枚のカードで占う、いちばんていねいなタロット』著者:LUA(日本文芸社)
タロットカードを介して守護獣と会話する、ちょっと不思議なアラサー女子物語。
三百字 -三百字の短編小説集-
福守りん
ライト文芸
三百字以内であること。
小説であること。
上記のルールで書かれた小説です。
二十五才~二十八才の頃に書いたものです。
今だったら書けない(書かない)ような言葉がいっぱい詰まっています。
それぞれ独立した短編が、全部で二十話です。
一話ずつ更新していきます。
彼は優しい嘘をついた。そして、私たちは本当の恋を知った。
星空永遠
ライト文芸
真夜中の教室。私は姿を見たことがないクラスメートに初めて出会った。彼は名前も知らない病気で誰にも知られずに消えたいと願っていた。
「死ぬ前に恋がしてみたいな」彼のお願いを受け入れ、仮の恋人になった私たち。
昔、気になっていた異性から振られた私は過去のトラウマから恋に臆病になっていた。
異性から裏切られることを恐れて恋に億劫な私と、死ぬ前に本物の恋を望む彼との運命は……?
☆ノベマ、小説家になろうにて同作品掲載中。
泣けない、泣かない。
黒蝶
ライト文芸
毎日絶望に耐えている少女・詩音と、偶然教育実習生として彼女の高校に行くことになった恋人・優翔。
ある事情から不登校になった少女・久遠と、通信制高校に通う恋人・大翔。
兄である優翔に憧れる弟の大翔。
しかし、そんな兄は弟の言葉に何度も救われている。
これは、そんな4人から為る物語。
《主な登場人物》
如月 詩音(きらさぎ しおん):大人しめな少女。歌うことが大好きだが、人前ではなかなか歌わない。
小野 優翔(おの ゆうと):詩音の恋人。養護教諭になる為、教育実習に偶然詩音の学校にやってくる。
水無月 久遠(みなづき くおん):家からほとんど出ない少女。読書家で努力家。
小野 大翔(おの ひろと):久遠の恋人。優翔とは兄弟。天真爛漫な性格で、人に好かれやすい。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる