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二章 哀願童女
第四十五話 見付 ‐ハッケン‐
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「ん、ぁ……」
微睡みの中に埋もれていた意識が段々と覚醒していき、閉じられていた瞼がゆっくりと開く。
無意識の小さな声を漏らして、供助は眠りから目を覚ました。
「ってて」
体を起こすと、右腕に電気が走るような痛みがした。枕代わりにしていたせいで痺れてしまったようで、右腕には畳の跡がくっきりと付いている。
昨日、太一と祥太郎がアポ無し訪問してきて、ほぼ強制的に供助の家に泊まって夜通し遊んでいた。
外が明るくなってきた辺りまでは記憶があるが、さすがに友恵の件での疲れがあって体力の限界だったらしく、気付ば供助は途中で寝落ちしてしまった。
「だぁぁぁぁ、ダメだ! 勝てる気しねぇ!」
供助がまだ少し寝ぼけ頭の状態で聞こえてきたのは、太一の叫び声であった。
諦めの言葉を言いながら持っていたゲームのコントローラーを手放す太一。テレビの画面を見ると、祥太郎と格闘ゲームで対戦したいたようだ。
「太一君のキャラは相性が悪過ぎだよ。他のキャラを使ったら?」
「いいや、このキャラは俺の魂のキャラだ。キャラ替えはしない!」
「って言ってもう十連敗だよ」
「だから必死に対策を探してるんじゃねぇかよ」
「それで見付かったの? 対策」
「次回作に期待」
「見付からなかったんだね」
「だってよー……リーチも判定も火力も、全てにおいて劣っててどう勝てってん……お、起きたか供助」
温くなったペットボトルのジュースをコップに注ぎ、キャップを閉めたところで太一が供助に気付いた。
「どんだけ寝てた?」
「今九時過ぎだから……四時間くらいか」
「あー、体が痛ぇ」
肩に手を当てながら首を回し、供助は硬くなった体をほぐす。
パキポキと数回、首の関節が鳴った。
「お前等ずっと起きてたのか?」
「うん。太一君が格ゲーやろうって言うから対戦してたんだ」
「元気だなぁ。昨日だって休みなのに学校で文化祭の準備してたんだろ?」
「供助君が寝過ぎなだけじゃない?」
「夜に寝るのは当たり前の事だろうが。それに昨日は色々あって疲れてたんだよ」
供助は祥太郎と話しながらテーブルの上のコップに手を伸ばす。
渇いた喉を潤そうと、さっき太一が飲んでいたのと同じ物を掴み取った。
「ん? なんだ供助、泣いてんのか?」
「は?」
「涙出てんぞ、涙。怖い夢でも見たかぁ?」
「んな訳あるか」
太一に言われて顔を触って見ると、確かに頬が濡れて目尻にも涙の跡があった。
そこで、自分がさっき見ていた夢を思い出した。懐かしく、優しい、昔の夢。もう何年も前の、子供の時の記憶。
「欠伸だ、欠伸」
思い出して懐かしさのあまり拭き取った涙がまた、流れ出そうになるのを堪えて。供助は適当に言って誤魔化す。
昔の夢を見て、懐かしさのあまり泣いてしまったなど……ガラじゃない事は自分が一番よくわかっている。
正直に話したとしても、太一と祥太郎はそれを小馬鹿にしたり悪戯にからかう人間ではない事も知っている。
けど、話して気を遣わせるのも嫌だし、供助は己の過去を話すのは好きじゃなかった。
「そうだ、供助。借りてた地獄担任の十二巻、前に返して欲しいってから持ってきたんだった」
「あぁ、そいやそうだったな」
太一は居間の隅に置いておいた自分の学生鞄の中から、漫画の単行本を取り出した。
既に連載は終わっているが、ギャグあり、エロあり、シリアスあり。今でも根強い人気を誇っている漫画である。
「あと悪いけどさ、次はあれ貸してくれよ。師弟ハンター」
「俺の部屋にあっから勝手に持ってけ」
「なんだよ、持ってきてくんないのかよ」
「寝起きで動きたくねぇ」
「じゃあ勝手に持ってくっかな。ついでに地獄担任も戻しとくわ」
「おう」
供助はコップに注いだ、ぬるくなって炭酸が抜けたジュースを一気に飲み干す。爽快感が無くなって一層強く感じる甘さに、口の中が妙にべたつく。
かと言ってテーブルには他に飲み物は無く、台所の冷蔵庫まで氷を取りに行くのも面倒だった。怠い訳でも、変な体勢で寝て疲れたでもない。
懐かしい夢で会った懐かしい人達。その余韻に浸りたく、ゆっくりと懐かしみたかった。かつての、大好きだった二人の記憶を。
「供助君?」
「ん? なんだ、祥太郎」
「いや、嬉しそうに笑ってたから……」
「笑ってた?」
「うん。もしかして、いい夢でも見てたの?」
供助は口へ手を当て、そこで初めて自分が笑っていたのに気付いた。
意識した行動とは別の、完全に無意識だった所を見られた事に気恥かしさから。緩んだ口元を消そうとするも、供助はすぐにやめる。
「いや、そうだな……あぁ、そうだ」
なぜならこれは、恥ずるような笑みではないから。
供助にとって誇りで、自慢で、大好きだった人達の事を思い出しての感情。その感情から生まれ落ちた笑みならば、それは隠さず素直に認めるべきだと。
「凄くいい夢を……見たんだ」
消さず、隠さず、恥ずかしがらず。
供助は感情のままに作られる表情で、祥太郎の問いに想いがままに答えた。
いい夢だったと、簡潔ながら思いが含まれた重みのある言葉で。
「そっか。いい夢を見たんなら、今日は何かいい事があるかもね」
「いや、俺にとっちゃいい夢を見れた時点でいい事があったようなもんだ。もう十分だ」
「じゃあ逆に悪い事が起きちゃったりして」
「勘弁してくれ。いい夢見て気分がいいんだからよ」
「あはは、冗談だってば」
供助はテーブルに頬杖をつき、祥太郎の冗談に半開きの目を向ける。
太一がさっき九時過ぎと言っていたのを思い出し、朝御飯を食べていない事に気付く。
夜中に遊びながらスナック菓子などは食べていたが、ちゃんとした食事は摂っていなかった。さっきまでは何とも思ってなかったが、意識すると急に腹が空いてくる。
「なぁ祥太郎、朝飯どうする? 俺は昨夜に買ってきた半額弁当の余りがあるからいいけど、お前等はコンビニでも行ってなんか買ってくるか?」
「そうだね、さすがにお腹空いたし。太一君が戻ってきたら買いに行こうかな」
「んじゃ、飲み物も頼むわ。もう残り少ねぇし」
「供助君は一緒に行かないの?」
「面倒だから行かねぇ。自分の分の飯があんのに行く必要無ぇしな」
気怠そうにしながら、大きく欠伸する供助。
それに居間の掃き出し窓から見える空は天気が良くて、今日も暑くなりそうだった。
暑い中歩いて汗をかきたくないし、休日なのに疲れるのも嫌だった。たかだかコンビニまで行くだけで疲れるかと聞かれたら、そこまで疲れはしない。要はただ単に面倒臭いだけである。
「つーか太一の奴、漫画を持ってくるだけにしちゃ遅くねぇか?」
「僕も思ってた。見付かんな……」
供助と太一が開けっ放しにされた居間の戸から、廊下に見える階段へと目を向けた時だった。
『――――――ッ!?』
どたん、ばたん、ずどん。
二階から騒がしく暴れるような音と、太一が何か叫ぶ声が聞こえてきた。聞こえただけで、なんて言っていたかまでは解らなかったが。
「なんだぁ?」
「本棚を倒しちゃったのかな?」
「にしては騒がしい音が長く聞こえ―――」
供助は言葉を途中で止め、ここで自分が失念していた事に気付いて青ざめる。
寝起きで頭がまだ完全に働いていなかったのに加えて、久々に見た両親の夢にばかり意識が行っていて忘れていた。
供助が固まっている間にも騒音は二階から聞こえ、それどころか段々と大きくなって近付いてくる。
「もう手遅れだな、こりゃ」
頬杖をしていた手で顔を覆い、ぐったり項垂れる供助。
この後に起こるであろうイベントをどう躱そうかと頭を悩ますが、どう考えても打開策が思い浮かばない。
もしゲームみたいに選択肢が出てくるとしたら、全ての選択肢が『躱せない。現実は非情である』になっているだろう。
「待て、コラこのっ!」
太一の声と共に、ドタバタと階段を降りる足音。
台詞からして何かを追っているようで、残念ながら供助にはその心当たりがあった。
そして、供助が再度廊下の階段へと視線をやると。バスケットボール大の黒い物体が、供助の顔面を目掛けて飛んできた。
「ふにゃーーっ!」
「んがっ!?」
ビターン、と。それはもう力士がビンタをぶちかましたような音。顔に衝撃が来てよろめくも、供助はなんとか持ち直して態勢を整える。
視界は真っ暗になって何も見えない。見えない……が、供助は原因が何なのかは理解していた。
なんせ視界が暗くなる直前に、半べそをかいて突進してくる黒い猫が見えたからだ。
「わ、わ、一体なんなの、太一君!?」
「供助、そのまま動くな! 今俺が捕まえて……」
急に騒がしくなった居間に戸惑う祥太郎と、息を荒げて距離を詰める太一。起きて早々、面倒な事が起きたと心の中で愚痴る供助。
とりあえず息苦しいので、顔面にしがみ付いている猫又を掴んで引き剥がす。
「息が出来ねぇだろうが、離れろ」
むんずと掴んだ所は首根っこで、猫又は顔から簡単に離れた。
「ね、猫っ!?」
「供助の部屋で漫画探していたら、この黒猫が布団の上で寝ててさ。捕まえようとしたら起きて逃げるんだもんよ」
「二階に居たって事は窓から入ったのかな? それとも一階から入って知らない内に二階に行ったのかも」
「どっから入ったのか分からないけど、とりあえず外に出そうと思ったら今に至る」
「首輪付けてるし、どこかの飼い猫みたいだね。飼い主が心配してるだろうから早く外に出してあげないと」
供助に首根っこ掴まれて宙ぶらりんの猫又を見ながら会話する太一と祥太郎。
「あー、その、なんだ……こいつはウチのだ」
「はぁ!?」
「えぇっ!?」
なんかもう言い訳やどう誤魔化すかを考えるのが面倒臭くなって、空いた左手で頭を一度掻いて。
とりあえず正直に黒猫は自分の家のだと教えると、二人は素っ頓狂な声を上げた。
「供助が飼ってんのか!? 猫を!?」
「まぁな」
「あの面倒臭がり屋で動物の世話なんて似合わない粗雑な供助君が!?」
「祥太郎、お前何気に言いたい放題だな」
しかしまぁ予想通りの反応だと、供助は小さく肩を揺らした。
自分の性格は知っているし、周りからの印象も重々承知している。だから、この反応は至って当たり前のものだ。
数週間前の供助本人だって、まさか妖怪とは言え猫と一緒に暮らすことになるとは思ってもいなかったのだから。
「いつから動物愛護に目覚めたんだ、供助」
「んなモンに目覚めたつもりも、この先目覚めるつもりも無ぇよ」
「じゃあどうして猫を飼ってるの?」
「ちょいとバイト先で頼まれちまってな。しばらく預かる事になったんだ」
二人の質問に答えていく供助。
詳しく教える訳にはいかないが、霊能関係に触れない範疇でなら答えても問題ない。なので、それなりに正直に話す。
「へぇ、供助が猫をねぇ……似合わないな」
「言うな。自分でも解ってる」
再び右肘をテーブルに突いて頬杖し、左手で掴み上げる猫又を半目で見やる。
太一に言われるまでもなく、動物を飼うなんて似合っていないのは自分が一番知っている。
そもそも自分以外の生き物の面倒を見るなんて事は、一人暮らしで自分が食っていくだけで精一杯の供助には無理である。
猫又が妖怪で言葉が通じるお陰でなんとかなっているだけで、普通の犬猫だったらとっとと家から追っ払っているところだ。
「でも、供助君は一人暮らしだから賑やかになって寂しさが紛れるんじゃない?」
「あぁ? 寂しくねぇし、一人の方が楽だっつの。それに大食らいで食費が嵩むし、ぎゃあぎゃあ騒いで喧し……あだっ!?」
供助が太一に喋っていると、供助に掴まれていた猫又が大きく体を揺らして猫キック。その反動を利用して、猫又は供助の手から逃れて畳の上に着地した。
いつもだったら蹴ってきた猫又に文句の一つでも言っているところだが、今は太一と祥太郎が居る。
供助は喉まで出かけた言葉を飲み込み、何食わぬ顔で前足を舐めている猫又を一瞥して我慢する。
「まぁなんだ、そんな訳で今は俺の家で猫が居候してんだわ」
供助は蹴られた顎を擦り、猫又は前足を前に出して背伸びする。
「ふーん、なんのバイトしてっかは知らないけど、面倒な仕事もあるもんだな。猫を預かって世話するなんてよ。いつもは夜中にバイトしてるらしいし、大変だな」
「全くだ。面倒ったりゃありゃしねぇ」
「供助がやってるバイトって何でも屋かなんかなのか?」
「何でも屋でも万事屋でもねぇよ。仕事先の上司から殆んど強制的に寄越されただけだ。誰が好き好んでこんなの飼うか」
横田に言葉巧みに言いくるめられて猫又と同居する事になった為、供助の台詞もありがち間違っていない。
横に居る猫又が何度か膝に猫パンチをしてきたが、痛くも痒くもないので供助は無視して話を続ける。
「でもいいんじゃないかな? 供助君の家に癒しキャラが出来たって考えれば」
「癒しどころか卑しいだけだぞ、この糞猫は。食っちゃ寝ばっかだからな」
先程の猫キックのお返しとばかりに悪たれ口を言う供助に、猫又は猫パンチを繰り出す。
太一と祥太郎が居て喋れず人型にもなれない猫又の、せめてもの抵抗である。
「つーか、朝飯買いにコンビニ行くんだろ。外が暑くなる前に行ってこいって」
「あ、そうだったね。太一君、朝御飯買いにコンビニ行こうよ」
「そういや食ってなかったな。よし、ちょっと行ってくるか」
太一は自分の学生鞄から財布を取り出して、よっこらせ、なんて台詞を吐いて立ち上がる。
「ん? 供助、お前は行かないのか?」
「俺は昨日買っといた弁当があっからな。二人で行ってこい」
「まぁたいつもの半額弁当か」
「居候が出来ちまったからな。余計節約しねぇといけねぇんだよ」
これみよがしに大きな溜め息を吐く供助。
節約は小さな事からコツコツと。されどお金は貯まらない。
「供助君、何か猫ちゃんに買ってくる?」
「じゃあ猫には猫らしく、百円で買えるやっすい猫缶でも買っ……あだっ!」
猫パンチ……ではなく、爪を供助の足の裏に突き立てる猫又。
効果が無かった猫パンチの発展上位技、猫クロー。効果、意外と痛い。
「あー、こいつにも買い置きがあるからやっぱ要らねぇ。とりあえず飲みモンだけ頼む」
「わかった。お菓子も適当に買ってくるよ」
「おう、俺は少し片付けとくわ」
元は猫のクセに猫又は人間食を好み、中途半端にグルメだから面倒臭いし金が掛かる。
グルメじゃないガラガラヘビみたく、なんでもペロリしてくれれば安っぽいキャットフードで済むというのに。
太一と祥太郎が居間から出ていき、玄関の戸を閉める音が聞こえたのを確認する。
「供助……誰がぎゃあぎゃあ騒いで喧しく、食っちゃ寝しとる糞猫だと?」
「お前ぇ以外に誰がいんだよ」
「私とてしっかりと払い屋の手伝いをしておろうが! まるで何もしていないように言いおって!」
「あーはいはい、わかったわかった」
「なんだの、その投げやりな態度と言葉はっ!」
「お前ぇと長話してる暇はねぇの。太一達が戻ってくる前に飯の準備しねぇと。アイツ等が居ない間じゃねぇと、お前が弁当食えねぇからな」
テーブルに手を掛けて立ち上がり、供助はのそのそと隣りの台所へと移動する。
その後ろを猫又は首輪の鈴を鳴らして付いていく。
「それとも本当に朝飯が猫缶になってもいいのか?」
「断っ然っ! 弁当の方がいいの!」
「今冷蔵庫から出してチンすっから、少し待ってろ」
「ちなみに何の弁当かの?」
「鮭弁」
「えー、それ昨夜と同じ弁当だのぅ」
「食えるだけ有り難いと思え。俺だってお前と同じ鮭弁なんだからよ」
「供助は昨夜のり弁を食ったではないか!」
供助は冷蔵庫に仕舞っておいた半額弁当を取り出す。
冷蔵庫の中は殆んどスカスカで、あるのは調味料とペットボトルの烏龍茶ぐらい。
供助は自炊をしないので食材を買い貯める事は無い。なので冷蔵庫はほぼ半額弁当専用になっていた。
「のぅ、供助」
「あん?」
「あの二人、とても気の良い友人ではないか」
「一人はお前を追っかけ回したのにか?」
「う、む……あれは正直驚いたの。起きたら目の前に人が居たんだからの」
「部屋に入ってきた所で気付かなかったのかよ。どんだけ爆睡してたんだ、お前ぇは」
供助は猫又と話しながら電子レンジを開け、中に弁当を入れて温める時間を設定する。
「前に言ったの? 私は人を見る目はあるとな」
「あー、言ってたような気はする」
「私の事はともかく、供助が霊が見えてどんなバイトをしているか……話してもいいんではないかの?」
ボタンを押して温める時間を設定していた供助の手が、ピタリと止まった。
「供助も気付いておったろう? あの金髪の友人、太一と言ったか……バイトの話が出た時、少しばかり心配そうにしておったぞ」
「……あぁ」
「供助の事情を察して余り深く聞こうとせんのだろうが、少しでも相手を安心させるのも友人としての勤めではないか? 仲が良い友人ならば、尚更の」
「友人として、か」
「あの二人ならば理解してくれると思うがのぅ」
「……猫又」
「なんだの?」
供助は振り向かず。電子レンジの窓に反射して映った自分の顔を見つめ。
抑揚が無く、しかし感情は深く。
「仲が良いから全てを話せるんじゃねぇよ」
供助は思い出す。さっきまで見ていた昔の、懐かしい夢を。かつての両親。暖かく優しかった母と、強く逞しかった父。
だが、その反面……辛い記憶でもある。疎外され一人ぼっちだった頃の、冷たく寂しい過去。幽霊が見えるだけで、他の人には見えないものが見えるだけで……気味悪がられて遠ざかっていく。
供助は知っている。人は自分と異なるモノを忌み嫌う事を。身をもって、知った。
だから、だからこそ、供助は。
「仲が良いからこそ、話せねぇ事があんだ」
怖いのだ。霊能力の事を話すのが怖くて怖くて。
大切な友人を失ってしまうのが――――怖くて、堪らない。
微睡みの中に埋もれていた意識が段々と覚醒していき、閉じられていた瞼がゆっくりと開く。
無意識の小さな声を漏らして、供助は眠りから目を覚ました。
「ってて」
体を起こすと、右腕に電気が走るような痛みがした。枕代わりにしていたせいで痺れてしまったようで、右腕には畳の跡がくっきりと付いている。
昨日、太一と祥太郎がアポ無し訪問してきて、ほぼ強制的に供助の家に泊まって夜通し遊んでいた。
外が明るくなってきた辺りまでは記憶があるが、さすがに友恵の件での疲れがあって体力の限界だったらしく、気付ば供助は途中で寝落ちしてしまった。
「だぁぁぁぁ、ダメだ! 勝てる気しねぇ!」
供助がまだ少し寝ぼけ頭の状態で聞こえてきたのは、太一の叫び声であった。
諦めの言葉を言いながら持っていたゲームのコントローラーを手放す太一。テレビの画面を見ると、祥太郎と格闘ゲームで対戦したいたようだ。
「太一君のキャラは相性が悪過ぎだよ。他のキャラを使ったら?」
「いいや、このキャラは俺の魂のキャラだ。キャラ替えはしない!」
「って言ってもう十連敗だよ」
「だから必死に対策を探してるんじゃねぇかよ」
「それで見付かったの? 対策」
「次回作に期待」
「見付からなかったんだね」
「だってよー……リーチも判定も火力も、全てにおいて劣っててどう勝てってん……お、起きたか供助」
温くなったペットボトルのジュースをコップに注ぎ、キャップを閉めたところで太一が供助に気付いた。
「どんだけ寝てた?」
「今九時過ぎだから……四時間くらいか」
「あー、体が痛ぇ」
肩に手を当てながら首を回し、供助は硬くなった体をほぐす。
パキポキと数回、首の関節が鳴った。
「お前等ずっと起きてたのか?」
「うん。太一君が格ゲーやろうって言うから対戦してたんだ」
「元気だなぁ。昨日だって休みなのに学校で文化祭の準備してたんだろ?」
「供助君が寝過ぎなだけじゃない?」
「夜に寝るのは当たり前の事だろうが。それに昨日は色々あって疲れてたんだよ」
供助は祥太郎と話しながらテーブルの上のコップに手を伸ばす。
渇いた喉を潤そうと、さっき太一が飲んでいたのと同じ物を掴み取った。
「ん? なんだ供助、泣いてんのか?」
「は?」
「涙出てんぞ、涙。怖い夢でも見たかぁ?」
「んな訳あるか」
太一に言われて顔を触って見ると、確かに頬が濡れて目尻にも涙の跡があった。
そこで、自分がさっき見ていた夢を思い出した。懐かしく、優しい、昔の夢。もう何年も前の、子供の時の記憶。
「欠伸だ、欠伸」
思い出して懐かしさのあまり拭き取った涙がまた、流れ出そうになるのを堪えて。供助は適当に言って誤魔化す。
昔の夢を見て、懐かしさのあまり泣いてしまったなど……ガラじゃない事は自分が一番よくわかっている。
正直に話したとしても、太一と祥太郎はそれを小馬鹿にしたり悪戯にからかう人間ではない事も知っている。
けど、話して気を遣わせるのも嫌だし、供助は己の過去を話すのは好きじゃなかった。
「そうだ、供助。借りてた地獄担任の十二巻、前に返して欲しいってから持ってきたんだった」
「あぁ、そいやそうだったな」
太一は居間の隅に置いておいた自分の学生鞄の中から、漫画の単行本を取り出した。
既に連載は終わっているが、ギャグあり、エロあり、シリアスあり。今でも根強い人気を誇っている漫画である。
「あと悪いけどさ、次はあれ貸してくれよ。師弟ハンター」
「俺の部屋にあっから勝手に持ってけ」
「なんだよ、持ってきてくんないのかよ」
「寝起きで動きたくねぇ」
「じゃあ勝手に持ってくっかな。ついでに地獄担任も戻しとくわ」
「おう」
供助はコップに注いだ、ぬるくなって炭酸が抜けたジュースを一気に飲み干す。爽快感が無くなって一層強く感じる甘さに、口の中が妙にべたつく。
かと言ってテーブルには他に飲み物は無く、台所の冷蔵庫まで氷を取りに行くのも面倒だった。怠い訳でも、変な体勢で寝て疲れたでもない。
懐かしい夢で会った懐かしい人達。その余韻に浸りたく、ゆっくりと懐かしみたかった。かつての、大好きだった二人の記憶を。
「供助君?」
「ん? なんだ、祥太郎」
「いや、嬉しそうに笑ってたから……」
「笑ってた?」
「うん。もしかして、いい夢でも見てたの?」
供助は口へ手を当て、そこで初めて自分が笑っていたのに気付いた。
意識した行動とは別の、完全に無意識だった所を見られた事に気恥かしさから。緩んだ口元を消そうとするも、供助はすぐにやめる。
「いや、そうだな……あぁ、そうだ」
なぜならこれは、恥ずるような笑みではないから。
供助にとって誇りで、自慢で、大好きだった人達の事を思い出しての感情。その感情から生まれ落ちた笑みならば、それは隠さず素直に認めるべきだと。
「凄くいい夢を……見たんだ」
消さず、隠さず、恥ずかしがらず。
供助は感情のままに作られる表情で、祥太郎の問いに想いがままに答えた。
いい夢だったと、簡潔ながら思いが含まれた重みのある言葉で。
「そっか。いい夢を見たんなら、今日は何かいい事があるかもね」
「いや、俺にとっちゃいい夢を見れた時点でいい事があったようなもんだ。もう十分だ」
「じゃあ逆に悪い事が起きちゃったりして」
「勘弁してくれ。いい夢見て気分がいいんだからよ」
「あはは、冗談だってば」
供助はテーブルに頬杖をつき、祥太郎の冗談に半開きの目を向ける。
太一がさっき九時過ぎと言っていたのを思い出し、朝御飯を食べていない事に気付く。
夜中に遊びながらスナック菓子などは食べていたが、ちゃんとした食事は摂っていなかった。さっきまでは何とも思ってなかったが、意識すると急に腹が空いてくる。
「なぁ祥太郎、朝飯どうする? 俺は昨夜に買ってきた半額弁当の余りがあるからいいけど、お前等はコンビニでも行ってなんか買ってくるか?」
「そうだね、さすがにお腹空いたし。太一君が戻ってきたら買いに行こうかな」
「んじゃ、飲み物も頼むわ。もう残り少ねぇし」
「供助君は一緒に行かないの?」
「面倒だから行かねぇ。自分の分の飯があんのに行く必要無ぇしな」
気怠そうにしながら、大きく欠伸する供助。
それに居間の掃き出し窓から見える空は天気が良くて、今日も暑くなりそうだった。
暑い中歩いて汗をかきたくないし、休日なのに疲れるのも嫌だった。たかだかコンビニまで行くだけで疲れるかと聞かれたら、そこまで疲れはしない。要はただ単に面倒臭いだけである。
「つーか太一の奴、漫画を持ってくるだけにしちゃ遅くねぇか?」
「僕も思ってた。見付かんな……」
供助と太一が開けっ放しにされた居間の戸から、廊下に見える階段へと目を向けた時だった。
『――――――ッ!?』
どたん、ばたん、ずどん。
二階から騒がしく暴れるような音と、太一が何か叫ぶ声が聞こえてきた。聞こえただけで、なんて言っていたかまでは解らなかったが。
「なんだぁ?」
「本棚を倒しちゃったのかな?」
「にしては騒がしい音が長く聞こえ―――」
供助は言葉を途中で止め、ここで自分が失念していた事に気付いて青ざめる。
寝起きで頭がまだ完全に働いていなかったのに加えて、久々に見た両親の夢にばかり意識が行っていて忘れていた。
供助が固まっている間にも騒音は二階から聞こえ、それどころか段々と大きくなって近付いてくる。
「もう手遅れだな、こりゃ」
頬杖をしていた手で顔を覆い、ぐったり項垂れる供助。
この後に起こるであろうイベントをどう躱そうかと頭を悩ますが、どう考えても打開策が思い浮かばない。
もしゲームみたいに選択肢が出てくるとしたら、全ての選択肢が『躱せない。現実は非情である』になっているだろう。
「待て、コラこのっ!」
太一の声と共に、ドタバタと階段を降りる足音。
台詞からして何かを追っているようで、残念ながら供助にはその心当たりがあった。
そして、供助が再度廊下の階段へと視線をやると。バスケットボール大の黒い物体が、供助の顔面を目掛けて飛んできた。
「ふにゃーーっ!」
「んがっ!?」
ビターン、と。それはもう力士がビンタをぶちかましたような音。顔に衝撃が来てよろめくも、供助はなんとか持ち直して態勢を整える。
視界は真っ暗になって何も見えない。見えない……が、供助は原因が何なのかは理解していた。
なんせ視界が暗くなる直前に、半べそをかいて突進してくる黒い猫が見えたからだ。
「わ、わ、一体なんなの、太一君!?」
「供助、そのまま動くな! 今俺が捕まえて……」
急に騒がしくなった居間に戸惑う祥太郎と、息を荒げて距離を詰める太一。起きて早々、面倒な事が起きたと心の中で愚痴る供助。
とりあえず息苦しいので、顔面にしがみ付いている猫又を掴んで引き剥がす。
「息が出来ねぇだろうが、離れろ」
むんずと掴んだ所は首根っこで、猫又は顔から簡単に離れた。
「ね、猫っ!?」
「供助の部屋で漫画探していたら、この黒猫が布団の上で寝ててさ。捕まえようとしたら起きて逃げるんだもんよ」
「二階に居たって事は窓から入ったのかな? それとも一階から入って知らない内に二階に行ったのかも」
「どっから入ったのか分からないけど、とりあえず外に出そうと思ったら今に至る」
「首輪付けてるし、どこかの飼い猫みたいだね。飼い主が心配してるだろうから早く外に出してあげないと」
供助に首根っこ掴まれて宙ぶらりんの猫又を見ながら会話する太一と祥太郎。
「あー、その、なんだ……こいつはウチのだ」
「はぁ!?」
「えぇっ!?」
なんかもう言い訳やどう誤魔化すかを考えるのが面倒臭くなって、空いた左手で頭を一度掻いて。
とりあえず正直に黒猫は自分の家のだと教えると、二人は素っ頓狂な声を上げた。
「供助が飼ってんのか!? 猫を!?」
「まぁな」
「あの面倒臭がり屋で動物の世話なんて似合わない粗雑な供助君が!?」
「祥太郎、お前何気に言いたい放題だな」
しかしまぁ予想通りの反応だと、供助は小さく肩を揺らした。
自分の性格は知っているし、周りからの印象も重々承知している。だから、この反応は至って当たり前のものだ。
数週間前の供助本人だって、まさか妖怪とは言え猫と一緒に暮らすことになるとは思ってもいなかったのだから。
「いつから動物愛護に目覚めたんだ、供助」
「んなモンに目覚めたつもりも、この先目覚めるつもりも無ぇよ」
「じゃあどうして猫を飼ってるの?」
「ちょいとバイト先で頼まれちまってな。しばらく預かる事になったんだ」
二人の質問に答えていく供助。
詳しく教える訳にはいかないが、霊能関係に触れない範疇でなら答えても問題ない。なので、それなりに正直に話す。
「へぇ、供助が猫をねぇ……似合わないな」
「言うな。自分でも解ってる」
再び右肘をテーブルに突いて頬杖し、左手で掴み上げる猫又を半目で見やる。
太一に言われるまでもなく、動物を飼うなんて似合っていないのは自分が一番知っている。
そもそも自分以外の生き物の面倒を見るなんて事は、一人暮らしで自分が食っていくだけで精一杯の供助には無理である。
猫又が妖怪で言葉が通じるお陰でなんとかなっているだけで、普通の犬猫だったらとっとと家から追っ払っているところだ。
「でも、供助君は一人暮らしだから賑やかになって寂しさが紛れるんじゃない?」
「あぁ? 寂しくねぇし、一人の方が楽だっつの。それに大食らいで食費が嵩むし、ぎゃあぎゃあ騒いで喧し……あだっ!?」
供助が太一に喋っていると、供助に掴まれていた猫又が大きく体を揺らして猫キック。その反動を利用して、猫又は供助の手から逃れて畳の上に着地した。
いつもだったら蹴ってきた猫又に文句の一つでも言っているところだが、今は太一と祥太郎が居る。
供助は喉まで出かけた言葉を飲み込み、何食わぬ顔で前足を舐めている猫又を一瞥して我慢する。
「まぁなんだ、そんな訳で今は俺の家で猫が居候してんだわ」
供助は蹴られた顎を擦り、猫又は前足を前に出して背伸びする。
「ふーん、なんのバイトしてっかは知らないけど、面倒な仕事もあるもんだな。猫を預かって世話するなんてよ。いつもは夜中にバイトしてるらしいし、大変だな」
「全くだ。面倒ったりゃありゃしねぇ」
「供助がやってるバイトって何でも屋かなんかなのか?」
「何でも屋でも万事屋でもねぇよ。仕事先の上司から殆んど強制的に寄越されただけだ。誰が好き好んでこんなの飼うか」
横田に言葉巧みに言いくるめられて猫又と同居する事になった為、供助の台詞もありがち間違っていない。
横に居る猫又が何度か膝に猫パンチをしてきたが、痛くも痒くもないので供助は無視して話を続ける。
「でもいいんじゃないかな? 供助君の家に癒しキャラが出来たって考えれば」
「癒しどころか卑しいだけだぞ、この糞猫は。食っちゃ寝ばっかだからな」
先程の猫キックのお返しとばかりに悪たれ口を言う供助に、猫又は猫パンチを繰り出す。
太一と祥太郎が居て喋れず人型にもなれない猫又の、せめてもの抵抗である。
「つーか、朝飯買いにコンビニ行くんだろ。外が暑くなる前に行ってこいって」
「あ、そうだったね。太一君、朝御飯買いにコンビニ行こうよ」
「そういや食ってなかったな。よし、ちょっと行ってくるか」
太一は自分の学生鞄から財布を取り出して、よっこらせ、なんて台詞を吐いて立ち上がる。
「ん? 供助、お前は行かないのか?」
「俺は昨日買っといた弁当があっからな。二人で行ってこい」
「まぁたいつもの半額弁当か」
「居候が出来ちまったからな。余計節約しねぇといけねぇんだよ」
これみよがしに大きな溜め息を吐く供助。
節約は小さな事からコツコツと。されどお金は貯まらない。
「供助君、何か猫ちゃんに買ってくる?」
「じゃあ猫には猫らしく、百円で買えるやっすい猫缶でも買っ……あだっ!」
猫パンチ……ではなく、爪を供助の足の裏に突き立てる猫又。
効果が無かった猫パンチの発展上位技、猫クロー。効果、意外と痛い。
「あー、こいつにも買い置きがあるからやっぱ要らねぇ。とりあえず飲みモンだけ頼む」
「わかった。お菓子も適当に買ってくるよ」
「おう、俺は少し片付けとくわ」
元は猫のクセに猫又は人間食を好み、中途半端にグルメだから面倒臭いし金が掛かる。
グルメじゃないガラガラヘビみたく、なんでもペロリしてくれれば安っぽいキャットフードで済むというのに。
太一と祥太郎が居間から出ていき、玄関の戸を閉める音が聞こえたのを確認する。
「供助……誰がぎゃあぎゃあ騒いで喧しく、食っちゃ寝しとる糞猫だと?」
「お前ぇ以外に誰がいんだよ」
「私とてしっかりと払い屋の手伝いをしておろうが! まるで何もしていないように言いおって!」
「あーはいはい、わかったわかった」
「なんだの、その投げやりな態度と言葉はっ!」
「お前ぇと長話してる暇はねぇの。太一達が戻ってくる前に飯の準備しねぇと。アイツ等が居ない間じゃねぇと、お前が弁当食えねぇからな」
テーブルに手を掛けて立ち上がり、供助はのそのそと隣りの台所へと移動する。
その後ろを猫又は首輪の鈴を鳴らして付いていく。
「それとも本当に朝飯が猫缶になってもいいのか?」
「断っ然っ! 弁当の方がいいの!」
「今冷蔵庫から出してチンすっから、少し待ってろ」
「ちなみに何の弁当かの?」
「鮭弁」
「えー、それ昨夜と同じ弁当だのぅ」
「食えるだけ有り難いと思え。俺だってお前と同じ鮭弁なんだからよ」
「供助は昨夜のり弁を食ったではないか!」
供助は冷蔵庫に仕舞っておいた半額弁当を取り出す。
冷蔵庫の中は殆んどスカスカで、あるのは調味料とペットボトルの烏龍茶ぐらい。
供助は自炊をしないので食材を買い貯める事は無い。なので冷蔵庫はほぼ半額弁当専用になっていた。
「のぅ、供助」
「あん?」
「あの二人、とても気の良い友人ではないか」
「一人はお前を追っかけ回したのにか?」
「う、む……あれは正直驚いたの。起きたら目の前に人が居たんだからの」
「部屋に入ってきた所で気付かなかったのかよ。どんだけ爆睡してたんだ、お前ぇは」
供助は猫又と話しながら電子レンジを開け、中に弁当を入れて温める時間を設定する。
「前に言ったの? 私は人を見る目はあるとな」
「あー、言ってたような気はする」
「私の事はともかく、供助が霊が見えてどんなバイトをしているか……話してもいいんではないかの?」
ボタンを押して温める時間を設定していた供助の手が、ピタリと止まった。
「供助も気付いておったろう? あの金髪の友人、太一と言ったか……バイトの話が出た時、少しばかり心配そうにしておったぞ」
「……あぁ」
「供助の事情を察して余り深く聞こうとせんのだろうが、少しでも相手を安心させるのも友人としての勤めではないか? 仲が良い友人ならば、尚更の」
「友人として、か」
「あの二人ならば理解してくれると思うがのぅ」
「……猫又」
「なんだの?」
供助は振り向かず。電子レンジの窓に反射して映った自分の顔を見つめ。
抑揚が無く、しかし感情は深く。
「仲が良いから全てを話せるんじゃねぇよ」
供助は思い出す。さっきまで見ていた昔の、懐かしい夢を。かつての両親。暖かく優しかった母と、強く逞しかった父。
だが、その反面……辛い記憶でもある。疎外され一人ぼっちだった頃の、冷たく寂しい過去。幽霊が見えるだけで、他の人には見えないものが見えるだけで……気味悪がられて遠ざかっていく。
供助は知っている。人は自分と異なるモノを忌み嫌う事を。身をもって、知った。
だから、だからこそ、供助は。
「仲が良いからこそ、話せねぇ事があんだ」
怖いのだ。霊能力の事を話すのが怖くて怖くて。
大切な友人を失ってしまうのが――――怖くて、堪らない。
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