上 下
36 / 44
世界樹

鍛冶屋

しおりを挟む
(知らない・・・・・・)

 天井ではなかった。
 クレールに来て泊まった宿屋で目を覚ます。体が少し気怠いが、体を起こすと同時に扉が開かれた。

「「ユリト様おはようございます」」

 メフィスとラファが挨拶をしてくる。
 赤紫の眼光も牙もなくラファは本来の姿に戻っていた。
 2人に倒れた後のことを聞いたが、俺は丸2日間眠っていたらしい。その間に2人でクレールの依頼をすべて達成したと報告された。アイテム欄には依頼の倍以上ドロップ品が溢れていた。関係ないモンスターのアイテムまで存在する。メフィスは戦闘できなかった鬱憤があり、ラファは元の姿に戻るまで闘争心が消えなかったのだろう。戦闘メイド達め。別に問題があるわけではないので追及することはしなかった。

「2人ともありがとうな。世界樹に戻って納品しにいきますか」
「「かしこまりました」」

 戻る時に冒険者ギルドを通ったが、たくさんの視線を浴びるだけで問題は起きず世界樹に無事帰還できた。そして俺達は依頼リストに書かれている商店に各アイテムを届け、最後の鍛冶屋まできた。
 中に入ると火炉があり、鉄床で小学生くらいの男の子がハンマーで剣を生成している所だった。

(子供?)

 男の子からハンマーが飛んでくる。顔に飛んでくるハンマーの柄を綺麗に右手で掴む。
 あぶねえ俺以外の奴なら死んでいるぞ。

「誰が子供だ!詩音から聞いてるぞユリトだろ。俺は20歳だ。称号のせいでこんな子供みたいな恰好だがな」
「ぶっ飛んだ挨拶だな。読心系のスキルまで持っているのかよ。ユニークスキルは鍛冶系だな」
「ああ、その通りだ。成人した男が子供扱いされる屈辱をお前にも分けてあげてーよ。おっと、挨拶がまだだったな。俺の名前はキズナだよろしくな。さっそく依頼品を出してくれるか」

 子供の姿でその話し方はやんちゃ坊主にしか見えないな。おっと危ない、すぐさま飛んでくる2回目のハンマーも問題なくキャッチする。
 そして指示された机の上に依頼のドロップアイテムを並べていく。

「さすが、最強の転移者か。SSランクのドロップ品がこんなにとは」
「仕返しかよ。嫌味にしか聞こえないぞ」
「いやいや本気で口にしてるさ。詩音が難易度も個数も気にせず依頼を出してもいいって言ってたから遠慮なく依頼したが、まさか本当にすべて納品されるなんてな」

 真剣な表情でアイテムを眺めるキズナを見るところ茶化してはいないみたいだ。
 それにしても詩音よ、通りで依頼の数が多いわけだな。後でたんまり報酬を頂くことにしよう。

「あと一振りしたらお茶を出すから待っていてくれ」

 キズナは途中だった剣の作成に取り掛かる。生産系スキルは初めて見たがキズナのユニークスキル『鍛冶(武器)』は優秀だ。作られた剣を『魔眼:鑑定』で視たが、『ガチャ』で頻繁にでる武器と比べて性能が各段に良かった。俺のユニークスキル『ガチャ』で出現する装備は当たりよりハズレが多い。スキルは大したことなくても塵もつもればなんとやらだが、装備はゴミでしかない。ハズレ装備を最近は詩音の商会に流しているが、1000万エルの1000分の1くらいにしかならない。仮に大アタリを出したところで、自分で使うため売ることはないが。

「それでお茶を出すと言う事は何か話があるのか」

 キズナの作業が終わり、今は鍛冶場の横にある部屋のテーブルを4人で囲んでいる。
 ちなみにお茶を出したのは言い出したキズナではなく、何故かメフィスが淹れてくれた。

「ああ、詩音を守ってやってくれないか」
「どういうことだ?」
「俺達生産ギルドの人間は、魔王討伐を目指している転移者を少しでもバックアップできるようにしたい思いで集まっている。そして商業ギルドの詩音が生産ギルドの1人1人に頼み込んでできた商会が今だ。ユリトも先ほど見たと思うが、生産系ユニークスキルで生成した装備やアイテムは戦闘系ユニークスキルには劣るが強力だ。それが闇ギルドにも流出している噂がある。俺は近々闇ギルドによる襲撃を恐れているんだ」

 闇ギルドはどんな手を使ったか知らないが、世界樹まで手を伸ばしているのか。
 メイ達が俺を狙ったのも、各国にいるギルド員が誘導しているのかもしれない。

「ああ、まかせろ詩音は俺が守るよ」
「ありがとう。その言葉を信じるよ」

(こいつもしかして詩音のこと・・・・・・やんちゃ坊主のマセガキだな)

 俺は飛んでくる3回目のハンマーを避けるのだった――

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...