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SSSランク
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「SSSランクのユリトみっけ」
俺は詩音の商会の傘下にある喫茶店で本を読んでいた。メフィスとラファは買い物に出掛けているため今は1人だ。
急に目の前に現れたのは『転送者』のキリコ。テーブルを挟んで俺の向かい側に座る。
「キリコか」
「何よその言い方」
初めて49階層で出会って半年が過ぎた。もう転移して1年だ。
キリコはあの後『手紙図書館』を抜け、情報屋に転職している。戦闘をやめた彼女は2つの三つ編みを下げ、大きなカバンを肩から背負い各国を行き来している。情報屋になってから定期的に会う機会が増えた。
「それで今日はどうしたんだ?」
転移者は約1万5千人がいた。現在『メニュー』の数字は1万をきっている。
6千人の人が死んだ。正確に言うと半年だけで5千人が減った。
「やっと7カ国すべてにSSSランクが揃ったから、召集がかかっているわ。1週間後に世界樹の冒険者本部集合だって」
「最後の『暴食』もクリアされたんだ」
「アンタと詩音ちゃんのおかげでね」
「俺は何もしていない。頑張ったのは詩音だろ」
「そうかもね――」
半年前までマノ王国に所属していた上位クランはある事件を起因に壊滅した。
『自由の都』『手紙図書館』はもう存在しない。
「キリコ世界樹まで転移してくれ」
「ええ、わかったわ」
世界樹は多くの人で溢れている。
生き残っている転移者がダンジョンに挑むなら世界樹にある商店を利用するのが当たり前になった。Aランク以上の各ギルドの武器防具屋に魔道具屋に薬屋が並ぶ。
俺達は商店街を抜け、教会に向かう。
周りは草木に囲まれた中にある十字架が象徴の白い建物が、姿を現す。中には入らず、裏手に回る。教会の裏には花壇が並び、様々な花が咲いている。そして数々の墓標が並ぶ。
ある墓標の前に、この場所を作り上げた彼女の後姿があった。
「詩音」
「詩音ちゃん」
詩音の目の前には『フロマージュ』と記されており下に玲奈、麻里、翔子の名前が刻まれている。
詩音が供えただろう花の横には、『転移者の本』が3冊並んでいる。他の墓標も同じような感じだ。
「ユリトとキリコさんか。聞いたで各国でSSSランクが揃ったんやってな」
「ああ、まあ揃った所で関係ないけどな」
魔王がいるダンジョン『魔王』は現在4階層まで到達している。
俺が1階層と4階層をクリアしている。2階層と3階層は他国のSSSランクパーティーがクリアした。他のダンジョンと違い『魔王』はボスが復活しない。道中のモンスターは再び倒す必要があるが。
「ユリトあんたは死んだらあかんで」
「死ぬか。俺が死んだら誰が魔王倒せるんだよ」
「最強は言うことが違うね」
「ほんまやな。頼んだわ最強!もう流す涙も残ってへんしな」
『フロマージュ』の横には『魔女の都』『贈り物』『Finary(ファイナリー)』 と書かれている。キリコが涙を我慢した様子で、商店街で購入した花束を置いていく。
「もう誰も死ぬことがないように魔王を倒すさ。みんなで日本に戻ろう」
2人の我慢していた涙腺が崩壊する。全員がいた頃を思い出したのだろう。
詩音とキリコが泣く姿を見たくなかった俺は教会を後にする。
教会を出た俺をメイド服姿の2人が待っていた。
「「準備ができましたユリト様」」
「ありがとう。次は5階層だ」
もうこれ以上墓標に刻む名前はいらない――
俺は詩音の商会の傘下にある喫茶店で本を読んでいた。メフィスとラファは買い物に出掛けているため今は1人だ。
急に目の前に現れたのは『転送者』のキリコ。テーブルを挟んで俺の向かい側に座る。
「キリコか」
「何よその言い方」
初めて49階層で出会って半年が過ぎた。もう転移して1年だ。
キリコはあの後『手紙図書館』を抜け、情報屋に転職している。戦闘をやめた彼女は2つの三つ編みを下げ、大きなカバンを肩から背負い各国を行き来している。情報屋になってから定期的に会う機会が増えた。
「それで今日はどうしたんだ?」
転移者は約1万5千人がいた。現在『メニュー』の数字は1万をきっている。
6千人の人が死んだ。正確に言うと半年だけで5千人が減った。
「やっと7カ国すべてにSSSランクが揃ったから、召集がかかっているわ。1週間後に世界樹の冒険者本部集合だって」
「最後の『暴食』もクリアされたんだ」
「アンタと詩音ちゃんのおかげでね」
「俺は何もしていない。頑張ったのは詩音だろ」
「そうかもね――」
半年前までマノ王国に所属していた上位クランはある事件を起因に壊滅した。
『自由の都』『手紙図書館』はもう存在しない。
「キリコ世界樹まで転移してくれ」
「ええ、わかったわ」
世界樹は多くの人で溢れている。
生き残っている転移者がダンジョンに挑むなら世界樹にある商店を利用するのが当たり前になった。Aランク以上の各ギルドの武器防具屋に魔道具屋に薬屋が並ぶ。
俺達は商店街を抜け、教会に向かう。
周りは草木に囲まれた中にある十字架が象徴の白い建物が、姿を現す。中には入らず、裏手に回る。教会の裏には花壇が並び、様々な花が咲いている。そして数々の墓標が並ぶ。
ある墓標の前に、この場所を作り上げた彼女の後姿があった。
「詩音」
「詩音ちゃん」
詩音の目の前には『フロマージュ』と記されており下に玲奈、麻里、翔子の名前が刻まれている。
詩音が供えただろう花の横には、『転移者の本』が3冊並んでいる。他の墓標も同じような感じだ。
「ユリトとキリコさんか。聞いたで各国でSSSランクが揃ったんやってな」
「ああ、まあ揃った所で関係ないけどな」
魔王がいるダンジョン『魔王』は現在4階層まで到達している。
俺が1階層と4階層をクリアしている。2階層と3階層は他国のSSSランクパーティーがクリアした。他のダンジョンと違い『魔王』はボスが復活しない。道中のモンスターは再び倒す必要があるが。
「ユリトあんたは死んだらあかんで」
「死ぬか。俺が死んだら誰が魔王倒せるんだよ」
「最強は言うことが違うね」
「ほんまやな。頼んだわ最強!もう流す涙も残ってへんしな」
『フロマージュ』の横には『魔女の都』『贈り物』『Finary(ファイナリー)』 と書かれている。キリコが涙を我慢した様子で、商店街で購入した花束を置いていく。
「もう誰も死ぬことがないように魔王を倒すさ。みんなで日本に戻ろう」
2人の我慢していた涙腺が崩壊する。全員がいた頃を思い出したのだろう。
詩音とキリコが泣く姿を見たくなかった俺は教会を後にする。
教会を出た俺をメイド服姿の2人が待っていた。
「「準備ができましたユリト様」」
「ありがとう。次は5階層だ」
もうこれ以上墓標に刻む名前はいらない――
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