夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎

文字の大きさ
上 下
18 / 48

第18話 クリスマス会

しおりを挟む
*クリスマス会の話
 小学校2年生の時に妹の友達のたけしくんの家でやったクリスマス会を、ぼくは今でもよく覚えている。その日は『プレゼント交換』が企画されており、ぼくは母に渡された『バトルエンピツ』を持って行っていた。これはテレビゲームのドラゴンクエストのモンスターが描かれた六角鉛筆で、鉛筆を転がして出た面の技を繰り出して、対戦相手を倒すという、今考えても画期的なオモチャであった。

ぼくは『プレゼント交換』に何を持って行くか事前に知らされていなかったのだが、その魅力的な内容から、この『バトエン』が無性にほしくなってしまっていた。だが、日本人の悲しい性なのか、『プレゼント交換』があるため、そのことを言い出せなかった。結局その場でみんなのプレゼントを見ても自分が一番欲しいと思えるのはこの『バトエン』であった。

“普段はあまり欲しくないようなものを買ってくる時もあるのに、なんでこんな時に限って良いものを買ってくるんだよ“と思いながらも、そうこうしているうちに、『プレゼント交換』が始まってしまった。
ルールは簡単で、曲に合わせて隣の人にプレゼントを手渡し、自分はもう一方の側の隣の人からプレゼントを受け取り、それを繰り返して音楽が鳴りやんだら手を止めるというものだった。

ぼくは自分のところにバトエンが返って来るのを願っていたのだが、その願いもむなしく、ぼくのところには別のものが来てしまい、バトエンはたけしくんのところへ行ってしまった。ガッカリしてうなだれていると、どうやらもう一人残念がっている子がいるようだ。それはなんと、ぼくのバトエンを手に入れたたけしくんだった。

「あ~あ~、つまんないの」
「どうしたのたけしくん?」
 ぼくは不思議に思ってワケを聞いてみた。
「実はぼく、けんちゃんのプレゼントの方がほしかったんだ」
「えっ」

 ぼくは意外な返答が返ってきたというのと、自分に訪れた思わぬ幸運との間で複雑な感情を抱いていた。
「それだったら、そのバトエンと交換しようよ!ぼくもそっちがほしかったんだ」
「えっ、そうなの!?それなら、ぼくもそうしたいな」

 こうしてぼくらは、お互いに全く損をすることなく、ほしいものを手に入れることができた。これは日本の昔話にある、『わらしべ長者』と同じで、持っていたワラを交換し、そこからまた違うものへと交換して行き、ついには自分の家を手に入れたという話を思い出すような出来事であった。そして、上手く交渉すれば欲しい物が手に入ることがある、ということを学ぶことができた瞬間でもあった。

 これは現代でもわりと通用する話で、テレビの企画やネットの掲示板などで実践する人は未だに一定数いるようだ。足りない足りないとなげいているよりも、幸運は思わぬところに転がっているのだから、自分なんかと悲観的にならずに、価値を認めてくれる人や集団に自分を売り込んでみるのが大切なんだと思う。


*勝手に貸さないでの話
小学校2年生の時に、いつものように友達と外で遊んで帰ると、クリスマス会で一緒だったたけしくんと妹が、なんとぼくのファミコンで遊んでいるではないか。勝手に使っていることに対して、すぐにでも抗議したいところではあったが、彼らよりぼくの方が3歳年上であり、子供ながらに大人げないかと思ったので、その場ではぐっとこらえて何も言わないようにした。

だが、たけしくんが帰ってから、ぼくのものなのに断りなく使ったことを、妹と止めなかった母に対してかなり文句を言っていた。ただ、もちろん母が立場的に断りにくかったことや、元々は親に出してもらったお金で買ったものであるということも、分かってはいたのだが、“ぼくの気持ちを尊重する”ということをしてほしかったのだ。

ぼくが怒っていたのは、貸したことにではなく、ぼくに断りもなく『勝手に』貸したことがどうしても許せなかったからで、ぼくにしては珍しく、その日から3日くらいは、いつまでもブリブリ怒っていた。大人になってからはしょうもないと思えるようなことかもしれないが、子供にとっては真剣そのものの話なので、こういう時はその気持ちを否定したりせず、誠意を持って対応するようにしてあげてほしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

釣りガールレッドブルマ(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!

児童小説をどうぞ

小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。

魔法アプリ【グリモワール】

阿賀野めいり
児童書・童話
◆異世界の力が交錯する町で、友情と成長が織りなす新たな魔法の物語◆ 小学5年生の咲来智也(さくらともや) は、【超常事件】が発生する町、【新都心:喜志間ニュータウン】で暮らしていた。夢の中で現れる不思議な青年や、年上の友人・春風颯(はるかぜはやて)との交流の中でその日々を過ごしていた。 ある夜、町を突如襲った異変──夜にもかかわらず、オフィス街が昼のように明るく輝く事件が発生する。その翌日、智也のスマートフォンに謎のアプリ【グリモワール】がインストールされていた。消そうとしても消えないアプリ。そして、智也は突然見たこともない大きな蛇に襲われる。そんな智也を救ったのは、春風颯だった。しかも彼の正体は【異世界】の住人で――。 アプリの力によって魔法使いとなった智也は、颯とともに、次々と発生する【超常事件】に挑む。しかし、これらの事件が次第に智也自身の運命を深く絡め取っていくことにまだ気づいていなかった――。 ※カクヨムでも連載しております※

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

処理中です...