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第18話 クリスマス会
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*クリスマス会の話
小学校2年生の時に妹の友達のたけしくんの家でやったクリスマス会を、ぼくは今でもよく覚えている。その日は『プレゼント交換』が企画されており、ぼくは母に渡された『バトルエンピツ』を持って行っていた。これはテレビゲームのドラゴンクエストのモンスターが描かれた六角鉛筆で、鉛筆を転がして出た面の技を繰り出して、対戦相手を倒すという、今考えても画期的なオモチャであった。
ぼくは『プレゼント交換』に何を持って行くか事前に知らされていなかったのだが、その魅力的な内容から、この『バトエン』が無性にほしくなってしまっていた。だが、日本人の悲しい性なのか、『プレゼント交換』があるため、そのことを言い出せなかった。結局その場でみんなのプレゼントを見ても自分が一番欲しいと思えるのはこの『バトエン』であった。
“普段はあまり欲しくないようなものを買ってくる時もあるのに、なんでこんな時に限って良いものを買ってくるんだよ“と思いながらも、そうこうしているうちに、『プレゼント交換』が始まってしまった。
ルールは簡単で、曲に合わせて隣の人にプレゼントを手渡し、自分はもう一方の側の隣の人からプレゼントを受け取り、それを繰り返して音楽が鳴りやんだら手を止めるというものだった。
ぼくは自分のところにバトエンが返って来るのを願っていたのだが、その願いもむなしく、ぼくのところには別のものが来てしまい、バトエンはたけしくんのところへ行ってしまった。ガッカリしてうなだれていると、どうやらもう一人残念がっている子がいるようだ。それはなんと、ぼくのバトエンを手に入れたたけしくんだった。
「あ~あ~、つまんないの」
「どうしたのたけしくん?」
ぼくは不思議に思ってワケを聞いてみた。
「実はぼく、けんちゃんのプレゼントの方がほしかったんだ」
「えっ」
ぼくは意外な返答が返ってきたというのと、自分に訪れた思わぬ幸運との間で複雑な感情を抱いていた。
「それだったら、そのバトエンと交換しようよ!ぼくもそっちがほしかったんだ」
「えっ、そうなの!?それなら、ぼくもそうしたいな」
こうしてぼくらは、お互いに全く損をすることなく、ほしいものを手に入れることができた。これは日本の昔話にある、『わらしべ長者』と同じで、持っていたワラを交換し、そこからまた違うものへと交換して行き、ついには自分の家を手に入れたという話を思い出すような出来事であった。そして、上手く交渉すれば欲しい物が手に入ることがある、ということを学ぶことができた瞬間でもあった。
これは現代でもわりと通用する話で、テレビの企画やネットの掲示板などで実践する人は未だに一定数いるようだ。足りない足りないとなげいているよりも、幸運は思わぬところに転がっているのだから、自分なんかと悲観的にならずに、価値を認めてくれる人や集団に自分を売り込んでみるのが大切なんだと思う。
*勝手に貸さないでの話
小学校2年生の時に、いつものように友達と外で遊んで帰ると、クリスマス会で一緒だったたけしくんと妹が、なんとぼくのファミコンで遊んでいるではないか。勝手に使っていることに対して、すぐにでも抗議したいところではあったが、彼らよりぼくの方が3歳年上であり、子供ながらに大人げないかと思ったので、その場ではぐっとこらえて何も言わないようにした。
だが、たけしくんが帰ってから、ぼくのものなのに断りなく使ったことを、妹と止めなかった母に対してかなり文句を言っていた。ただ、もちろん母が立場的に断りにくかったことや、元々は親に出してもらったお金で買ったものであるということも、分かってはいたのだが、“ぼくの気持ちを尊重する”ということをしてほしかったのだ。
ぼくが怒っていたのは、貸したことにではなく、ぼくに断りもなく『勝手に』貸したことがどうしても許せなかったからで、ぼくにしては珍しく、その日から3日くらいは、いつまでもブリブリ怒っていた。大人になってからはしょうもないと思えるようなことかもしれないが、子供にとっては真剣そのものの話なので、こういう時はその気持ちを否定したりせず、誠意を持って対応するようにしてあげてほしい。
小学校2年生の時に妹の友達のたけしくんの家でやったクリスマス会を、ぼくは今でもよく覚えている。その日は『プレゼント交換』が企画されており、ぼくは母に渡された『バトルエンピツ』を持って行っていた。これはテレビゲームのドラゴンクエストのモンスターが描かれた六角鉛筆で、鉛筆を転がして出た面の技を繰り出して、対戦相手を倒すという、今考えても画期的なオモチャであった。
ぼくは『プレゼント交換』に何を持って行くか事前に知らされていなかったのだが、その魅力的な内容から、この『バトエン』が無性にほしくなってしまっていた。だが、日本人の悲しい性なのか、『プレゼント交換』があるため、そのことを言い出せなかった。結局その場でみんなのプレゼントを見ても自分が一番欲しいと思えるのはこの『バトエン』であった。
“普段はあまり欲しくないようなものを買ってくる時もあるのに、なんでこんな時に限って良いものを買ってくるんだよ“と思いながらも、そうこうしているうちに、『プレゼント交換』が始まってしまった。
ルールは簡単で、曲に合わせて隣の人にプレゼントを手渡し、自分はもう一方の側の隣の人からプレゼントを受け取り、それを繰り返して音楽が鳴りやんだら手を止めるというものだった。
ぼくは自分のところにバトエンが返って来るのを願っていたのだが、その願いもむなしく、ぼくのところには別のものが来てしまい、バトエンはたけしくんのところへ行ってしまった。ガッカリしてうなだれていると、どうやらもう一人残念がっている子がいるようだ。それはなんと、ぼくのバトエンを手に入れたたけしくんだった。
「あ~あ~、つまんないの」
「どうしたのたけしくん?」
ぼくは不思議に思ってワケを聞いてみた。
「実はぼく、けんちゃんのプレゼントの方がほしかったんだ」
「えっ」
ぼくは意外な返答が返ってきたというのと、自分に訪れた思わぬ幸運との間で複雑な感情を抱いていた。
「それだったら、そのバトエンと交換しようよ!ぼくもそっちがほしかったんだ」
「えっ、そうなの!?それなら、ぼくもそうしたいな」
こうしてぼくらは、お互いに全く損をすることなく、ほしいものを手に入れることができた。これは日本の昔話にある、『わらしべ長者』と同じで、持っていたワラを交換し、そこからまた違うものへと交換して行き、ついには自分の家を手に入れたという話を思い出すような出来事であった。そして、上手く交渉すれば欲しい物が手に入ることがある、ということを学ぶことができた瞬間でもあった。
これは現代でもわりと通用する話で、テレビの企画やネットの掲示板などで実践する人は未だに一定数いるようだ。足りない足りないとなげいているよりも、幸運は思わぬところに転がっているのだから、自分なんかと悲観的にならずに、価値を認めてくれる人や集団に自分を売り込んでみるのが大切なんだと思う。
*勝手に貸さないでの話
小学校2年生の時に、いつものように友達と外で遊んで帰ると、クリスマス会で一緒だったたけしくんと妹が、なんとぼくのファミコンで遊んでいるではないか。勝手に使っていることに対して、すぐにでも抗議したいところではあったが、彼らよりぼくの方が3歳年上であり、子供ながらに大人げないかと思ったので、その場ではぐっとこらえて何も言わないようにした。
だが、たけしくんが帰ってから、ぼくのものなのに断りなく使ったことを、妹と止めなかった母に対してかなり文句を言っていた。ただ、もちろん母が立場的に断りにくかったことや、元々は親に出してもらったお金で買ったものであるということも、分かってはいたのだが、“ぼくの気持ちを尊重する”ということをしてほしかったのだ。
ぼくが怒っていたのは、貸したことにではなく、ぼくに断りもなく『勝手に』貸したことがどうしても許せなかったからで、ぼくにしては珍しく、その日から3日くらいは、いつまでもブリブリ怒っていた。大人になってからはしょうもないと思えるようなことかもしれないが、子供にとっては真剣そのものの話なので、こういう時はその気持ちを否定したりせず、誠意を持って対応するようにしてあげてほしい。
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