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第33話 親戚の人たち
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*久保のおじさんとおばさんの話
ぼくのおじさんは東京の大学を出て市役所で公務員をやっていて、平凡な人と言われていたのだが、ぼくにとっては『憧れの存在』だった。
ぼくの父は学があるのを良いことに人を馬鹿にするようなタイプの人で「こんなことも知らないのか」とよく言っていたのだが、おじさんは決して人を悪く言うようなことはせず、寛容に接することができる人だった。
ぼくは家族を幸せにし、愚痴を言いながらもしっかりと出勤して働くおじさんを今でも尊敬しているし、人として手本となるような生き方をしている人だと言える。
そんなおじさんとは知人の紹介で出会ったというおばさんだが、母の姉であり9つ歳が離れていた。母が他の兄弟と歳が離れている理由としては、おじいちゃんが船乗りだったことが影響していると考えられる。新幹線の設計をやっている職場で働いていて、ぼくたちが下松に帰った時には新幹線が止まる徳山駅まで毎回車で迎えに来てくれていた。
ぼくは毎回軽くお礼を言うだけで手土産なども持ち帰らない母に不満を持っていたのだが、おばさんはいつもあたたかく迎え入れてくれていた。親しき中にも礼儀ありというが、ぼくはいつまでも人の優しさに甘えてはいけないと考えているし、何かしてもらったのなら、必ずお礼をすべきだとも思う。
*おじさんとラーメンの話
久保のおじさんとおばさんには、よく遊んでもらっていて、近所の太(たい)華(か)山(ざん)に登って『やまびこ』をやってヤッホー、ヤッホーと自分の声がはね返ってくるのを体験したり、遠出したりして可愛がってもらっていた。ある年、下松駅の近くに美味いラーメン屋があるという話になり、久保のおじさんに連れて行ってもらえることになった。
「今日はおじさんの奢りだから、遠慮せずに食べていいよ」
「うん。ありがとう、おじさん」
「おじさんはもう歳だから小にしとくけど、健ちゃんは中盛にしときんさい」
「え、いいの?じゃあそうする!」
そう言って食べ始めたのだが、ここのラーメンは値段は700円で普通なのだが、量が異常に多く、大人でも食べきれるかどうか微妙な量なのであった。おじさんは決して悪意を持ってぼくに中を勧めたわけではないのだが、ぼくは昔から頑固なところがあり、そうと決めたらやり遂げるまで投げ出さないような性分だった。
日本には『腹八分目』という言葉があり、満腹になるまで食べるのは体に良くないとされているのだが、当のぼくはいくつになってもアホなままだったので、常に全力でやるようなタイプだった。
何度もおじさんに「残してもいいよ」と言われながらもなんとか完食し、息も絶え絶え店から出て行った。だが、腹が相撲取りのように膨らんでしまい、陸橋を登らずに遠回りして線路を横切って帰ることになった。
*おばさんとの話
4年生のある日、せっかく神戸に引っ越して、山口から近くに住んでいるからと、久保のおばさんが1泊2日で泊りにきてくれたことがある。カセットテープに自作の歌を録音したり、『オバガード』と名付けて、段ボールでおばさん用の鎧を作って遊んでもらったりした。毎回おばさんは、子供の相手をするのは大変だったろうに、嫌な顔ひとつせずに接してくれていた。
また、久保のおばさんとは、車でデッカイ恐竜のオブジェがある公園まで連れて行ってもらって遊んだりしていた。この恐竜はほぼ等身大で15mくらいある巨大な『造り物』で、小学生だったぼくはこの恐竜が大好きだった。
*いとこのお姉ちゃんたちの話
親戚のおじさん、おばさんは凄く親切な人で、毎年夏になると川へキャンプに連れて行ってくれた。その時にいとこのお姉ちゃんたちと行く時が多かったのだが、親同士の年が離れていたので必然的にぼくと二人の従姉妹のお姉ちゃんたちも10歳ほど歳が離れていた。
姉のゆりこちゃんは話がおもしろい人で、チョコボールのキョロちゃんがアニメ化された時に、クチバシが崖に刺さって他のキャラにバカにされていたことをおもしろく話してくれた。妹ののりこちゃんは運動が得意でバスケをやっていて身長が高く、専門学校に行ってからも続けているらしかった。
ぼくたち家族は姉のゆりちゃんから借りた車でキャンプ場まで行っていて、いつも向こうの家族の車について行っていた。日本の田舎は車がないと移動することがほぼ不可能というところが多々あって、一人一台車を持っているということも珍しくはなかった。
キャンプ場に着くとまずはテントを2つ組み立てて、バーベキューをしてみんなで話していた。そこで、親戚あるあるだと思うのだが母は田舎に帰ると
「そういね(そうだね)」
「いやいね(いやだよ)」
などと中国地方の方言がかなり出ており、ぼくは特に誰にも言ったことはなかったのだが、この方言を勝手に『いね語』と名付けて自分の中でそう呼んでいた。
あと、キャンプをしていた時に1分間息を止められるかという話になって本当にちゃんと止めているのか不信に思えたため、おじさんの鼻をつまんで検証したことがあった。今にして思えば相当に失礼な話で、子供の頃の申し訳ない出来事ではあったのだが、おじさんは見事に1分間息を止め切ってみせた。
その後、近くで見ていた母とご飯を炊く飯盒に入れる水を汲みに行ったところ、
「そんなズルいことをするのはお父さんだけだから、おじさんにあんなことするのはやめときなさい」と言われてしまい、確かにそうだなと思って妙に納得したことがあった。
このキャンプ場の横には川が流れていて、そこで、うきわにお尻をいれて流れて行くのは、都会の喧騒を忘れ田舎でのゆったりした気分に浸れて楽しかった。だが、川というのは深かったり流れが速かったりするところがあるので、その時に姉のゆりちゃんから、
「深いとこは足がたわんけえね、気をつけんさいよ」とよく言われていた。
この『たわない』とは中国地方の方言で、『届かない』という意味で使われている。実際、1回妹が溺れかけて後ろから脇を押して助けたことがあった。
また、ぼくはよくいたずらをしていたのだが、手が当たって、妹ののりちゃんのリップクリームを折ってしまったことがあり、
「わやしよるね、いけんじゃ」と言われたこともあった。
この『わや』というのは『いたずら』という意味で、いたずらするね、いけないじゃないのという意味で話していた。その後、弁償してもらう(本当はそんな気はない)と言って、それをネタに何かいたずらをしようとすると止められたりしていた。
ぼくのおじさんは東京の大学を出て市役所で公務員をやっていて、平凡な人と言われていたのだが、ぼくにとっては『憧れの存在』だった。
ぼくの父は学があるのを良いことに人を馬鹿にするようなタイプの人で「こんなことも知らないのか」とよく言っていたのだが、おじさんは決して人を悪く言うようなことはせず、寛容に接することができる人だった。
ぼくは家族を幸せにし、愚痴を言いながらもしっかりと出勤して働くおじさんを今でも尊敬しているし、人として手本となるような生き方をしている人だと言える。
そんなおじさんとは知人の紹介で出会ったというおばさんだが、母の姉であり9つ歳が離れていた。母が他の兄弟と歳が離れている理由としては、おじいちゃんが船乗りだったことが影響していると考えられる。新幹線の設計をやっている職場で働いていて、ぼくたちが下松に帰った時には新幹線が止まる徳山駅まで毎回車で迎えに来てくれていた。
ぼくは毎回軽くお礼を言うだけで手土産なども持ち帰らない母に不満を持っていたのだが、おばさんはいつもあたたかく迎え入れてくれていた。親しき中にも礼儀ありというが、ぼくはいつまでも人の優しさに甘えてはいけないと考えているし、何かしてもらったのなら、必ずお礼をすべきだとも思う。
*おじさんとラーメンの話
久保のおじさんとおばさんには、よく遊んでもらっていて、近所の太(たい)華(か)山(ざん)に登って『やまびこ』をやってヤッホー、ヤッホーと自分の声がはね返ってくるのを体験したり、遠出したりして可愛がってもらっていた。ある年、下松駅の近くに美味いラーメン屋があるという話になり、久保のおじさんに連れて行ってもらえることになった。
「今日はおじさんの奢りだから、遠慮せずに食べていいよ」
「うん。ありがとう、おじさん」
「おじさんはもう歳だから小にしとくけど、健ちゃんは中盛にしときんさい」
「え、いいの?じゃあそうする!」
そう言って食べ始めたのだが、ここのラーメンは値段は700円で普通なのだが、量が異常に多く、大人でも食べきれるかどうか微妙な量なのであった。おじさんは決して悪意を持ってぼくに中を勧めたわけではないのだが、ぼくは昔から頑固なところがあり、そうと決めたらやり遂げるまで投げ出さないような性分だった。
日本には『腹八分目』という言葉があり、満腹になるまで食べるのは体に良くないとされているのだが、当のぼくはいくつになってもアホなままだったので、常に全力でやるようなタイプだった。
何度もおじさんに「残してもいいよ」と言われながらもなんとか完食し、息も絶え絶え店から出て行った。だが、腹が相撲取りのように膨らんでしまい、陸橋を登らずに遠回りして線路を横切って帰ることになった。
*おばさんとの話
4年生のある日、せっかく神戸に引っ越して、山口から近くに住んでいるからと、久保のおばさんが1泊2日で泊りにきてくれたことがある。カセットテープに自作の歌を録音したり、『オバガード』と名付けて、段ボールでおばさん用の鎧を作って遊んでもらったりした。毎回おばさんは、子供の相手をするのは大変だったろうに、嫌な顔ひとつせずに接してくれていた。
また、久保のおばさんとは、車でデッカイ恐竜のオブジェがある公園まで連れて行ってもらって遊んだりしていた。この恐竜はほぼ等身大で15mくらいある巨大な『造り物』で、小学生だったぼくはこの恐竜が大好きだった。
*いとこのお姉ちゃんたちの話
親戚のおじさん、おばさんは凄く親切な人で、毎年夏になると川へキャンプに連れて行ってくれた。その時にいとこのお姉ちゃんたちと行く時が多かったのだが、親同士の年が離れていたので必然的にぼくと二人の従姉妹のお姉ちゃんたちも10歳ほど歳が離れていた。
姉のゆりこちゃんは話がおもしろい人で、チョコボールのキョロちゃんがアニメ化された時に、クチバシが崖に刺さって他のキャラにバカにされていたことをおもしろく話してくれた。妹ののりこちゃんは運動が得意でバスケをやっていて身長が高く、専門学校に行ってからも続けているらしかった。
ぼくたち家族は姉のゆりちゃんから借りた車でキャンプ場まで行っていて、いつも向こうの家族の車について行っていた。日本の田舎は車がないと移動することがほぼ不可能というところが多々あって、一人一台車を持っているということも珍しくはなかった。
キャンプ場に着くとまずはテントを2つ組み立てて、バーベキューをしてみんなで話していた。そこで、親戚あるあるだと思うのだが母は田舎に帰ると
「そういね(そうだね)」
「いやいね(いやだよ)」
などと中国地方の方言がかなり出ており、ぼくは特に誰にも言ったことはなかったのだが、この方言を勝手に『いね語』と名付けて自分の中でそう呼んでいた。
あと、キャンプをしていた時に1分間息を止められるかという話になって本当にちゃんと止めているのか不信に思えたため、おじさんの鼻をつまんで検証したことがあった。今にして思えば相当に失礼な話で、子供の頃の申し訳ない出来事ではあったのだが、おじさんは見事に1分間息を止め切ってみせた。
その後、近くで見ていた母とご飯を炊く飯盒に入れる水を汲みに行ったところ、
「そんなズルいことをするのはお父さんだけだから、おじさんにあんなことするのはやめときなさい」と言われてしまい、確かにそうだなと思って妙に納得したことがあった。
このキャンプ場の横には川が流れていて、そこで、うきわにお尻をいれて流れて行くのは、都会の喧騒を忘れ田舎でのゆったりした気分に浸れて楽しかった。だが、川というのは深かったり流れが速かったりするところがあるので、その時に姉のゆりちゃんから、
「深いとこは足がたわんけえね、気をつけんさいよ」とよく言われていた。
この『たわない』とは中国地方の方言で、『届かない』という意味で使われている。実際、1回妹が溺れかけて後ろから脇を押して助けたことがあった。
また、ぼくはよくいたずらをしていたのだが、手が当たって、妹ののりちゃんのリップクリームを折ってしまったことがあり、
「わやしよるね、いけんじゃ」と言われたこともあった。
この『わや』というのは『いたずら』という意味で、いたずらするね、いけないじゃないのという意味で話していた。その後、弁償してもらう(本当はそんな気はない)と言って、それをネタに何かいたずらをしようとすると止められたりしていた。
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