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第27話 バレイヤージュ

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テクニシャンズとの激戦を終えた9月の暮れ、昴は一足先に家を出て美容院へ行った瑞希と合流するため、待ち合わせ場所にしていた公園で時間を潰していた。遊んでいる子供をぼんやり眺めていると、時間より少し早く瑞希が到着した。

「お、染めたの?いいじゃん、その色」
「ふふふ、そうでしょ。美奈と一緒に染めたの、結構気に入ってるんだから」
「凄い似合ってるよ。どこで染めたの?」
「吉野美容室だよ。莉子も誘ったんだけど、黒のままでいいんだって」

瑞希はもともと茶色くしていた髪色を染め直し、新たにグレーのモノトーンに染めて来ていた。それは元来移り気な昴の気を引きたい一心であり、彼に褒められた瑞希は、上機嫌となっていた。だが、商店街を暫く歩いていると、昴が不意に通りすがった女性に目をやってしまい、瑞希はそのことで一気に不満の色を露わにする。

「ねえ、見てよーー。私のこと見てよ!!」
実際、昴はもう他の女性と関係を持つようなことはなかった。だが、たまに目移りしてはよそ見をしてしまい、瑞希の怒りを買ってしまうのであった。身体の関係を持っていない浮気の方が女性は嫌がるもので、目に見えない昴の心情に瑞希はいつもヤキモキしているのであった。瑞希の突然の怒りに、昴は驚いてしまったようだ。

「どうしたんだよ、急に」
「うるさい!!この浮気者!!」
「なんでだよ?そんなに怒らなくてもいいだろ。何かしたって訳でもないんだしさ」
「さっき通りすがりの人を見てたじゃない!!それって浮気でしょ!?私がせっかく髪染めたっていうのに、私に興味ないの!?」
「そんな訳ないじゃん。これくらい普通だよ。瑞希は神経質になり過ぎなんだって」
「そんなことない!!そんなこと言うならもういい、昴くんなんか知らない!!」

瑞希はそう言うと、昴を置いてスタスタと一人で歩いて行ってしまった。
 浮気は人によって、そのラインが違っているもので、他の異性とデートに行ったら、手を繋いだら、ハグやキスをしたり肉体関係を持ったらなど、その基準は様々である。
ただ一貫して共通しているのは、自分以外の異性に対して恋心を抱いてしまう所で、人間の性質上、常に恋人を独占したいと考えるものなのである。

 この頃の昴は瑞希からの信頼を著しく欠いた状態であり、浮気のラインを極端に引き上げられていた。一見、理不尽に見える瑞希の要求ではあるが、当人の立場からすれば当然のことなのである。昴にこの発言に対して共感し謝罪するだけの『度量』があればまた違った結果になっていたのだろうが、まだ若い彼には難解すぎる要求であった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ただいま作者の崗本は『賞レース中にて書籍化のチャンス』に直面しております!!

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