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第69話 幼いころの記憶

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*****ブリアンナ視点

「凄い・・天使様みたい」
教室で誰かが呟く。

「あの人はまさか…」
わたしは小声で呟いていた。



わたしは幼い頃の記憶を思い出していた。

「ニャーニャーニャー・・」

高い木から、降りられなくなった子猫が甲高い声で鳴いていた。
可愛そうだけど、わたしには助けてあげられない。
木の近くにいた大人は気にしているようだけど、ただ眺めているだけだった。

突風がビュッと吹いたかと思ったら、白い羽の天使が現れた。
驚いた。
天使なんているんだ。
そう思ったのを憶えている。

「あら、キレイな子ね。男の子かしら?」

わたしの手を引いていたお母さんは、天使じゃなくて天使族っていう獣人じゃないかって言っていた。
羽を持っているのは珍しいけどとも。

「あんなにキレイなのにてんしじゃないんだ」
わたしは見惚れていた。



あの時の子だ間違いない。
心臓がドキンとはねた。
驚いたことにわたしの隣の席みたい。
ゴクリと息を呑む。
わたしは落ち着いて挨拶を試みる。

「わたし、ブリアンナ・フィールドですわ。よろしくお願いしますわね」
多分大丈夫、普通に挨拶できたと思う。

「ぼくはアルト・ウィンザー。よろしく」

「あら?もしかして領主様のご子息かしら」
「うん。そうだけど」

何だ本当に普通の子だった。
周りの人は気になっているみたいで彼を見ているが話しかけられない。
彼もあえて話しかけてはいないみたいだけど。



*****アルト視点



家に帰りぼくは、リビングのソファに座って物思いにふけっていた。
学校の教室で席が隣になった女子の事が気になっていた。
何でって言われてもよくわからないんだけど。
何故かじっとぼくを見ていたな。

「アルト、アルト?」

妹のエミリアがぼくに話しかけている。
ぼくはただぼーっと妹の言葉を聞いていた。

見た目が珍しいとかそういう事ではないと思うんだけど。
言葉遣いはレーシャさんみたいだったからお嬢様ぽいなって思ったくらいで。

「ブリアンナさんかぁ」
「アルト!風魔法の練習に付き合ってくれるって言ったじゃない!」

ぎゅーっとエミリアにほっぺをつねられた。

「痛っ!何すんだよ」
「アルトのほっぺって柔らかいんだよね。って忘れてんのが悪い!」
「何か約束したっけ?」

エミリアがまあるい目をさらに見開いていた。

「昨日約束したじゃない。風魔法の・・」
「あ~忘れてたわ。悪い悪い」

エミリアに空飛ぶ練習しようって言われてたんだっけ。
家の庭なら良いってお父さんから許可を貰っている。
遠くに行っちゃうと助けられないからみたいだけど。

万が一怪我しても、回復魔法を使えるレーシャさんも居るし大丈夫だ。
痛いから怪我はしたくないけどね。
にしても、昨日の約束を忘れるなんてぼくどうかしてるよな。
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