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第63話 精霊族の短剣

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「兄貴が、緑色に光る短剣を手に入れて、空中を切ったら何処かの村に繋がって・・行ってみたら人が誰も居ないのをいいことに、色々な物を盗んでいたんだ」

「緑色の短剣?」

そういえば以前緑色の指輪を使って精霊族の村へ行ったことがあったような・・。
もしかして?
そういえば最近、アルが同じようなことを言ってなかったか?
もし短剣が精霊族の村につながるアイテムだったら・・。



*****



「村に戻れなくなっちまった・・」
弟は逃げなかったみたいだし、アイツ何考えてんだ?

「金はあるし、何処かに泊まるか?」

多分役人が来たのだろう。
もう盗んだこととかとっくにバレているのかもしれない。

「あの場所に逃げるか?」

いつもあの場所には誰もいない。
ここに留まっているよりははるかに良いだろう。
俺は腰にぶら下がっていた短剣を出して空中を切り裂いた。

「へえ~いつもそういう風に使っているんだ?」
「ふぇ?いつの間に?」
「さっきから居たけどね。上にだけど」
「上?」
「悪いけど、拘束させてもらうよ」

俺は突然現れた、若い男に捕まってしまった。



*****トワ視点



僕たちは風魔法で空を飛んでいた。

「ひええええ・・・」

上空数十メートル、慣れない人は怖いだろう。

「怖い?まあ落ちないから安心してよ。ちょっと城まで運ぶだけだから」
「おま・・何なんだ?」
「何だろね?領主?魔法使い?それとも冒険者かな?」

取り合えず僕は首謀者の兄をゼノベア城へと運んだ。
僕は連れて行くだけだ。

「あとで、盗んだもの返してもらうね?あれは村の大事な宝だから」





「万事解決じゃの。流石トワじゃ!」
屋敷に帰ったら、アルに褒められてしまった。

「精霊族に頼まれていたはいいが、解決できなかったのでな。まさか指輪と同じような効果のある短剣があるとは・・」
「僕も昔お世話になったし、恩を少しでも返せたのなら良かったよ」
「ちょっと部下に伝えておく・・いや直に行くか」

アルは右手を使って空間を歪めた。
「今回はトワのお陰だから一緒に行くのじゃぞ?」

僕はアルに手を引かれ向かった。





数年ぶりに僕は精霊族の村へ来ていた。
木々が生い茂り、緑が豊かな場所。
空気が美味しい。
以前と変わらないな。

「ほれ、さっさと行くぞ」
「魔王様?」

門番の人が驚いていた。
この人以前見たことあるな。


「そうだったのですか!まさかトワさんが解決して下さったとは・・」
「盗まれたものは・・全部は無理かもしれませんが回収しますので・・」

僕たちは村長さんの家に来ていた。
徐々に思い出してきた。
素朴な家で床は絨毯が敷いてあって・・。

「何かお礼を・・」
「そういうのはいいです!今回は大臣からの依頼で、たまたま解決しただけなので」
「トワは相変わらず謙虚よのう。まぁ、そこが良いんじゃが」

「ご夫婦になられたのは本当のようですね。魔王様のお相手は人間と聞いて驚きましたが、トワさんなら安心しました」

しばらくの間、僕たちは雑談しお茶を頂く。
出されたお菓子もお煎餅せんべいみたいな味で美味しかった。
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