上 下
62 / 86

第62話 とある寒村

しおりを挟む
僕はゼノベア城に呼ばれていた。
最初はアスマにと話が行ったらしいのだが、アスマが是非僕にと推薦したらしい。
城の大臣から相談を受ける。
仕事でよく顔を合わせる、白髪の壮年だ。

「レイト村の調査ですか?」
「領主の仕事ではないのだが、最近不審なことがあってな。貴殿の力を見込んで調査してほしい」

何でも寒村らしいのだが、最近になって急に豊かになり始めたらしい。
それらしい原因も解らず、周りから不思議がられているそうだ。

「何も悪い事をしていなければいいのだが・・」

調べて悪い事をしていなければ良い。
もし何か犯罪をしているならば証拠を突き止めてほしいという事だった。



*****



ジャラ・・。
「全く、楽しくて止められないぜ」

俺は不思議な村にいた。
周りは自然が豊かで、建物は小さく素朴な木造の家が建っていた。

家の中に置いてあった、金で出来たネックレスを無造作に掴み、袋に詰め込む。
この緑に光る不思議な短剣を手に入れてからお宝が手に入るようになった。
魔道具の店で見つけた不思議な短剣。
吸い寄せられるように、俺は短剣を購入した。

空中を裂いて?みるとある村に繋がっていた。
不思議なことにその村には住人が居ない。
もしかしたら隠れているのかもしれないが出てこないから良いのだろう。
高そうな貴金属は盗み放題だった。

「盗賊って癖になるな」
「で、でも見つかったらまずいんじゃ・・」

弟が弱音を吐く。
「見つかるって誰に?誰もいないぜ?」

見つかったお宝は、最初こそ自分たちだけのものにしていたが量が多いので村長に渡していた。
これで共犯だ。



*****トワ視点



久しぶりに風魔法を使って空を飛んでいた。
馬車で行くには時間かかり過ぎるんだよね。
大臣は馬車を使ってくれって勧めてくれたけど。
たまには空を飛んでも良いよね。

数時間でレイト村に付いた。
見た目は普通の村なんだけどな。
取り合えず村長さんに会いに行くとするか。

「こんにちは。僕はトワと言います。村長さんに会わせてもらえませんか?」

「村長?なら奥の大きなあの家だよ」
村人は警戒することも無く、家を教えてくれた。


「こんにちは。村長さん居ますか?」
僕は外から声をかけた。

「誰じゃ?」

おどおどした様子で顔を見せる村長。
灰色の髪の初老の男性だった。
僕は自己紹介をする。
そして家に入って気になった物を訊いてみた。

「これは・・村人がわしに譲ってもらったものじゃ」

家の中に入ると、建物に不釣り合いな貴金属が無造作にテーブルに置かれていた。
ネックレス、指輪、魔道具らしき物。
どうやらこれらの品を売りさばいているようだった。

「その、譲ってくれた人っていうのは」

「マニス兄弟じゃ。わしは何も悪い事しとらん」

訊いてみると数カ月前からマニス兄弟が金品をくれるようになったらしい。
どうしたのかと聞いてもはぐらかされるのだとか。
めっちゃ怪しい。
僕はマニス兄弟に会ってみることにした。



「今日も大漁だったな~」
「・・・」
「お前さ~いい加減慣れろよ」
「兄貴はどうして慣れるんだよ・・悪いことしてんのに」


僕は村に向かって歩いてくる男たちに声をかけた。
「ちょっと、今の話聞かせてもらっても良いかな?」

「やべっ!ずらかるぞ」
「・・・」

一人は血相を変えて逃げてしまった。
もう一人は諦めたのか逃げずに留まっていた。

「逃げないの?」
「逃げても無駄でしょう・・きっと捕まるだろうし」

「少し、事情を聞かせてもらえるかな」
僕は留まった男から理由を聞くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。 モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。 実は前世が剣聖の俺。 剣を持てば最強だ。 最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

勇者の生まれ変わり、異世界に転生する

六山葵
ファンタジー
かつて、勇者と魔王が存在し激しい戦闘を繰り広げていた。 両者は互いに一歩譲らなかったが、やがて勇者は魔王に決定的な一撃を与える。 しかし、魔王もまた勇者に必殺の一撃を残していた。 残りわずかとなった命が絶たれる前に勇者はなんとか聖剣に魔王を封印することに成功する。 時は流れ、現代地球。 一人の青年が不慮の事故で突然命を失ってしまう。 目覚めた真っ白な部屋で青年が自称神を名乗る老人に言われた言葉は 「君は勇者の生まれ変わりなのじゃ」 であった。 これは特別な力をほとんど持たないただの青年が、異世界の様々なことに怯えながらも魔王を倒すために果敢に挑戦する。 そんな王道ファンタジーである。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

処理中です...