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第49話 アルの場合

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「トワ、来たぞ~」
空間が歪んで手がにょきっと現れてアルが姿を現した。

「うわっ!びっくりした」
「ん?どこじゃここは・・」

「何処って、僕たち引っ越ししたんだよ」
「そうなのか?じゃあ、王女たちは居ないのじゃな?」
「私は居るわよ。ごめんなさいね」

レーシャは実家が城なのでこっちには来ていない。
実際結婚したら一緒に住むという事にはなるとは思うけど。

「なんじゃ、つまらんのう」
「あの、アル?いつもあんな移動方法してるの?」
「そうじゃよ?でもトワの所と魔王城しか移動してないぞ?」
「そっか~ならいい・・って良くない!急に目の前を現れてびっくりするじゃないか!」

「折角なら一緒に掃除しましょうよ」
ウェンディがホウキを持ってきてアルに手渡した。

「あ~それはいいかも」

アルは無言で床を掃き始めた。
「何で掃除なんか・・」

「丁度人手が足りなくて二人だと結構大変なんだよ。アルが来て凄い助かるよ」
僕はテーブルを拭きながら言った。

「そうか?ならいいのじゃが・・そういえば何で引っ越したのじゃ?」
「何でって勇者パーティ辞めたからね。城からも出たかったし」

ウェンディが突然切り出した。

「トワ・・今だから言うけど、レーシャとはどこまでいってるの?」
「どこまで・・って?」
「キスとか・・そういう事よ」

ウェンディは目を反らして言う。

「あ・・そういえばキスくらいだっけ。僕が記憶戻って城に帰って来た時か」
「そうなんだ・・」
「キス・・いいのう。わらわも甘ーいキスを・・」

ウェンディが少しほっとした表情をしていた。
実際には三人と付き合ってる感じだし・・ちゃんとしないと駄目かな。




「あの?アルさん?」

真夜中の僕の部屋。
部屋は月明かりが窓から差し込んでいた。
ウェンディは隣の部屋で寝ている。
僕の寝顔にアルがキスをしてきた。
キスで目が覚めた。
お姫様じゃないけど。

「こういうの襲うっていいません?」
「キスしてみたかったのじゃ」
「せめて起きている時に言ってくれれば良かったのに。僕もアルの事好きなんだから拒否しないよ」

ぼくはアルを抱き寄せた。

「むぐっ」
「かわいいなぁ。僕もアルの事大好きだよ」

アルは顔を真っ赤にしていた。
月明かりが彼女の顔を照らす。

「今日は・・いつになく積極的じゃの?」
「そりゃ、そっちから来られたら・・我慢できないよ」

黒い髪を撫でてみた。
やわらくて良い匂いがする。
僕はアルの口に優しくキスをした。

「何だかほわほわするんじゃが・・」
「あは、こういうのって初めてだったりするの?」
アルは無言で頷いた。





チュンチュン・・。
「朝か・・」

僕の隣に黒い翼の彼女が気持ちよさそうに寝ていた。
いつもアルは突然来るんだもんな。
まあ、いいけどさ。
可愛い寝顔を見ながら、彼女の黒髪を優しく撫でた。
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