転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました

月城 夕実

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第40話 魔王城への招待1

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黒の森に僕たちは来ていた。
森は静かで、時折鳥の鳴く声が響いている。

「ここで待っていればいいんだよね」

一週間後、黒の森で。
それしか聞かなかった。
この世界では通信手段も何もないので、来るまでのんびり待つしかない。
異世界の待ち合わせはのんびりとしたものだ。

「待たせてすまなかったの。ようやく準備が整ったのでな」

黒い翼の少女アルが現れた。
アルが右手をかざすと、ぐにゃりと空間が歪んだ気がした。

「場所は極秘なのでな。直通で行こうと思っての」

僕と、ウェンディ、レーシャはアルに連れられ森の奥へ入っていった。

「わぁ、ここは洞窟ですの?」

森を入っていったと思ったら、景色がガラリと変わった。
暗くヒンヤリとした室内。
水の滴る音がする。
アルは手に松明を持ち、火をつける。

「まぁ、そんなとこじゃな。てっきりトワだけが来ると思っておったわ」
「「私達はトワと、とーっても仲が良いので」」

ウェンディとレーシャの声が重なった。
「お友達ってやつじゃな?まあよかろう。もう少し奥の方じゃ」

言われた方を見ると奥に似つかわしくない建物が立っていた。
まるでお城みたいな。
そういえば森って魔王が住んでいたんだっけ。
いや・・まさか・・ね?

目の前の少女は黒髪で翼が生えていて、美人で人間じゃないみたいだけど・・。

城の中へ入るとガランとしていた。
「部下は全然居らんのじゃ。一人しか居らんのでな」

洞窟の中のはずなのに、空間がやたらと広い。
空間魔法とかが使われているのだろうか?

「こちらの方が良かろう?」

僕たちは大きいテーブルのある部屋へ通され椅子に腰かけた。
食堂なのだろうか。
僕の隣にアドが座る。
対面にウェンディとレーシャ。

「お礼といっても、大したもてなしも出来ないが・・今回特別に用意したのじゃ。ほれ、この果物とか美味しいんじゃぞ?どうぞ召し上がれ」

赤い実の果実に、黄色い色の果実。
見たことのない色とりどりの果実が置かれている。
女子二人は目の前の果物に夢中のようだ。
食べやすく切られていて、皿に盛られた果実が瑞々しい。

「いい香りですわ」
「何だか高級そうねえ」

僕はアルに疑問を口にした。

「ねぇ、アル変なこと聞いて良い?」
「なんじゃ?」
「このお城って魔王城じゃないよね?」

女子二人の手が止まった。
果物を手に持とうと動いていた手が。

「・・・・な」
「なんですって!?」

「やはり、知っておったか。だからと言ってなんじゃって感じだがな。この城はいかにも魔王城で間違いはない。わらわは魔王アルビレスじゃ」

女子二人が目の前の果実をじっと見つめていた。
食べたそうにしているな。

「ええい!」
ウェンディが果実を口に放り込んだ。

「え・・えっと」
レーシャは食べようかどうしようか迷っているみたいだった。
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