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第37話 城への帰還

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ゼノベア王都に着いて直ぐに城に入った。
道中のんびりと馬車で来たのに、城を見た途端少し罪悪感が出てきたのだ。
先ずは僕が記憶が戻った事を王様に伝えておかないといけない。
レーシャとアスマたちと。
そんな事を考えていると、偶然城の廊下でアスマとすれ違う。

「あれ・・トワ記憶戻った?」
「え?どうして・・」

「どうしてってそりゃ、顔つきが全然違うからな。まあ、治って良かったよ。これから王様の所に行くんだろ?」

「心配かけてごめん」
「別に良いって」

アスマは手をひらひらさせて去って行った。




「失礼致します」

玉座の間に入った。
毎度のことながら王様の前って緊張するな。
僕は腰を落として片膝を立て頭を下げた。

「トワ・ウインザーただいま戻りました。この度は迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」
王様に、無意識だったとはいえ記憶喪失で迷惑をかけてしまったことを詫びる。

「無事に記憶も戻ったようでなによりだ。勇者たちとまた訓練に励むように」

僕は深く頭を下げた。


**


玉座を退出して、城の自室の部屋のドアを開けた。
ちょこんと、三人掛けのソファに腰かけた銀髪の少女の姿が見えた。

「レーシャ・・」

「トワが城に戻ってくるのを待ってましたの。ずっと、ずっとずーっと待ってましたのよ」
可愛らしい大きな瞳でじっと見つめられる。

「今回は仕方なかったとはいえ・・ウェンディさんとだけ一緒なんてずるいですわ。わたくしも行きたかったのに・・」

僕が記憶を無くしている間、ウェンディと二人きりだけだったことが気に入らなかったらしい。
頭では分かっているのだろうけど、気持ちが我慢できないんだろうな。

「トワ、ちょっと屈んでくださる?」
「え?なあに?」

チュッ

僕の頬に温かい感触が触れる。

「今回はこれで勘弁してあげます」

彼女の白い肌が、みるみる赤くなっていき満面の笑みになった。

「レ、レーシャ?」
僕は頬を触る。

「記憶が無かったとはいえごめん。寂しかったよね」
「本当ですわ。無理言って行こうとしましたけど、アスマたちに止められたんですもの」

僕はレーシャの隣に座る。
彼女は僕にもたれかかって目を瞑った。

「また会えて良かったですわ・・生きた心地しなかったんですもの」
「大げさだなあ・・」


*****


王都から少し離れた森に黒い翼を持った黒髪の少女が空を飛んでいた。
「わらわの今の体は小さくて動きずらい・・500年か、復活するにはまだ早かったかのう・・」

翼を使って空を飛んでいるわけではなく魔力で飛んでいるみたいだった。
「しまった・・魔力切れじゃ・・」

意識を失い失速する少女。
木々に上手く引っかかり、落下は免れたようだがそのまま気を失ってしまった。
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