転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました

月城 夕実

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第36話 再会

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教会の中で、ぎゅーっと僕はウェンディを抱きしめていた。
「・・トワ良かった・・」

「きっと女神さまにお祈りが通じたのですね」
後ろでシスターが泣いていた。

いや絶対違うからね?

「ずっと・・記憶が戻らないと思ってた・・」
ウェンディの水色の瞳から涙が溢れている。

「ごめん・・思い出せなくて・・」
「・・いい・・思い出してくれたから・・」


僕たちはミラージの宿に戻った。
女将さんは喜んでくれて、何故か宿に来たガイは喜んだけど・・残念そうだった。
やっぱり下心があったのかも。

今夜はゆっくりウェンディと居よう。

部屋で、僕は記憶が無くなる前の事を思い出していた。
女神は争いが好きでわざと争わせていると言っていたような・・・。
人間を手駒としか見ていないのだろう。
かと言って、その事を他の人に言うのもはばかられるな。

「トワ・・いい?」
「良いって何を?うわっ」

ウェンディが急にキスをしてきた。
寂しかったのかもしれない。
僕が逆の立場だったら、寂しくてどうにかなってしまうだろうしな。

「まったくしょうがないな。ウェンディは」

彼女の髪を撫でて、僕も頬にキスをした。




「お世話になりました」
「また、いつでもいらしてくださいね」

翌日、城に戻るべく宿を後にした。

「ねぇ、馬車でゆっくり帰らない?」
「え?でも魔法の方が速くない?」
「ん~ゆっくり帰るの~~」

ウェンディが珍しく駄々をこねる。

「そうだね。ゆっくり帰ろう」

城に帰ったら、二人きりになれないからな。
レーシャもいるし。
城の人達はそんなに早く記憶が戻ったなんて思ってもいないだろうし。

「観光しながらのんびり行こうか」
「やったーー」

ここの所忙しかったから休養も必要だよね。
ウェンディも僕の事で精神的に疲れているだろうから。
途中に温泉とかあってのんびり出来たらいいな。
そんな都合よくないか。

「次の町の名物は何だろうね」
「果物が美味しいって聞いた」
「へえ~」

僕たちは馬車に乗り込んだ。
次の町まで外の景色を見ながらのんびり過ごす。
他愛もない会話がこんなにも楽しいなんて。
二人きりの貸し切り馬車で良かった。

「僕、記憶を無くしてた時、ウェンディの事好きだったかも」
「ええ?忘れていたのに?」
「忘れてたけど・・感情が残っていたのかもしれないね」

切ない苦しい思い。
もうあんな思いはしたくないな。
景色が徐々に移り変わっていく、のんびりとした移動も悪くないかもしれない。

「トワ・・あのね・・」
「うん?」
「何でもない・・」

ウェンディが何か言いかけて途中で止めたみたいだけど、話したくなったら話すだろう。
無理に聞き出さないほうが良いな。
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