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第34話 再びプノン町へ
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小さな町だった。
僕は王都のお城から馬車に乗ってプノン町へとやって来ていた。
馬車での移動は疲れたけど、不思議と安心していた。
「ウェンディさんのお陰なのかな・・」
僕は呟く。
僕が彼女の顔を見ると僅かに微笑んで、少し寂しそうだった。
「今日泊まるところはここね」
「ミラージの宿」看板にはそう書かれてある。
「いらっしゃい。あらお久しぶりだねぇ」
愛想のいい宿屋の女将さんが話しかけてくる。
会釈して、中に入った。
「あら、どうしたのかしら?」
女将さんが心配そうに聞いてくるが
「・・後でお話しますね。取り合えず今日の宿お願いします」
「はいよ」
察したのか特に話しかけてこなかった。
先に僕に部屋に行っててほしいとの事で二階の指定された部屋に入った。
*****ウェンディ視点
一階のカウンターで
「女将さんどうしましょう・・」
「さっきの事かい?」
「実は彼記憶を無くしちゃって・・部屋分けたほうが良いですかね?」
「う~~~ん。彼に聞いてみたらどうだい?一緒でも大丈夫なら一緒にするとか・・」
「そうですよね!」
コンコンコン。
「入っていいかしら?」
「どうぞ」
返事を聞いてドアを開ける。
記憶を無くしてから他人の距離になってしまった。
かなり気を遣う。
「えっと・・変なこと聞くけど部屋別々の方がいいよね?一応他人だし?」
トワの様子を見ながら提案してみた。
「・・・前は一緒だったのですか?」
「うん」
「なら、一緒で良いです」
思いもかけない返事。
私は飛び上がりそうになるほど嬉しかった。
彼が私を忘れていても。
私って変だろうか?
「そ、そっか。良かった」
何だか顔が赤くなってる気がする。
嬉しいんだか、恥ずかしいんだかよく分からない感情だ。
「一緒の部屋でお願いします!」
私は女将さんに言った。
「そっか。良かったじゃないか。まあ、頑張りなね」
まだ少し辛いけど・・結構辛いけど・・理解してくれる人がいると少しは楽になる。
冒険者ギルドにも行かないとだしな。
明日の事を考えると少し憂鬱な気分になった。
ノックをして部屋に入る。
返事が無くて・・そっと見るとトワは疲れて寝てしまっているようだった。
「馬車は疲れるわよね」
それ以外にも気を使って疲れているのかもしれない。
彼は変わらず優しい人なのだ。
私はトワの頭を撫でていた。
「早く会いたいなんて思ってちゃ駄目よね・・でも会いたいな貴方に」
私を好きでいてくれた貴方に。
部屋は静まり返っていて、月明かりが暗闇を照らす。
神様は信じないのだけど、神頼みをしたい気分だった。
僕は王都のお城から馬車に乗ってプノン町へとやって来ていた。
馬車での移動は疲れたけど、不思議と安心していた。
「ウェンディさんのお陰なのかな・・」
僕は呟く。
僕が彼女の顔を見ると僅かに微笑んで、少し寂しそうだった。
「今日泊まるところはここね」
「ミラージの宿」看板にはそう書かれてある。
「いらっしゃい。あらお久しぶりだねぇ」
愛想のいい宿屋の女将さんが話しかけてくる。
会釈して、中に入った。
「あら、どうしたのかしら?」
女将さんが心配そうに聞いてくるが
「・・後でお話しますね。取り合えず今日の宿お願いします」
「はいよ」
察したのか特に話しかけてこなかった。
先に僕に部屋に行っててほしいとの事で二階の指定された部屋に入った。
*****ウェンディ視点
一階のカウンターで
「女将さんどうしましょう・・」
「さっきの事かい?」
「実は彼記憶を無くしちゃって・・部屋分けたほうが良いですかね?」
「う~~~ん。彼に聞いてみたらどうだい?一緒でも大丈夫なら一緒にするとか・・」
「そうですよね!」
コンコンコン。
「入っていいかしら?」
「どうぞ」
返事を聞いてドアを開ける。
記憶を無くしてから他人の距離になってしまった。
かなり気を遣う。
「えっと・・変なこと聞くけど部屋別々の方がいいよね?一応他人だし?」
トワの様子を見ながら提案してみた。
「・・・前は一緒だったのですか?」
「うん」
「なら、一緒で良いです」
思いもかけない返事。
私は飛び上がりそうになるほど嬉しかった。
彼が私を忘れていても。
私って変だろうか?
「そ、そっか。良かった」
何だか顔が赤くなってる気がする。
嬉しいんだか、恥ずかしいんだかよく分からない感情だ。
「一緒の部屋でお願いします!」
私は女将さんに言った。
「そっか。良かったじゃないか。まあ、頑張りなね」
まだ少し辛いけど・・結構辛いけど・・理解してくれる人がいると少しは楽になる。
冒険者ギルドにも行かないとだしな。
明日の事を考えると少し憂鬱な気分になった。
ノックをして部屋に入る。
返事が無くて・・そっと見るとトワは疲れて寝てしまっているようだった。
「馬車は疲れるわよね」
それ以外にも気を使って疲れているのかもしれない。
彼は変わらず優しい人なのだ。
私はトワの頭を撫でていた。
「早く会いたいなんて思ってちゃ駄目よね・・でも会いたいな貴方に」
私を好きでいてくれた貴方に。
部屋は静まり返っていて、月明かりが暗闇を照らす。
神様は信じないのだけど、神頼みをしたい気分だった。
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