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06 コルネットの本心

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フェミニアは僕に付き合って何件か軽い依頼を受けた。
薬草採取は初心者の基本らしい。
今日もアンデスの森の中だ。

「虫が凄いね~」
「そりゃ、そうでしょ。ソウタ、今までどんな所で暮らしていたの?都とか?」

家の近くは草なんて生えていなかったし、木も無かったよ。
地面はアスファルトだし、木の代わりに電柱があったな。
住宅街だったからね。

「植物は無かったかな。フェミニアの所は?」
「え?ああ、普通の田舎町よ。自然は普通にあったし問題ないわ」

何故か慌てているフェミニア。
何だろう?

「植物が無いなんて変な所ね。異世界だからかしら?」
「僕の居た場所が無かっただけだよ。田舎いけば普通に…」
「やっぱり都育ちなのね!」

変な所で納得されてしまった。
フェミニアに薬草の種類を教わりながら採取する。
経験者がいると心強いな。

『ソウタはもうわたしが居なくても平気よね…』
「どうした?コルネット?」
『ううん。なんでもない』

コルネットの元気が無い。

「ほら、コルちゃんも探して!」

逆にフェミニアは元気だ。



   *



宿に戻り、突然コルネットが切り出した。

『ソウタ…わたし帰るね』
「ん?コルネット家に帰るの?」

『うん。ソウタが心配だったから、しばらく様子見ようと思ってたの。でももうフェミニアいるじゃない?心配いらないかなって…』

「そっか…寂しくなるな」

『最後に一つだけお願いして良い?』

コルネットはそう言うと、小指大の大きさから人間の女性の大きさになった。
目鼻立ちがクッキリしていて、明るい金髪に透き通った青い瞳。
20代くらいに見える。
グラマラスな体型に、背中には透明なキラキラした羽。

僕は、ドキッとした。
目の前の女性は儚げで見たことも無い美しい姿をしていた。

「こんなにキレイだったなんて…」
思わず呟いていた。

『目を閉じて?』
「う、うん」

僕は言われるがまま目を閉じた。
柔らかい感触が唇に触れる。

「え?」

コルネットは僕にキスをしていた。

えええええ?
顔が一気に熱くなる。
コルネット、僕の事好きなの?

「コ、コルネット?これは一体…」
『ソウタ、ありがとうね。今まで楽しかった』

コルネットは作り笑顔を見せた。
無理して笑ってる。
ここで帰らせたらいけない気がした。


「……まだ帰らなくて良いよ。僕もまだ一緒に居たい」

僕はコルネットをぎゅっと抱きしめた。
コルネットの目が大きく見開かれる。

『ソウタ、ありがとう。嬉しい』



   *



人間の大きさになったコルネットは、帰らずに僕と一緒に居ることになった。
フェミニアさんにはかなり驚かれてしまったけれど。

「コルちゃんが…おっきくなった…」

見た目的には、大人の女性なのでコルちゃん呼びは変えたほうが良いと思うのだけど。


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