BL(?)短編集

土田

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窮鶏獅子を噛む

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仕方なく、といった風に腕を下ろし横を通り過ぎる獅子雄さんの後に、ぶっちゃけ嫌々着いていく俺。
自分から場所を移動しようと言ったが、今更ながら逆に俺ピンチなんじゃ、と思う。
だってかなり苛立ってる獅子雄さんと二人きり、下手したら仲間がいるとこに連れてかれるかもしんないじゃないか!

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!
でも逃げたら余計ひどいことになりそうだし。
どうしよう!
今日こそ命日か?
昨日の先頭さんみたいに殴られたら、俺やばいよ。
本当、骨くらいは折れるよ。
この人変わったのは外見だけだってさっき分かったし。
怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


「おい。」

「ハイィ!!」


いきなり声を掛けられたことと、余りの緊張から声が裏返る。
まるでデジャブだ。


「チッ…此処でいいか?」

「か、構いましぇん!!」


舌打ちィ!!!

言い表わし様のない恐怖からわけも分からず返事をしてしまった。
しかも噛んだ。


―ガラッ


教室のドアを開ける音がした。
しかし特に何も考えず、と言うか頭真っ白で何も考えられずとにかく獅子雄さんに着いて教室に入ると、そこは少し埃っぽく、どうやら普段は使われていない様子だった。
少し回復した頭で一番始めに確認したのは、仲間の有無だ。
一応、姿は見えない。


「話の続き、いいか?」

「は、い。」


キョロキョロと辺りを見回していると声を掛けられた。
俺は少し戸惑いながらもなんとか返事をする。
それを聞いて獅子雄さんは、一瞬安心したような顔をした、様に見えた。


「昨日、お前に言われて思い出した。俺もお前を、その、好きに、なったとき、悩んだなって…」


“好き”という単語を言ったときに獅子雄さんは、照れからか顔が赤くなりそれを隠すように俯いた。
それを見て思い出す。
いや、覚えていたのに忘れていた。
俺さっき、人前でまた告白されんのが嫌で場所移動しようって言ったんじゃん。
すっかり殴られるもんだとばかり思ってしまった。
この短時間で忘れてしまうなんて、俺どんだけテンパってんだよ。
ビビリ過ぎだ。


「でも、好きになったからしょうがないって割り切ったら楽になって、男同士とか関係ないって…だから、昨日も。お前の気持ち、考えてなかった。」


本当にすまなそうに肩を落とす獅子雄さんからは、さっきのような怖さはもう感じなかった。


「始めは、目付きが悪いって絡まれて、喧嘩するようになったらそういう仲間増えてって、舐めらんねーように見た目も変えて…近寄りがたく見せようとしたのは俺なのに、忘れてた。」


怖さはないんだけど。
逆に、なんか…


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