BL(?)短編集

土田

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窮鶏獅子を噛む

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「お、俺が、荒巻ですが。」


手を上げ、おずおずと立ち上がる。
悪い方々の視線が一斉に俺に集まる。
教室にいたクラスの奴らはすでにこっちを見ていたので、教室中の視線が今、俺に向いている。
限りなく居心地が悪い。


「君がアラマキくんかぁ。」


先程、入ってきてすぐに俺の名前を呼んだ、先頭にいた方がにこにこしながらこっちに近づいてきた。
チャラそうだけど迫力あんな。
クラスにいる数少ないなんちゃって不良とは、何というか、オーラ?的な何かが違う。


「お名前は?」

「え、あ…良太、です。」

「ほうほう、リョータくん。いきなりだけどついてきてぇ。」


本当にいきなり、先頭さん(仮名)は俺の腕を掴んで歩きだした。
訳が分からないが、逆らうのも怖いので、とりあえず大人しく着いて行くとしよう。
それが得策だ。

今は昼休みだから、廊下に出ている生徒も多い。
当然、ぞろぞろ連なっている見るからに悪そうな方々の中に俺みたいな奴が一人、しかも明らかに連れられてる風に歩いていては、目立ちたくなくても目立ってしまう。
何も言わなくても道を明けてくれる生徒達。
まるでモーゼの十戒か大名行列。
したぁにぃー、したに!って感じだな。
ただ、大名行列と違うのは、道を明けた生徒達がこちらを見てひそひそ話をしているところだろうか。
ああ、居たたまれない。
俺が下を向いて歩いてるよ。


「リョータくんさぁ、りょーちんって呼ばれたりしてない?」


先頭さんが、これまたいきなり声を掛けてきた。
しかも内容は変な質問だ。


「いえ、呼ばれてません。」

「えっ!マジで!?」

「はぁ。」


何故そんなに驚くんだ?
意味が分からない。
つか俺何やってんだろう。
こんないかにも悪そうな方に手を引かれて、周りや後ろにももぞろぞろ悪そうな方々がいる。
つか明らかに先頭さん以外には睨まれてる。
もう怖すぎて頭パーンッしちゃったのかもしれない。

連れられるままに階段を登りながらそんなことを思う。
つか何時の間にか階段を登ってる。
そのまま行ったら屋上に着いてしまう。
屋上って言ったらアレだ、不良の溜り場。
そんなとこに行って何しようって……いや、この方々は溜り場に帰ろうとしてるだけだ。

何だろう。
今更ながら凄い怖くなってきた。
パシリならこんな手の込んだことしないだろう。
ということはリンチだ。
俺がいったい何をしたというんだ。
とてつもなく逃げ出したくなってきた。


―バンッ


「獅っ子雄ぉ!連れてきたよぉ!」


逃げ出したくなった途端に目的地に着いてしまうなんて。
タイミング良すぎるだろ、俺。

勢い良く開けられた屋上へと繋がるドアから光が校舎内に入り、手を引かれるままその光の中へと足を進める。


「お待ちかねの、アラマキリョータくんでぇす!」


先頭さんにそう紹介されると、グイッと手を引かれ先頭さんの前に出され、更にトンと背を押された。
前につんのめりながらも転けはしなかった俺。
以外と足腰強いのかも。

相変わらず俯いたまま軽く現実逃避をしていると俺の視界に俺以外の人の足が入った。

目の前に誰かいる。
しかし今、顔を上げてはいけない。
俺の本能がそう言って…


「顔上げろ。」

「はいっ!」


あまりの威圧感に、本能に逆らい勢い良く顔を上げる。
強者に従うのは弱者の定めだ、仕方ない。

でもやっぱり、俺の本能は正しかったようだ。
先頭さんのオーラ?なんて可愛いものだった。
きっとこの方が噂の一つ上の凄い不良なんだろう。
なんかもう桁違いだ。
何がって言われたらよく分からないけど、雰囲気、だろうか。

見た目は、まぁ不良だ。
染めたのか抜いたのかは分からないけど、根元が少し黒くなってる金の髪を後ろに流していて、ちゃんと見ると眉も同じ色だ。
ブレザーやネクタイなんてもちろん着てないししてない。
シャツはボタンが止められていない、と言うかボタンがないので全開だ。
手や耳は、シルバーアクセサリーがいやらしくない程度に主張している。
下は腰パンで、なのに足は短く見えない。
あぁ、スタイルがいいんですかそうですか。


「アラマキ、リョータ。」

「は、はい!」


さっきからはいしか言ってない俺。
我ながら情けない。
でも仕方ないと思うんだ。


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