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三章・金の亡者

眷属3

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 錬金術を一言で言うなれば「持ち運び可能な回復手段の唯一の製造方法」である。

 ジークハルトが言っていたことと概ね同じである。

 そして、錬金術が金持ちの道楽と言われている所以も分かった。それは、錬金釜が高価であるのと、錬金術で必要となる素材サナ草も同様に高価であるからだ。サナ草は、その存在自体が解明されておらず、どのような場所で育つのか、そもそもどのような方法で繁殖するのかなど、何も分かっていない。

「ってことは、まずはサナ草の解明がさきかぁ、、。僕、分析とか嫌いなんだけど。」

 いや、僕も今は一端の精霊。精霊は自然物、とりわけ植物とは相性が良い。だから、何とかなるかも、、多分ね。
 それに、サナ草さえ見つけられれば、ポーション作成はなんとかなりそうである。  レシピは、サナ草と聖水や聖なる魔力が含まれた魔力水、または単なる魔力水が基本にあり、そこにポーションに欲しい効果に合わせて素材を付け足していくようだ。だから、レシピ面では不観点はないと思う。
 本には、錬金術で一番の壁となるのが魔力操作だと書いてあった。
 僕は、魔力操作には自信があるからね。まあ、誰とも比べたことないから分からないけど。

 『錬金術の始まり』の最後には、錬金術の展望が書いてあった。曰く、錬金術によって作られるポーションは、初心者や中級者の傭兵にこそ必要であり、もしポーションの大量生産が可能になったら、人類は魔物との終わりなき争いに終止符を打つことができるだろうと。
 
 むふふ。いいことを見た。これこそ、僕がこの世界で起こる魔物の反乱を止めるための策となるだろう。

 以前は、傭兵組合を乗っ取って、おっと、占拠、じゃなくて、利用して、そう利用して魔物対策をしようと考えていた。

 自分で好き勝手に軍事力を動かせる点ということに注目すれば国でもいいかな?とか思っていたが。いや、国を乗っ取るとかやったことないけど、王族を亡き者にして、玉座にヌルッと座り込めば何とかなると思うんだよね。

「紅茶のおかわり。」

「かしこまりました。」

 ちなみに、この宮殿にはお茶ができる一式がある。いや、天使たちが作ったのかな?
 僕がここを利用するときはいつも無心で本を読むだけだったから。

 おっと、話がそれた。
 最終的に国を乗っ取るのは面倒くさいと思い、やめた。何が面倒くさいって、国民の面倒を見ることだよね。流石に、こっちの事情で乗っ取ったんだから、その国に紐づいている国民は保護しなければ。
 だが、それは僕がガチガチに働かなければならないということである。それは、イヤだ。僕は時短で高額がモットーである。
 国の仕事なんて終わりのない仕事と同義。忙しいに決まっている。

 ってことで、軍事力を意のままに動かせないという欠点はあるが、僕がするのは依頼をするだけで解決な傭兵組合を利用することにしたのだ。
 それに、傭兵組合は各地に散らばっており、魔物対策としてはとても有効的である。

「ふっふっふっ、僕ってば天才だね。」

「まさに、偉大なる神として相応しいと言えましょう。」

 ここにいる天使たちは、僕のことを持ち上げてくれる。要はヨイショしてくれるってことだ。

 今までこういうやつがいなかったから、ヨイショされると思いの外気分が上がってしまう。
 気分が上がる、それは要らぬことを後先考えずに実行してしまう前振りだとも言えるだろう。

「いいねぇ君ぃ。そんな君は僕の眷属に仲間入りさせてあげよう!!」

 出会った当初、いや、数時間前までは怪しいとか何とか思っていた相手に、この始末である。

「な、なんと、私に、栄誉ある立場を授けてくださるとは。私、誠心誠意、新たなる神我が君にお使えしたい所存です。」

「うむ。」

 感動されてしまった。
 何も考えずに、適当に言った言葉だったが、無事に僕と自称天使くんとの間のパスは繋がったようである。良き。

 では、眷属記念として、自称天使くんの秘密を丸裸にしよう!!

『名前:
 年齢:0歳
 種族:大天使
 称号:神の眷属/天使を束ねる者
 職業:知識の番人
 天賦:巡り            』

 うむ。特に新しい情報はないね。
 いや、あるか。この人、名前がない。

 せっかくの眷属である。いつまでも天使くん呼びは失礼に当たるかもそれない。

 うーん。天使ねぇ。
 最上位の天使って、熾天使っていうんだっけ?それとも、よく聞くミカエルとかウリエルとか?

 有名人の名前を文字って名付けるのはよくある話だけど、それだと味気ないよね。

 うむ、もう仮の名として役職から文字った『司書』くんとかでいいのでは?
 この知識の宮殿を管理するとなれば、書籍の管理、つまりは司書と同等の働きをするということである。
 どうせ名前をつけても、結局は心の中で役職でよびそうな気配がそこはかとなく。

 許せ司書くん、今度もっと良い名前を付けてやるから、今は僕の中でシーくんとして生き続けるのだ。

「ハッ、我が君。私などに名まで授けてくださるとは。この命果てるまで、貴方様と共に。」

 ん?名前?
 いや、司書くんは名前であって、真名なまえではない。
 だから、シーくんが名付けと同様の行為になるはずがない。てか、そうだと困る。

「ち、ちなみにさ、その名前っていうのは、、」

「はいっ!!『司書』でございます!!私、この名に相応しい眷属となってみせます!!まずは、私が我が君の眷属となったことのお披露目からーー」

「いや、お披露目とかしないからね。」

 お披露目とか、僕なんちゃって神様だから、信者の1人もいないのだ。つまり、お披露目するにしてもする相手がいない。
 寂しいわ。

「な、なぜでしょう。もしや、、私が何が後無礼を、、?」

 自称天使くん改め、司書くんが絶望をあらわにした表情で僕に話しかけてくる。
 こいつ、天使っていうぐらいだし、顔も立ち振る舞いもザ高位の者って感じなのに、こんなに表情がコロコロと変わってはただの飼い主に求愛するペットにしか見えん。
 
 だが、残念だな司書くんよ。もうペット枠にはラズリーという獣人がいるのだよ。
 それよりも、絶望顔の司書くんを慰めなくては。これからも彼には世話になる予定だからね、機嫌をとっておかねば。
 
「お披露目はね、時期が大事なんだよ。やっぱり、タイミングを自分で作るのは神らしくないからね。自ずとやってくる時を待つのさ。うん、そうさ。」

 神らしさとか、タイミングとか、もう口から出まかせが溢れている状況だが、とりあえず、これでヨイショは済んだだろう。

「なんとっ!!そこまで考えていたのですね?!」

 うむ、いい感じに思考誘導ができたようである。上出来だな。

 さてさて、このまま天使たちにヨイショしまくられるのもいいけど、僕は今錬金術の基本的なレシピとやり方を習得したところである。早速、実践に行きたいと思うのが自然の摂理だろう。

 ということで、司書くんに別れを告げ僕は現実世界に戻る。

 ポーションを作る算段はついた。次なる問題は、ポーションは高く売れるのかというところである。
 僕的にはポーションで早急に資金難を解決したいところである。
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