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三章・金の亡者
宿屋
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異空間。
それは、僕の魔法で空間を捻じ曲げて作った、こことは別と空間のことである。そんな空間は現在、僕の荷物置きとして活躍中である。
以前は荷物置きとしてか使ってなかったけど、旅を始めて、具体的には野営をする必要が現れたときに僕は思った。この異空間、生物も入れるのでは?と。
ファンタジー小説の知識を基盤に今まで生きてきたからか、僕が使用している異空間は、小説にあるインベントリなどと同じ部類で考えていた。大概インベントリとかは、生物は入れないとかって制限があったからね。
だが、僕が使っているのは異空間であり、この世界における魔法は自由である。制限なんて付いているわけがない。
と言うことで、僕たちはもっぱら異空間で寝起きするようになっている。
この旅では魔法を使わないとか宣言していたが、異空間だけは利便性という一点が突き抜けているので、例外とする。
僕らは砦での一泊も異空間で過ごした。
時計はないし、時間の概念もないが、探知の魔術に集中すれば、異空間にいても現実世界の人間の動きは分かる。
だから、僕たちは副団長が呼んだ応援となると隊員を何食わぬ顔で出迎えることができた。
野宿であっても、僕たちのQOLは常に一定なのだ。
「っ、失礼。あなた達が、ボルド様のおっしゃっていた旅人で間違い無いだろうか?」
十人ほどの部下を連れた騎士が代表として話しかけてきた。なんか、緊張気味なんだが?もしや、僕のことを警戒しているのだろうか?
「ええ、と言うことは、あなた方が応援ということですか?」
僕が訝しんでいる間に、ジークハルトが返答をしてくれた。
しかし、ジークハルトが応援の騎士と僕を引き離すように動いていることに意味はあるのだろうか?
ハッ、もしかして、ジークハルトも僕が騎士たちを無闇に傷つけないか疑っているのか?
失礼である。
「ああ、そうだ。我らは、あなた達二人の護送を任されている。」
「それは、ご丁寧にありがとうございます。」
護送か。ようは僕たちが危険であるかの観察というところかな?
***
2日後、僕たちは街に着いた。
特に何の出来事もない道中であった。
「何もなかったね。」
「ええ、拍子抜けするぐらい、何もありませんでした。」
僕たちは今、森から街まで護衛をしてくれた騎士たちが紹介してくれた宿にいる。
これもまた、監視の一環ではある思われる。
だが、今の僕は監視などどうでも良いのだ。何てったって、この宿にはベッドがあるからね。
久々のベッドである。いや、久々どころじゃない。
しっかりとした作りのベッドは、この世界に来てから初めてである。
しかも、この宿はお高いらしい。
この宿に至るまでに街中を少し歩いたが、その道中にも宿屋はあった。
しかし、それらの宿屋を素通りして、僕たちはこの宿にいる。その素通りした宿屋と比べても、僕らが今いる宿はダントツで大きく、外装も綺麗である。
この待遇を見るに、あの副団長は僕たちを脅威とは認識しているが、あくまでもてなす考えらしい。
それにしても、ベッドは気持ちいな。
これを味わうと、僕たちが使っていた即席ベッドはとてつもなく寝にくい代物であったようだ。
「ところでラント様、この獣人はどうしますか?」
おっと。忘れていた。
この2日間、獣人くんの定位置はジークハルトの背中だったのだ。異空間に放り込んでおいても良かったのだが、その空間には僕らの私物がある。それを無闇に触られるのも嫌だし、背負うことにしたのだ。
まあ、僕が背負っていない理由は、まあ、面倒臭いからだよね。ジークハルトに嫌なことを押し付けたと言うことなのだが、現在の彼は僕の従者。ならば、彼をどのように使おうが僕の勝手なのだ。ある程度の倫理観に引っ掛からなければ、良いのだよ。
「えっ~とね、あ、あそこのソファーに寝かせておいて。」
僕は部屋を見渡し、ベッドが離れた場所にあるソファーに指さす。
この獣人くんは喧嘩っぱやいのだ。
砦の牢屋にいたときも僕の睡眠の魔術に抗ったように、この獣人くんは僕の魔術に抗おうとし、まあその隙を狙って僕のことを襲ってくるのだ。
僕は助けてあげているのに、酷いったらありゃしない。ただ、ケモ耳及びケモ尻尾をモフるために、この獣人くんには元気になってもらわなければ。
「っう、、、おれ、は、、」
「眠りの波動」
ふう。びっくりしたね。獣人くんが起床してしまったよ。
まあ、こんな感じで、魔術がよく切れるのだ。そのとき、もし獣人くんを野放しにしておけば、僕のモフモフがいなくなってしまう。だから、面倒臭いけどジークハルトに背負ってもらっていたのだ。
まあ、街で手頃な獣人を見つければいいのかもしれないけど、僕は人間不信だからね。獣人くんを助けることで、無理やり恩を作り、それを元に強制的に代償を払わせる。
横暴ではあるが、僕は安全にモフりたいのだ。そのためには、多少の苦労は厭わない。
コンコン
「ラント様、ジークハルト様、お食事の準備が整いました。お待ちしてよろしいでしょうか?」
お!!ご飯のお知らせだ!!
何の声かけもしていないのに、ご飯の用意ができているとは、なかなか優秀だね。
「お願いします。」
僕は答えないよ。主に人類との会話はジークハルトに任せることにした。
「どんな料理かなぁ?」
「この宿自体が高級志向のようですし、楽しみですね。それにしても、料理をしなくても食事ができるとは、素晴らしい。」
ジークハルトが家事に疲れた人と同じことを言い出した。
いや、手伝おうとしたことはあるんだよ?
でも、かえって邪魔になったからやめたよね。
それは、僕の魔法で空間を捻じ曲げて作った、こことは別と空間のことである。そんな空間は現在、僕の荷物置きとして活躍中である。
以前は荷物置きとしてか使ってなかったけど、旅を始めて、具体的には野営をする必要が現れたときに僕は思った。この異空間、生物も入れるのでは?と。
ファンタジー小説の知識を基盤に今まで生きてきたからか、僕が使用している異空間は、小説にあるインベントリなどと同じ部類で考えていた。大概インベントリとかは、生物は入れないとかって制限があったからね。
だが、僕が使っているのは異空間であり、この世界における魔法は自由である。制限なんて付いているわけがない。
と言うことで、僕たちはもっぱら異空間で寝起きするようになっている。
この旅では魔法を使わないとか宣言していたが、異空間だけは利便性という一点が突き抜けているので、例外とする。
僕らは砦での一泊も異空間で過ごした。
時計はないし、時間の概念もないが、探知の魔術に集中すれば、異空間にいても現実世界の人間の動きは分かる。
だから、僕たちは副団長が呼んだ応援となると隊員を何食わぬ顔で出迎えることができた。
野宿であっても、僕たちのQOLは常に一定なのだ。
「っ、失礼。あなた達が、ボルド様のおっしゃっていた旅人で間違い無いだろうか?」
十人ほどの部下を連れた騎士が代表として話しかけてきた。なんか、緊張気味なんだが?もしや、僕のことを警戒しているのだろうか?
「ええ、と言うことは、あなた方が応援ということですか?」
僕が訝しんでいる間に、ジークハルトが返答をしてくれた。
しかし、ジークハルトが応援の騎士と僕を引き離すように動いていることに意味はあるのだろうか?
ハッ、もしかして、ジークハルトも僕が騎士たちを無闇に傷つけないか疑っているのか?
失礼である。
「ああ、そうだ。我らは、あなた達二人の護送を任されている。」
「それは、ご丁寧にありがとうございます。」
護送か。ようは僕たちが危険であるかの観察というところかな?
***
2日後、僕たちは街に着いた。
特に何の出来事もない道中であった。
「何もなかったね。」
「ええ、拍子抜けするぐらい、何もありませんでした。」
僕たちは今、森から街まで護衛をしてくれた騎士たちが紹介してくれた宿にいる。
これもまた、監視の一環ではある思われる。
だが、今の僕は監視などどうでも良いのだ。何てったって、この宿にはベッドがあるからね。
久々のベッドである。いや、久々どころじゃない。
しっかりとした作りのベッドは、この世界に来てから初めてである。
しかも、この宿はお高いらしい。
この宿に至るまでに街中を少し歩いたが、その道中にも宿屋はあった。
しかし、それらの宿屋を素通りして、僕たちはこの宿にいる。その素通りした宿屋と比べても、僕らが今いる宿はダントツで大きく、外装も綺麗である。
この待遇を見るに、あの副団長は僕たちを脅威とは認識しているが、あくまでもてなす考えらしい。
それにしても、ベッドは気持ちいな。
これを味わうと、僕たちが使っていた即席ベッドはとてつもなく寝にくい代物であったようだ。
「ところでラント様、この獣人はどうしますか?」
おっと。忘れていた。
この2日間、獣人くんの定位置はジークハルトの背中だったのだ。異空間に放り込んでおいても良かったのだが、その空間には僕らの私物がある。それを無闇に触られるのも嫌だし、背負うことにしたのだ。
まあ、僕が背負っていない理由は、まあ、面倒臭いからだよね。ジークハルトに嫌なことを押し付けたと言うことなのだが、現在の彼は僕の従者。ならば、彼をどのように使おうが僕の勝手なのだ。ある程度の倫理観に引っ掛からなければ、良いのだよ。
「えっ~とね、あ、あそこのソファーに寝かせておいて。」
僕は部屋を見渡し、ベッドが離れた場所にあるソファーに指さす。
この獣人くんは喧嘩っぱやいのだ。
砦の牢屋にいたときも僕の睡眠の魔術に抗ったように、この獣人くんは僕の魔術に抗おうとし、まあその隙を狙って僕のことを襲ってくるのだ。
僕は助けてあげているのに、酷いったらありゃしない。ただ、ケモ耳及びケモ尻尾をモフるために、この獣人くんには元気になってもらわなければ。
「っう、、、おれ、は、、」
「眠りの波動」
ふう。びっくりしたね。獣人くんが起床してしまったよ。
まあ、こんな感じで、魔術がよく切れるのだ。そのとき、もし獣人くんを野放しにしておけば、僕のモフモフがいなくなってしまう。だから、面倒臭いけどジークハルトに背負ってもらっていたのだ。
まあ、街で手頃な獣人を見つければいいのかもしれないけど、僕は人間不信だからね。獣人くんを助けることで、無理やり恩を作り、それを元に強制的に代償を払わせる。
横暴ではあるが、僕は安全にモフりたいのだ。そのためには、多少の苦労は厭わない。
コンコン
「ラント様、ジークハルト様、お食事の準備が整いました。お待ちしてよろしいでしょうか?」
お!!ご飯のお知らせだ!!
何の声かけもしていないのに、ご飯の用意ができているとは、なかなか優秀だね。
「お願いします。」
僕は答えないよ。主に人類との会話はジークハルトに任せることにした。
「どんな料理かなぁ?」
「この宿自体が高級志向のようですし、楽しみですね。それにしても、料理をしなくても食事ができるとは、素晴らしい。」
ジークハルトが家事に疲れた人と同じことを言い出した。
いや、手伝おうとしたことはあるんだよ?
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