神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー

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三章・金の亡者

お前らやっちまえ!

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 人里離れた森を歩いていたら、盗賊の集団を見つけた。なんてアンラッキーなんだろうか。ここは、普通一般人を見つける流れだと思う。

「ここでタイム。」

 見つけてしまったものはしょうがない。て、盗賊側にも僕たちの存在が見つかってしまったことはしょうがない。
 だが、盗賊なんて討伐してもしなくても僕には関係ない。依頼で金がもらえるなら積極的に行くが、今回はそうではない。

「あれ?このまま、討伐一直線だと思ってました。」

 なんと、好戦的思考回路である。

「いや、あのさ、討伐しても何もないじゃん?依頼とかならお金もらえるしやるよ?でも、ここで盗賊を討伐したとしても、僕たちにとっては関係ないじゃん。」

「そうですか。ですが、盗賊は財宝を隠しているー」

「よし!!討伐するぞ!!皆殺しだ!!」

 決して好戦的な訳ではない。儲けがあるから討伐するだけだ。
 でも、初めて生き物に魔術をぶつける。
 そのことに少しばかり、高揚している。
 ちなみに、サバイバル生活が長すぎるし、この世界のクズみたいな人間も見たことがあるので、人を殺すことに躊躇はない。この世界は、やらなければ、やられる世界なのだから。


 僕らは絶賛品定めをされている途中と言ったところだろう。
 僕たちと砦の距離は、大体50mぐらい。
 平地なら丸見えだけど、ここは森の中である。木々が邪魔をして、視界が悪くて仕方がない。
 いや、視界の悪さとか以前に、、

 ザシュッ

「結構手が込んでるね。」

「ええ、侵入者対策はしているようですね。」

 さっきから、僕たちを剣や弓で襲ってくる。これは、別に人力でやっているわけではなさそう。
 魔術的な仕掛けで、そこを人が通ると設置してある武器を射出するようだ。まあ、威力も範囲も僕たちの脅威にはならないから問題はない。

 だが、盗賊とはこんなにも手の込んだことをするのだろうか?
 いや、自分たちの拠点を守るのだから、ある程度の罠は用意するかもしれないが、僕は今まで砦との距離が大体200m程度の距離に入ってから一歩歩くごとに罠に引っかかっている。
 罠にかかりすぎたという言葉は聞かないことにする。

「ただ、多すぎだと思うんだけど?盗賊って、こんなに用心深いの?もっと、ノリで生きてるかと思ってたよ。」

「そうですね、ある程度の罠は想定内ですが、ここまで罠の数が多いと、少し考える必要があるかもしれません。」

「あれ?心配事?」

「ええ。ここまでの罠を仕掛けるには技術も時間も必要とします。つまり、この砦にいる盗賊はそれだけの戦闘力を持ち、長い間討伐されなかったということです。」

 気をつけろってことだね?
 しかし問題ない!!なんてったって、今現在も探索の魔術を使って、相手の動きを見ているのだから。


***


「っ、お前、そんなお綺麗なやつが俺たち『龍の息吹』になんのようだ?」

 砦との距離が2、30m程度になると、今までの猛攻が嘘だったように、罠による攻撃がなくなった。代わりに、10人ほどの人間が僕たちの後ろに回り込むように、森の中に潜んだ。
 そして、砦がこの目ではっきりと認識できるようになった時、砦の門番であろう人間から声をかけられた。

「お金が欲しいです。下さい。」

 相手が対話を望むなら僕もそれに従う。
 それ故に、着飾らない僕の望みを伝えてみた。

「、、はぁ?お前、何言ってやがる。それはつまり、俺たちに金を出せということか?お前が俺たちに身体で代価を支払うってんなら、聞かないこともないが。」

 随分と会話の時間が長いね。盗賊なんだから、もっと荒っぽいかと思ったのに。いや、颯爽と性行為を強制するあたり、荒っぽいというより、ただ下品なだけだね。
 まあ、目的は時間稼ぎかな?

「まあ、端的に言うとそうだね。それと、君たちに支払う代価などないよ。だから、ちょうだい?」

「っ!テメェ。俺たちに喧嘩売ってるのか!お前たちやっちまえ!!」

 それが、敵を襲う掛け声だったようだ。会話の時間を使って四方に飛び散っていた盗賊が、僕たちに向かって走り刃を向けてくる。
 だが、盗賊との接敵なのだ。これぐらいの急展開はつきものだろう。

「ジークは後方をお願い。僕は見晴らしをよくするよ。」

「かしこまりました。」

 その声と共に、ジークハルトは風のように動き、敵を攻撃する。ちなみに、ジークハルトは剣で攻撃している。この前見つけた魔鉱石を魔力で加工して、即席の剣を作った。
 即席ではあるけど、僕が精霊の力を馴染ませながら作った逸品だ。そう簡単には折れない。ぜひ愛用してもらいたいところだ。

「土屑よ。」

 僕は自分の声を合図に、空中に石礫を高速で打ち付ける魔術を展開する。
 これは、簡単な魔術であるが、術式を工夫することで石礫の打ち付ける速度を変更することができる。つまりは、音速を超えるスピードの石礫が敵に襲いかかるのだ。

「おいおい、本当に綺麗な、ガッ!」
「へっ!そんなチンケな魔術なんて-」


 僕は正確に頭を打ち抜いていく。
 僕の流儀として、無駄な魔力は使わないようにしている。より正確に、より楽に敵を仕留めるのだ。

「お、おい!、なんだよ、なんなんだよお前ら。、、ダ、ダメだ。ボスに知らせないと。」

 おっと、門番が逃げようとしているね。
 ジークハルトも警戒していたようだし、援軍を呼ばれるのは防ぎたいね。 
 僕の周りにいた敵は全て片付けたし、あの門番を殺そうかな?
 さて、なんの魔術を使おうか。火で焼く?いや、綺麗な死体を望むなら溺死かな?
 うーん、悩ましい。いかんせん真術を使った初めての実践だ。使いたい魔術が多すぎる。

「よし、じゃあ、水で」

 そう思い、敵を視界に入れた時だった。
 その時既に、門番は首と胴が離れ離れになっていた。死体となった門番の近くには、血のついた剣を持っているジークハルトがいる。

 、、、。うん、敵地で悩むとかダメだよね?
 ごめんね。
 怒られる前に謝っておくよ。
 
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