神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー

文字の大きさ
上 下
39 / 66
三章・金の亡者

魔道具

しおりを挟む
「グフ、グフフ、グフフフ。いや~ぁ、笑いが止まりませんな~ぁ。」

「ちょっとラント様、もっと上品に笑ってくださいよ。」

「だ、だって、仕方がないじゃないか。こんなにあったら、魔道具が作り放題なんだから!!」

 作りたいと思っていたものを先延ばしにされると、どんどんその思いが強まるってあるよね。今の僕の状態がそれね。

「そんなことより!魔道具作りだよ!!」

「そんなことではないのですが、まあ、良しとしましょう。それで、魔道具作りはどのぐらいの確率で成功しそうですか?」

「確率?」

 待ってくれよ。僕は100%成功させるつもりでいたのだが?

「魔道具は、熟練の職人でも失敗はつきものであると言われています。具体的には、成功率が7割を超えれば天才と言われますね。」

 おっと。ここで、厳しい現実を突きつけられた。
 僕の認識では、魔道具作りは基本的な手順を踏めば成功するものだと思っていた。
 
 さて、どう答えようか。100%とか言ったら、イキってる新人みたいに見える。
 でも、魔道具により資金回収をしようとしてるんだから、弱気なことは言えない。
 曖昧に答えておくか。そうすれば、失敗しても「まあそうだよね」みたいな感じになって、成功したら「すごいね」って感じになる。

「ま、まあまあかな?でも、ほらさ、病は気から、魔道具の作成もそれに倣って、成功させるつもりだよ。」

「確かに。国にいた魔道具技師も気持ちは大事と言っていました。」

 魔道具技師とは、魔道具を作る人のことかな?随分とカッコいい名前だね。
 取り敢えずは、いい感じに返答できた。
 ここからは、魔道具作成だ。
 初めてだし、簡単な魔道具がいいんだよね。



***


「できた!できたよ!!」

「結局、何の魔道具を作ったんですか?」

「結界の魔道具!!」

 結局、僕は直ぐには何の魔道具を作るか決められず、頼まぬ綱の知識の宮殿を頼ることにした。
 宮殿に行って、『魔道具大全』を引っ張り出して、適当にページを捲る。そして、そのページ書かれていた魔道具を作ったって訳。
 すごく簡単でしょ?
 最初に作る魔道具だし、思い入れもできるだろうけど、ここで悩んでも時間の無駄だからね。

「、え?」

 まだ起動させてないからはっきりないが、作成段階では今回の魔道具が失敗している確率は低い。
 そう思って、ジークハルトに報告したのだ。僕的には、「素晴らしいです!!」みたいな反応を期待していた。いや、もらえると確信していた。

「、、え?ほ、本当に結界の魔道具ですか?」

「うん?そうだよ。あ、しかもね、しっかりと魔力が常時供給されるように魔法陣を詰め込んだからね。これで安心安全!どう?すごくない?」

「え?それは、えっと、すごいのですが、、その、思っていたより高度な魔道具でびっくりしました。」

 なんか、戸惑ってる感じが、本当に驚きすぎて戸惑っているのか、僕の作ったものが凡庸すぎて戸惑っているのか、どっちかわからないんだよね。
 いや、待てよ。ジークハルトは、この魔道具が本当に作動するか分からないから、困惑しているのでは?
 ならば、僕のやることは一つ!!

「バリア!」

 僕は今作った魔道具を掲げて、暗号キーを発現する。ちなみに、今回の魔道具には純粋な魔鉱石を使った。大きさも小さめだ。大きすぎると、いざという時に使えないからね。バリアの魔道具は、いかにいつでも持ってもらうかが大事、って『魔道具大全』が言っていた。
 
 結界の魔道具は、僕の暗号キーに反応し、僕の全方位を守るように作動した。
 この魔道具により発生する結界は、無色の透明な一枚板が出現し、結界の耐久値までの攻撃を受けると消滅する。

「ほ、本当だ、、。す、すごいですよ!!これは、本当にすごいですよ!!」

 お?ジークハルトが僕の魔道具の効果を見て、絶賛してくれたね。
 うむうむ。満足のいく結果が得られて、僕は満ち足りた。

「で、これっていくらで売れる?てか、売れる?」

「う、売れるに決まってますよ!!いや、やはりダメかもしれないです。」

 あれ?あんなに褒めてくれたなら、売れると思ったのに。

「これ結構な自信作なんだけど。」

 僕の作品が否定されたみたいだ。さっきまでの有頂天が嘘のように、僕は今どんより気分だ。

「い、いえ、ラント様の魔道具に問題はありません。問題なのは、結界の効果なんです。」

「?結界はしっかり作動してるよ。」

「ええ。この魔道具は、逆です。効果がすごすぎるんですよ。現状結界の魔道具は、小規模のものでも多数の魔導士によって展開されます。見たところ、その魔道具の消費魔力は少ないようです。」

 おっ、良いところに気がついたね。
 僕ってば、初めての魔道具作りだけど、アレンジを加えたんだよ。それが、魔力の効率化。より少ない魔力で、より頑丈な結界を、より長時間って言うテーマでアレンジした。
 それをわかってもらえるとは、嬉しい限りだ。

「そうだよ、僕ってば頑張った。あれ?もしや、僕は頑張りすぎたってこと?」

「分かってくれましたか。この魔道具を売れば、それはすごい資金になります。ただ、ラント様が様々な人類にマークされることと引き換えにです。」

「、、、。」

「どうしますか?売りますか?」

 僕の第一目標としては、資金集めだけど、人間不信な僕は積極的に人類と交流する気はない。まあね、たまには交流したいよ。でも、人類にマークされると、交流なんて生優しいものでは終わらなくなりそう。
 最悪、どこかの国に所属とかにされるかも。基本のベースは、森で引き篭もることを考えると、国に所属は超えてはならない一線となる。
 うむ。そうすると一択だね。

「売るの、やめるよ。」

「英断です。」

 簡単に魔道具が成功したし、楽勝で資金集めができると考えていたが、品質が良すぎるという贅沢な壁にぶちあったってしまった。
 僕は権力や名声が欲しいわけではない。いや、もちろん憧れはするけど、積極的にはなれないよね。
 そんな僕には、品質が良すぎる魔道具を売るってことは、相性最悪ってことだ。

 ということは、これからの魔道具作りは、意識的に品質を落とすってことか。
 自分の作品なんだから、全力で取り組みたいが、ここは金のためだ。仕方がない。
 僕は、さっき生まれたばかりの職人魂(仮)を封印することにした。
 
 全ては金のためだ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

烏木の使いと守護騎士の誓いを破るなんてとんでもない

時雨
BL
いつもの通勤中に猫を助ける為に車道に飛び出し車に轢かれて死んでしまったオレは、気が付けば見知らぬ異世界の道の真ん中に大の字で寝ていた。 通りがかりの騎士風のコスプレをしたお兄さんに偶然助けてもらうが、言葉は全く通じない様子。 黒い髪も瞳もこの世界では珍しいらしいが、なんとか目立たず安心して暮らせる場所を探しつつ、助けてくれた騎士へ恩返しもしたい。 騎士が失踪した大切な女性を捜している道中と知り、手伝いたい……けど、この”恩返し”という名の”人捜し”結構ハードモードじゃない? ◇ブロマンス寄りのふんわりBLです。メインCPは騎士×転移主人公です。 ◇異世界転移・騎士・西洋風ファンタジーと好きな物を詰め込んでいます。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

処理中です...