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三章・金の亡者
獣人
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「こんにちは。報奨金はでますか?」
「えっ、、、。そ、それは、すまない。私では判断ができない。」
「失礼しました。私たち、各地を旅しているもので。ですが、長旅で路銀が尽きてしまい、まいっていたのです。無礼な態度、お詫び申し上げます。」
感謝するよ、ジークハルトよ。僕ってば、欲望が全面に出過ぎてしまっていたようだ。失敬。
まあ、ジークハルトが上手い具合に誤魔化してくれそうだ。
「あ、ああ、驚いたが、まあ、そういうこともあるだろう。して、すまないが、君たち傭兵組合からのいらいできたのではないのか?」
ジークハルトに、会話をするように目線を向ける。
「ええ。旅の途中でたまたまこの砦を見つけまして、襲われたところを応戦しまして。このような結果となりました。」
多分僕は人との会話に向いていない。そもそも、日本にいた時から人との会話をしてこなかったし、今もジークハルト以外と喋らないから。
他人との会話は、ジークハルトに任せた方が穏便に済む気がするね。
「先程、この城が壊れたのも、君たちの仕業ということか?」
「ええ、こちらのラント様の魔術をによるものです。」
おっ!僕のお話になったね。これは、僕の自慢話をした方がいいのかな?
いや、それよりも、僕はもっと高威力の魔術を使えますよとアピールした方がいいかな?ちゃんと君たちを助けるために、手加減したんだよ?的な感じに。恩売れるかもしれない。
「ぼーー」
「大きな魔術の使用は控えようと思っていたのですが、地下にいらっしゃる方の救出を急ぎまして。驚かすような真似をして、申し訳ない限りです。ですが、あの魔術は一度使ったら数日間は使えませんし、魔力も底をつきますので。」
「え、そーー」
さっきから、ジークハルトが僕が話そうとするのを妨害してくる。失礼な!!
僕が最高のプレゼンを披露して、恩をうろうとかしているのに。
「そうか。いや、驚きはしたが結果として私は助かったのだ。」
「ええ、そう言っていただけると、こちらも安心します。そして、一つお伝えしなければならないことがあります。他の隊員の方なのですが、、、」
「ああ、いや、分かっている。あいつらは、私の目の前で仲間を殺していったからな。その点は、了承している。」
色々と僕のアピールをしたいが、さっきからのジークハルトの対応を見るに、僕は喋らない方がいいようだ。
仕方がない、もう一人の生き残りの面倒を見るとするか。
もう一人の生き残りは、副隊長がいた牢屋から少し離れたところにいた。
服は粗末な下着のようなものを一枚着ているだけであり、全身は傷だらけである。
これは拷問の後、というところかな?
今、その人物は寝ているようで、身動き一つしない。まるで、死んでいるようだ。
いや、てかこれ放っておいたら本当に死ぬんじゃない?
「おおーい、大丈夫ーーって、ケモ耳!!」
少し汚いため、声掛けで起こそうと思い、生き残りに近づくと、なんとその者にはケモ耳があるではないか!!
「っ!だ、れだ、、、。」
「君は犬系の獣人?」
この時の僕は、生き残りの怪我とか、身体が汚いとか、そんなことどうでもよかった。
そう、ただケモ耳のみを求める者へと変貌した。
「ケ、ケモ、ケモ耳が、生ケモ耳が見れるとは、、」
「お、、い、、、おれ、、を、た、、、す、けろ、、」
なんか細切れに喋っている。が、僕には関係ない。
ファンタジー小説を見ていた頃から、ケモ耳への憧れがあった。最初は、ペットに部類される動物の方がいいじゃんと思っていたが、小説の主人公たちがこぞってケモ耳を追い求めている描写を読んでいるうちに、僕もケモ耳への憧れが募るようになった。
本当は、小動物みたいなケモ耳が良かった。この生き残り君(一人称が俺だったから)は、随分とでかい。ジークハルトと良い勝負である。
さてさて、では魅惑のモフモフを触るとしますか。
「いや、汚いわ、、。うん、汚い。」
触ろうとして、僕の思考は現実に戻された。汚い。それは、多分この人自身の汚さとかじゃなくて、監禁されていた、または拷問されていたからこその汚さだろう。
ただ、僕にはそんなこと関係ない。事実として、この者は汚れている。
「汚れを払う風」
思考することもなく、僕は生活魔法とも言われる簡単な魔術の一つ『汚れを払う風』を使う。
この際の汚れは、汚れであり、魔力の澱みである瘴気は払えない。
「お、まえ、、、な、に、、を、」
さっきから、細切れにうるさい。喋るならいっぺんに喋ってほしい。聞き取りにくいったらありゃしない。いや、まあ、それだけこの者が弱っている証拠なんだろうけど、、、。
「眠りの波動」
うるさいから、眠らせることにした。
まあ、意外なのが、こんなにも衰弱しているのに、僕の『眠りの波動』に争おうとしたことだよね。
「ラント様、終わりましたか?」
「うん、そっちは?」
報奨金の足掛かりになりそうな人との会話は、ジークハルトに全投げしたけど、大丈夫かね?
まあ、僕が相手するより絶対に良い結果になるだろうから、文句は言わない。
「情報のすり合わせは終わりました。流石に、精霊だと言っても信じないでしょうし、混乱を招きます。私たちはディーセント教国の悪政から逃れてきた旅の者としました。」
「うん、まあ、僕にそこら辺はよく分からないから。ジークの判断に任せるよ。」
この世界との関わりがない僕には、何が良くて何が悪いのかって言う、この世界の一般常識すらない。
知識の宮殿からある程度の知識は学んだけど、それが普段の生活の常識にも適用できるとは限らない。
「ラント様の方はどうですか?」
「ああ、なんか獣人がいたから、モフろうかと、、」
「モフる?とは?」
「わしゃわしゃすることだね。」
毛量の多い動物をわしゃわしゃするのは、リラックス効果がある、、って小説に書いてあった。僕はしたことがない。だから、体験してみたかったんだけど、この獣人君はちょっとね、、、。
「は、はぁ、、。それで、先ほど眠らせていたようですが、反抗でもしてきたのですか?邪魔なようなら殺しますか?」
いや殺伐としすぎだろ。
僕はモフるした準備をしていただけなのだ。
「いや、結構衰弱してたからね。回復を待つことにするよ。」
「そうですか、、、。ラント様に近づく輩は殺したかったが、さてどうするか、、」
一応は納得したようだ。後半はよく聞こえないが、どうしたのだろうか?主人に隠し事とは、なんてことでしょう?
気になるね。まあ、今の僕の一番の興味はこの獣人をモフることだから。
「えっ、、、。そ、それは、すまない。私では判断ができない。」
「失礼しました。私たち、各地を旅しているもので。ですが、長旅で路銀が尽きてしまい、まいっていたのです。無礼な態度、お詫び申し上げます。」
感謝するよ、ジークハルトよ。僕ってば、欲望が全面に出過ぎてしまっていたようだ。失敬。
まあ、ジークハルトが上手い具合に誤魔化してくれそうだ。
「あ、ああ、驚いたが、まあ、そういうこともあるだろう。して、すまないが、君たち傭兵組合からのいらいできたのではないのか?」
ジークハルトに、会話をするように目線を向ける。
「ええ。旅の途中でたまたまこの砦を見つけまして、襲われたところを応戦しまして。このような結果となりました。」
多分僕は人との会話に向いていない。そもそも、日本にいた時から人との会話をしてこなかったし、今もジークハルト以外と喋らないから。
他人との会話は、ジークハルトに任せた方が穏便に済む気がするね。
「先程、この城が壊れたのも、君たちの仕業ということか?」
「ええ、こちらのラント様の魔術をによるものです。」
おっ!僕のお話になったね。これは、僕の自慢話をした方がいいのかな?
いや、それよりも、僕はもっと高威力の魔術を使えますよとアピールした方がいいかな?ちゃんと君たちを助けるために、手加減したんだよ?的な感じに。恩売れるかもしれない。
「ぼーー」
「大きな魔術の使用は控えようと思っていたのですが、地下にいらっしゃる方の救出を急ぎまして。驚かすような真似をして、申し訳ない限りです。ですが、あの魔術は一度使ったら数日間は使えませんし、魔力も底をつきますので。」
「え、そーー」
さっきから、ジークハルトが僕が話そうとするのを妨害してくる。失礼な!!
僕が最高のプレゼンを披露して、恩をうろうとかしているのに。
「そうか。いや、驚きはしたが結果として私は助かったのだ。」
「ええ、そう言っていただけると、こちらも安心します。そして、一つお伝えしなければならないことがあります。他の隊員の方なのですが、、、」
「ああ、いや、分かっている。あいつらは、私の目の前で仲間を殺していったからな。その点は、了承している。」
色々と僕のアピールをしたいが、さっきからのジークハルトの対応を見るに、僕は喋らない方がいいようだ。
仕方がない、もう一人の生き残りの面倒を見るとするか。
もう一人の生き残りは、副隊長がいた牢屋から少し離れたところにいた。
服は粗末な下着のようなものを一枚着ているだけであり、全身は傷だらけである。
これは拷問の後、というところかな?
今、その人物は寝ているようで、身動き一つしない。まるで、死んでいるようだ。
いや、てかこれ放っておいたら本当に死ぬんじゃない?
「おおーい、大丈夫ーーって、ケモ耳!!」
少し汚いため、声掛けで起こそうと思い、生き残りに近づくと、なんとその者にはケモ耳があるではないか!!
「っ!だ、れだ、、、。」
「君は犬系の獣人?」
この時の僕は、生き残りの怪我とか、身体が汚いとか、そんなことどうでもよかった。
そう、ただケモ耳のみを求める者へと変貌した。
「ケ、ケモ、ケモ耳が、生ケモ耳が見れるとは、、」
「お、、い、、、おれ、、を、た、、、す、けろ、、」
なんか細切れに喋っている。が、僕には関係ない。
ファンタジー小説を見ていた頃から、ケモ耳への憧れがあった。最初は、ペットに部類される動物の方がいいじゃんと思っていたが、小説の主人公たちがこぞってケモ耳を追い求めている描写を読んでいるうちに、僕もケモ耳への憧れが募るようになった。
本当は、小動物みたいなケモ耳が良かった。この生き残り君(一人称が俺だったから)は、随分とでかい。ジークハルトと良い勝負である。
さてさて、では魅惑のモフモフを触るとしますか。
「いや、汚いわ、、。うん、汚い。」
触ろうとして、僕の思考は現実に戻された。汚い。それは、多分この人自身の汚さとかじゃなくて、監禁されていた、または拷問されていたからこその汚さだろう。
ただ、僕にはそんなこと関係ない。事実として、この者は汚れている。
「汚れを払う風」
思考することもなく、僕は生活魔法とも言われる簡単な魔術の一つ『汚れを払う風』を使う。
この際の汚れは、汚れであり、魔力の澱みである瘴気は払えない。
「お、まえ、、、な、に、、を、」
さっきから、細切れにうるさい。喋るならいっぺんに喋ってほしい。聞き取りにくいったらありゃしない。いや、まあ、それだけこの者が弱っている証拠なんだろうけど、、、。
「眠りの波動」
うるさいから、眠らせることにした。
まあ、意外なのが、こんなにも衰弱しているのに、僕の『眠りの波動』に争おうとしたことだよね。
「ラント様、終わりましたか?」
「うん、そっちは?」
報奨金の足掛かりになりそうな人との会話は、ジークハルトに全投げしたけど、大丈夫かね?
まあ、僕が相手するより絶対に良い結果になるだろうから、文句は言わない。
「情報のすり合わせは終わりました。流石に、精霊だと言っても信じないでしょうし、混乱を招きます。私たちはディーセント教国の悪政から逃れてきた旅の者としました。」
「うん、まあ、僕にそこら辺はよく分からないから。ジークの判断に任せるよ。」
この世界との関わりがない僕には、何が良くて何が悪いのかって言う、この世界の一般常識すらない。
知識の宮殿からある程度の知識は学んだけど、それが普段の生活の常識にも適用できるとは限らない。
「ラント様の方はどうですか?」
「ああ、なんか獣人がいたから、モフろうかと、、」
「モフる?とは?」
「わしゃわしゃすることだね。」
毛量の多い動物をわしゃわしゃするのは、リラックス効果がある、、って小説に書いてあった。僕はしたことがない。だから、体験してみたかったんだけど、この獣人君はちょっとね、、、。
「は、はぁ、、。それで、先ほど眠らせていたようですが、反抗でもしてきたのですか?邪魔なようなら殺しますか?」
いや殺伐としすぎだろ。
僕はモフるした準備をしていただけなのだ。
「いや、結構衰弱してたからね。回復を待つことにするよ。」
「そうですか、、、。ラント様に近づく輩は殺したかったが、さてどうするか、、」
一応は納得したようだ。後半はよく聞こえないが、どうしたのだろうか?主人に隠し事とは、なんてことでしょう?
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