神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー

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三章・金の亡者

盗賊

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「正直、成功するとは思ってなかったんですよね。」

「え?成功するとは思っていなかった?」

「ええ、やはり非現実的な方法でしたからね。」

 やっぱり、山脈の登山が危険だからって、地中を進むのは普通じゃないんだね。


 そんな会話があり、僕らの坑道生活は幕を閉じた。
 時間感覚なんてないし、そもそも時間を気にした生活なんて送っていない。眠くなったら起きて活動して、ご飯を食べたくなったら食事をして、疲れたら休憩する。
 自堕落であると思われるかもしれないが、その通りだ。
 いや、僕だってこんな自堕落な生活良いの?とは思った。だが、たまには自堕落でも良いだろう。だって、ジークハルトが何も注意してこないのだから。

「そうだ。人類圏に行くに当たって、約束事を決めないとね。」

「約束事ですか?、、、金は奪うのではなく稼ぐとかですか?」

「ちっがう!!そんな意地汚くないわ!!あれだよあれ。魔法って、人類には使えないんでしょ?だから、種族バレを防ぐために魔法ではなく、魔術のみの使用にするとか。そんなやつだよ。」

 ジークハルトの話や、知識の宮殿で閲覧した歴史書から、魔法はかなり神聖視されていると思われる。
 歴史書では、何かと信仰の対象になるのは魔法(本当に魔法かは分からないが)を使用した人物であるし、神罰のような想像もつかないような出来事があると、それも魔法とされる。
 まあ、小規模な魔法ならば、ちょっと魔術の扱いが上手い人である誤魔化せるかもしれないが、魔法であると誰かに気が付かれた場合、絶対に面倒臭くなる。

 信仰の対象になったりしたら、押し掛ける奴ができそうだし、権力者は自分手中に収めようと躍起になる。つまり、魔法がバレるとバチクソ面倒臭い。

「確かに、人類の魔法への憧れは凄まじいです。魔術では決して再現できないようなことが魔法ではできてしまうため、人類は魔法へと躍起になっています。それを考えれば、魔法を禁止するのは必須ですね。」

「でしょでしょ。後は、服だね。僕の服は野生感あるけど、まあ良いとして。ジークは変えないとね。」

「ああ、そうですね。これ、ディーセント教国の騎士団服ですもんね。」

 ディーセント教国は、嫌われている。いや、ハッキリとそういう話を聞いたわけじゃないけど、国という国に侵略を仕掛けている国だよ。もちろん、その国の騎士団の軍服も嫌悪される。
 別に、他人に媚を売る気はないけど、嫌われたいわけではないからね。

 ってことで、世界樹にくっついてた馬鹿でかい蚕から取れた糸で村人風の服を作った。それを、ジークハルトに着てもらう。
 ついでに僕もお揃いで着ることにする。

「後は、何か気をつけることある?」

「そうですね。後は、ラント様の思いつきでの行動を控えてもらうことぐらいですかね。」

「そんなに、思いつきで行動してる?」

 僕はいつも思慮深いよ?

「、、、はぁ。何でもないです。ただ、報連相は忘れないで下さい。」

「ため息とは、生意気だな。まあ、分かったよ。ジークに心配をかけるのは本望じゃないしね。しっかりと相談はするよ。」

「ええ、忘れないで下さい。」

 
***


「おっ!!集団発見!!街、いや、この規模だと村かね?」

 僕は行動を出た時から、常に探索の魔術を展開して、周辺の状況を確認していた。
 しばらくは音沙汰がなかったが、坑道から出て、目の前にあった森を歩いて二、三日経って、初めて人類も思われる反応を発見した。

「こんなとこに、村なんてありましたかね?」

「でも、ジークの知識って少し前でしょ?新たな村ができてたとしても、普通じゃない?」

「そうですね。でも、この辺りって、、、」

 ジークハルトが悩んでいる。人類の集団が見つかったんだ、喜べば良いのに。
 まあ、ジークハルトも人間に随分な扱いをされてたみたいだし、警戒してるのかな?

「ラント様、その集団って、砦みたいな場所にいますか?」

「うん?ちょっと待ってね。」

 探索魔法なら人だろうが魔物だろうが物であろうが、何でも探知できるのだが、探索の魔術では、基本的に生き物しか認識できない。集中してやっと、物が認識できるようになる。

「う~~ん、、、。ああ、見えた。うん、そうだね。この堅牢な感じは砦だね。ただ、放棄されていたのかってぐらいオンボロだよ。」

「やはり、そうでしたか。ならば、、、」

「ならば?」

 すごく気になるところで話をやめないで欲しい。

「あれ?お出迎えかな?」

 ジークハルトと話している、さっき見つけた村の人々が僕たちがいる方面へ移動しているのが見えた。
 これはあれかな?あの村にも魔術で辺りを探索している人がいたのかな?
 もしや、熱烈な歓迎を受けるのかも。

「ラント様、もしかして、その村の集団は私たちの存在に気がついて集まってきたのですが?」

「そうだよ。嬉しいね、歓迎してくれるみたい。」

 僕は嬉しいが、ジークハルトの顔は思考顔だ。そんなに心配なのかな?

「その、ラント様。予想ではありますが、その人類の集団は盗賊の可能性が高いです。」

 盗賊ですと?随分と唐突な宣告だ。

「え?盗賊?」

「ええ。私の記憶が正しければ、咆哮の山脈から二、三日の距離に、昔建てられた砦があります。その砦は危険なため一般人は寄り付かないのですが、それに伴い人々の目が届かないため盗賊などが住み着いていると聞いたことがあります。」

 その話を聞き、魔術へと全力で集中する。
 そうすると、人々の姿形の詳細まで見える。結果、集まってきているものは、確かに剣や斧など、武器となるものを携えている。

「マジか。じゃあ、もしかして砦の人たちが僕たちがいる方向に集まってきてるのは、歓迎は歓迎でも物騒な方の歓迎ってこと?」

「ええ、恐らく。普通の村で、こんなに早く人の接近に気がつける者がいるのは、不自然です。自然に考えるのなら、周りを常に警戒しなければならないような者たちが集まっていると考えるでしょう。」

 最悪だ。久しぶりの人類との邂逅なのに、それが一般市民ではなく盗賊になるとは。
 とことん僕に運がないみたいだ。
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