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第一章
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「トレミエ?」
トレミエは袖をぎゅっと掴んで上目遣いでこっちを見ている。
「わー!そんな可愛い顔で見ないでー!」
子犬のような顔で見つめられたら何でも言うことを聞いてしまうじゃないか。
グイグイ
トレミエはさらに強く引っ張る。
「あら、その子どうしたの?」
ミヤは今気づいた、と言うふうに尋ねた。
「トレミエだよ。さっきのモンスターに襲われそうになってたの。間に合ってよかったよ。」
「そう、随分なついてるみたいね。トレミエちゃん、こんにちは。」
トレミエはミヤを見つめ、ペコッと頭を下げた。
「大人しい子なのね。」
「ううん、トレミエは話せないの。」
「えっ。」
ミヤの表情が固まる。
「ああ、そう…。」
気まずい空気が流れる。何かマズいことを言ってしまったのだろうか。
隣を見るとトレミエも心なしか暗い顔をして俯いている。
「ト、トレミエってとってもかわいい顔してるわ!」
空気を悪くしてしまったことに気づいたミヤが慌てて明るい声を出した。
トレミエもミヤを見てにこっと笑顔を見せる。
二人とも優しい人だ。
「ほんとにかわいい。もうずーっと見てたいくらい…」
思わず本音をこぼすと、トレミエの顔にわかりやすく花が咲いた。
⸺あ、まずい。
「で、でももうそろそろ行かなくちゃかもーなんて」
ガーンという効果音が聞こえてきそうな表情をしないでほしい。すごく行きづらい。
「…いいんじゃない?一緒にいてあげなよ。」
「で、でも」
「もー、この世に子供の望み以上に大事なことなんてあるの?」
ミヤの言葉が心に響く。
「…わかった。家まで一緒に行こう。」
トレミエを無事に送り届けたら、そこで別れよう。ここでうだうだしていてもしょうがないし。
トレミエは嬉しそうに頷いた。
「それじゃあミヤ、そういうことだから。」
「うん、またね。定期的に顔見せてよ!」
「はーい。」
ミヤと別れ、私とトレミエは歩き出した。
トレミエは袖をぎゅっと掴んで上目遣いでこっちを見ている。
「わー!そんな可愛い顔で見ないでー!」
子犬のような顔で見つめられたら何でも言うことを聞いてしまうじゃないか。
グイグイ
トレミエはさらに強く引っ張る。
「あら、その子どうしたの?」
ミヤは今気づいた、と言うふうに尋ねた。
「トレミエだよ。さっきのモンスターに襲われそうになってたの。間に合ってよかったよ。」
「そう、随分なついてるみたいね。トレミエちゃん、こんにちは。」
トレミエはミヤを見つめ、ペコッと頭を下げた。
「大人しい子なのね。」
「ううん、トレミエは話せないの。」
「えっ。」
ミヤの表情が固まる。
「ああ、そう…。」
気まずい空気が流れる。何かマズいことを言ってしまったのだろうか。
隣を見るとトレミエも心なしか暗い顔をして俯いている。
「ト、トレミエってとってもかわいい顔してるわ!」
空気を悪くしてしまったことに気づいたミヤが慌てて明るい声を出した。
トレミエもミヤを見てにこっと笑顔を見せる。
二人とも優しい人だ。
「ほんとにかわいい。もうずーっと見てたいくらい…」
思わず本音をこぼすと、トレミエの顔にわかりやすく花が咲いた。
⸺あ、まずい。
「で、でももうそろそろ行かなくちゃかもーなんて」
ガーンという効果音が聞こえてきそうな表情をしないでほしい。すごく行きづらい。
「…いいんじゃない?一緒にいてあげなよ。」
「で、でも」
「もー、この世に子供の望み以上に大事なことなんてあるの?」
ミヤの言葉が心に響く。
「…わかった。家まで一緒に行こう。」
トレミエを無事に送り届けたら、そこで別れよう。ここでうだうだしていてもしょうがないし。
トレミエは嬉しそうに頷いた。
「それじゃあミヤ、そういうことだから。」
「うん、またね。定期的に顔見せてよ!」
「はーい。」
ミヤと別れ、私とトレミエは歩き出した。
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