上 下
22 / 23

どうでもいいけどレベルアップ

しおりを挟む

「やれるものなら、やってみろよ……」
 
 ハヤテがアシダダムに詰め寄ったよ。

 ハヤテが生身の人間に攻撃するとは思わないけど、アシダダムを挑発して、殴りかかってきたところへ、カウンターで拳をぶつけるなんて事を狙っているかもしれない。

「なんだぁ? ガキが首出すんじゃねーよ」

「お前みたいな人間は逆立ちしても、父さんに触ることすら出来ない」

「バカじゃねえのかぁ!? 
 後ろでぶっコケてんのが、お前の親父だろーが。
 ぶざまだなあ~、へへへ」

 やれやれ、せっかく畳んだ白衣が崩れちゃったよ。
 起き上がって、直して、着替えを再開。

「みろよ、文句ひとつ言えねえ腰抜けだぜお前の親父は」

「……知らないってのは、幸せなもんだ」

「小生意気なガキがっ! いいだろう、二人まとめてやってやるぜ!」

 アシダダムがハヤテに殴りかかったよ。
 
 良い忘れたけど、ハヤテら3匹のSSたちは毎日洞窟で高レベルのキラーウルフを倒していたんだよね。
 それは今でも続いていて、だからハヤテはレベル10。
 
 なんだ、たったレベル10か。
 と思うかもしれないけれど、SSレアスライムのレベルの中身は、人間のステータス値の30倍。
 人間のレベルで換算すると300レベくらいかな?
 
 この世界の人間が一生を戦いに捧げ、ようやく到達するレベルが70とか71とか言われているから、ハヤテの強さは尋常ではないよ。
 殴りかかるアシダダムの拳にカウンターを合わせるなんて、キキンの街を一周してからでもじゅうぶん間に合うだろうね。

 説明のついでに、SSたちがモンスターを倒して得た経験値と同じだけが俺にも注がれていたよ。
 
 よく分かんないって?
 つまり、全SSスライムの獲得経験値が俺の経験値にプラスされちゃっていたわけ。
 俺が寝てても、洞窟で夜勤しているSSがキラーウルフを倒せば、経験値がプラス。
 俺が魚をおろしていても、SSがウルフを討伐、経験値プラス、レベルアップ。
 
 だからどんどん俺のレベルが上がっちゃって、まあ、流石に12レベを超えたあたりから、緩やかな上昇になったけど。
 それでも、レベルが1つあがるだけで、各ステータス値が倍々で増えるSSSレアスライム特有の上がり方だから、たぶん俺のステータス値は、凄いことになっていると思うよ。

 たぶん。
 思う。

 そうなんだよね。  
 最近と言うか、ここ3週間くらい、自分のステータスを確認してないよ。
 レベル14くらいまでは、その異常過ぎるステータス値に、へ~っと感心してたけど。
 
 今はもう、レベルアップしても、嬉しいどころか、はっきり言って憂鬱。
 あのレベルアップ時にアナウンスされる甲高い音声と、テロップにバカにされているみたいに感じるんだよね。
 
『レベルアップ!!』

 あ……。
 また上がっちゃった。

 テロップが流れるよ。


 『錬金合成レベル10』


 スライムの体内で異なる物質同士を混ぜあわせ、剣とか杖とか作れちゃうみたい。
 戦わない魚屋さんには、どうでもいいね。

 魚が美味しくなる包丁とか作れたら嬉しいけどね。

 久々に『ステータス確認』で見てみるかな。 
 こっそり、下半身をスライム化してと……。


 ――――――――――――――――――――

 SSSレア・スライム LV 23  

 生命力 41,943,040/41,943,040   

 ステータス

 攻撃力  12,582,912
 素早さ  373,293,056 
 知能     12,582,912
 運       12,582,912

『変形』
『ステータス確認』
『アイテム収納庫』
『分裂』
 その他多数(詳細)

――――――――――――――――――――

 
 ほら、分かるでしょ。
 素早さなんか3億いってるし。
 だから、嫌なんだよね。

 次レベルが上がったら、この値の倍だよ。
 もう、どうでもいいって感じ。

 よく見たら運も凄い値だね。

 魚店主の売上が、去年の20倍になったり、
 俺の思惑通りに刺し身がキキン国で大ヒットしたり、
 グルメ大会でいきなり優勝したり(これは違うかな)、
 キキンの街を女の子SSを引き連れて走っても誰にも見られなかったり。
 
 これって、運の値が高いからかな?

 キキン国王が俺に好意的なのも、いま思えばラッキー過ぎるね。
 ただの魚屋さんに、店舗を工面してくれるって言うんだもん。
 それにランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんが平気で街をちょろちょろしているけど、片足がよくスライムになってたりするけど、誰にも見られていない。
 ここらへんも、運が高数値だからだろうかね。
 
 あ、ちなみに、今いろいろ話している間にも、アシダダムのパンチがハヤトの顔面に迫っているよ。
 迫るって言っても、素早さが3億超えだから、俺には止まって見えるけど。
 
 ハヤテの素早さも4桁超えだから、アシダダムのパンチはほぼ止まって見えているはず。

 さーて。どうするんだろ、ハヤテは。

「くっ、くそっ! 何をしやがった?!」

 一瞬でアシダダムは分からなかっただろうな。
 ハヤテがアシダダムの横に回りこみ、脚を引っ掛けて転ばせたよ。

 顔を真っ赤にしたアシダダムが、起き上がったと同時にタックルをしてきたぞ。
 ハヤテは一瞬でサイドステップし、またもや脚を引っ掛けてヤンキー料理人を転ばす。

 つんのめったアシダダムの顔面が、壊れた椅子にぶつかりそうだったので、俺が受け止めてやったよ。

「は……っ!」

 信じられないって顔だ。
 
「お、おまえら……いったい……」

 ちょっとまずかったかな。
 俺とアシダダムの距離が10メーターほどだったとはいえ、俺が瞬間移動したわけだから。

「おもしろい」

 ビビるかと思ったら、睨みつけるように笑ったぞ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

便利すぎるスキルを手に入れた少年

TRIBE
ファンタジー
 日本の雪の降る地域に住む主人公爽美 健涼(そうび けんり)がとある事故をきっかけにそれを見ていた神様に転生してないかと誘われ半強制的に決められ、前世から望んでいたスキルをゲットし異世界に転生して、色々なものに挑戦して、色々な事を起こしていくような話。 【初作品ですが、自分なりにやれることはしていきたいと思っていますので、どうかこれからもよろしくお願いします。  基本文章は短くなってしまいます。  二、三日の一回のペースにて更新予定です。ぜひ読んでください。 感想是非ください。】 ※諸事情が重なり、4月頃に次回の話を乗せます。こちらの勝手になりますがよろしくお願いします。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎
ファンタジー
 前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。  これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。 ※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します ※本作品は他サイト様でも同時掲載しております ※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ) ※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました

僕がこの世界で生きるワケ

京衛武百十
ファンタジー
こんにちは。私の名前は、<クォ=ヨ=ムイ>。人間が言うところの<神様>かな。 あ、もしかしたら私のことを知ってる人もいるかもだけど、随分と印象が違う気がするかもね。でも、神様ってのはいろんな面があるからね。気にしちゃダメダメ。 ところで今回、私は、人間が何かと話題にしてる<転生勇者>と<俺TUEEE>とやらにちょっと興味があって、おあつらえ向きにトラックの事故に巻き込まれて死んだ陰キャ少年(名前なんだっけ? あ~、まあいいや)を、転生特典のチート能力を授けて異世界に送り出してあげたのよ。 で、彼がどこまでやれるのかを観察しようっていうね。 『酷い』? 『鬼畜』? ノンノン、神様相手にいまさらいまさら。 とにかく彼の<俺TUEEE>ぶりを見てあげてちょうだいな。

処理中です...