SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

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「……あ、……有りえん……有り得るわけがない……」

 オボスがよろめき、2歩後ずさりした。
 それもそのはず、俺のステータス数値はオボスを軽く上回り、
 天文学的数値になっていたから。
 
 5匹のエインシェントが俺の後から近寄ってきたよ。
 俺が触手を一振りしたら、部屋中のエインシェントが当たってもいないのに舞い上がり、吹き飛ばされ、お互いがぶつかりあって床に打ち付けられたよ。
 ぐったりとして動けない。部屋の炎も消えた。

 凄すぎだよ。
 もちろん、俺のSSたちも吹き飛んだけど、触手で全員キャッチして手繰り寄せたね。
 因みにSSたちは現在、俺の横でトゲトゲになってトーテムポールを作ってるよ。
 俺のステータスを見てビックリしちゃったみたい。
 
 3匹のエインシェントの生命力値が『0』になり、俺に経験値が流れ込む。

 
 レベル 12  →  16

 
「ま……、また上がりやがった……」

「……みたいだね」

「お父さま、凄い」
「どうなってんの、ヒジカタ」
「おなか空いたよー」

 俺は仲間を連れ、ゆっくりと進む。
 立ち尽くしたままのオボスの横を通って、螺旋廊下を上って行ったね。
  
 もう、誰も襲っては来ないと思う。
 終わった。

 遺跡を出たと同時に、俺のステータスに消えていたスキルと、新しく獲得したスキル『眷属化』が表示されたよ。


 眷属化 
 倒した(殺した)相手を、自身の眷属(下僕)として復活

 条件 
 倒し(殺し)て1時間以内
 生前の知能『10』以上
 眷属(下僕)の最大数は100匹(人)


「おおお!」
 
 そうか!
 生き返らせるのか!

 実のところ、襲って来た敵とは言え、エインシェントをたくさん殺しちゃったし、俺のSSたちがモリモリ食べたし、非道な行為だったと思っていたんだよね。
 そう言った意味で、一度死んだ者を生き返らせるなんて、願ってもないスキルだよ、これは。
 よし! 彼らを復活させよう。

 リトルデーモンが泣きながら俺に飛びついてきて、キスの雨を降らしたよ。
 ビトくんが嬉しそうに俺の周りを旋回している。
 2期生SSたちはちょろちょろ動き回り、ポラリスくんと1期生は辺りを散策し始めたね。
 
 さっそくスキル『眷属化』を使ってみる。
 ざっと、1時間以内に俺が倒したエインシェントの明細が、空中に文字で表示された。
 
 触手の先で触れると、名前の横に赤字でチェックが入る。
 全てにチェックをして『OK』をプッシュしたよ。

 たちまち、俺の前の地面から、エインシェント20数匹の白い影が浮き上がって来て、色がつき始める。
 実体化しているんだ。

 10秒かけて、襲ってきた鋭い眼つきの人間タイプ・エインシェントが復活した。
鎖帷子くさりかたびらを着てロングソードを背負っている。

 SS1期生たちが急ぎ戻って来た。触手を刀にしてエインシェントを取り囲む。
 SS2期生たちは硬直してトゲトゲだ。
 俺も、ちょっとビビったね。

 戦士たちは剣を抜きもせず、無表情で俺の直ぐ前まで来て、ゆっくりとひざまずいたよ。

「お、お父さま!」

 エースたちが触手刀をエインシェントの首筋に近づけたが、戦士は動かない。

「大丈夫だと思うよ、みんな」

「……はあ」

 エースたちが触手を収めると、やっと先頭の戦士が口を開いた。

「話してよろしいでしょうか、あるじさま」

「……あ、主さま?」
 
 触手先を自分に向けてみる。

「はい。さようでございます、主さま」

 なんだか芝居がかった感じ。
 でもまあ、下僕だったら、言いそうだよね。
 
「あ、うん。良いけど、何を話すの」

「はい、主さま、我らに何かご命令を」
 
「……はあ……命令ねえ……」

「はい。何なりと」

 困ったぞ、なんと言えばいいんだ? 何も命令する事なんかないんだけど。

「いや、あの、俺はただ、キミたちを生きかえらせたいだけで」

「……さようで」

「そうなんだよ。だから、あんまり気にせず、普通にしてくれれば良いよ、普通にね。
 あっ、平和的にだよ」

「御意」

御意ぎょいって、ああ、了解ってことね」

 眷属化って、強い従属関係だったんだね。
 彼らに向かって、仮に俺が『殺し合え』と言えば、本気で仲間を討ちそうだし、『黙れ』と言えば何日でも無言を貫きそうだよ。
 以前の彼らは、こんなじゃなかった。
 もっと生き生きして、俺をどう倒そうか、と自発的に行動していたよ。
 今の彼らは操り人形を作ったみたいで、ヤだなあ。
 彼らに心はあるのか、ちょっと覗いてみるかな。

 触手を紐状にして眷属たちの足首に巻きつけてみた。

 主さまのご命令……。
 主さまが触手を伸ばされた……。
 主さまが我の心を覗かれておられる……。
 主さまが我を心配されておる……
 主さまが――。

 あ~、俺のことしか考えてないじゃん。
 核が痛くなってきたよ。

「あのね、キミたち」

「「「「はっ!」」」」

「もっと、こう、自由にならないかなあ。分かるよね自由だよ自由」

「御意」

 ほんと、分かってんのかなあ~。
 
 立ち上がったエインシェントたちの顔が急に険しくなった。
 俺の後を見ている。
 鋭い視線の先には、遺跡から出てきたSSSレアエインシェント・オボスが、俺に只ならない殺気を向けていたよ。

「……主さま。我らの後ろにお下がりください」

 別にいいけど、
 言われるまま、後退したね。
 
「……ヒジカタさん……あなたは……」

 オボスがゆっくりと近寄ってくる。
 3メートルまで来たとき、眷属たちが抜刀し、刃先をオボスに向けた。

「そこまでだ。止まれ」

「……ほう。眷属化も可能なのか、SSSSレアになると」

「みたいです」

「私はヒジカタさんを祝福しに来ただけだ。この下僕らに命令して欲しい。剣を収めろと」

「わかったよ」

 下僕が剣を鞘に戻し道をつくると、オボスが微笑んで進んだよ。
 右手を差し出してきたので、仕方なく触手で手を作って握手。
 がっちり握手。

「……いい人だ。ヒジカタさんは……、……最後に付くがな、馬鹿が」

 口先を釣り上げたオボスが最速で向けて来た。
 以前の俺だったら絶対に見えない速さだが、今は余裕で躱せるね。
 しかも、逆に展開した同じスキルでオボスに接触。
 
 ヤツは叫ぶ間もなく、暗黒色の投入口に吸い込まれていったよ。
 
「……お、お父さん。オボスは?」

「ああ、ヤツなら、俺のアイテム収納庫に入っちゃったよ」

「見えなかった」

「うん。ヤツが収納庫を使わなければ、俺も使わなかったんだけどね」

「そんな動きがあったなんて」

「ヤツはSSSレアなんだもん。収納庫を持っていて当然。だから警戒して当たり前だろ?」
 
 
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