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3章
匂いを売る 2
しおりを挟む「す、素晴らしい……。ヒジカタさま。
あのヘビみたいな生臭いうなぎを、絶品料理に変えてしまわれた……。
奇跡としか、言いようがない」
ドルンくんが、わなわな震えている。
「感動しているところ、悪いけど、製氷猫を1匹連れてきれくれない?」
「製氷猫ですか」
「そうそう。
今日の好天、気温高め。
行列に並んでいるお客さんに、冷えたシロップ水のサービスをするから」
ドルンくんのつるつるの頭が日光を反射させほど、今日の日差しは強いんだよね。
「はいっ!!」
◆
うなぎの行列は閉店を過ぎても続き、最後のお客さんのお勘定を両手で有りがたく受け取ったのは、夜20:00をまわっていたよ。
「やりましたね、お父さん!」
ジンがガッツポーズ。
「……」
くたびれ果てたドルンくんが、腰から砕けて地面にへたり込んだよ。
やつれた顔だけど、ちょっと嬉しそう。
俺はなんともない。
体力値がとんでもないから、疲労することはまずないね。
「うなぎの蒲焼きは、どれほど売れたんですか、お父さん?」
「……信じられないけど、1500尾以上。
うなぎの蒲焼きだけで100万ギル売れてしまった……」
「すごい……。1階魚屋オープン初日の売上の2倍」
「いや、ここまでヒットするとは思わなかったよ」
「新しいキキン名物の誕生ですね」
◆
深夜。
人間のスタッフたちが寝静まったころ、
SSたちを1階の調理場に集めたよ。
「うなぎの割き(開き)、串打ち、焼き、を学んで欲しい」
アイテム収納庫のうなぎ2万9千尾は、そのままだよ。
加工してないので、下準備をしておく。
俺ひとりでやってもいいんだけど、せっかくだからSSたちの技術修得を兼ね、実地してもらう。
「焼いてしまうんですか?」
「蒲焼きまで加工しておくよ」
アイテム収納庫に入れれば、出来立てのうなぎ蒲焼きがそのまま保管される。
なにせ、お客さんを待たせて、それでも1500尾売れたんだ。
もし、お客さんが待たないで買えたら――、
出来立てアツアツのうなぎ蒲焼きがたくさん並んでいたら、もっと売れてたかもしれないよ。
もちろん、焼きながらも販売するけどね。
同時に、炊きたてのご飯も売っちゃう。
うなぎのタレも小瓶に入れ、これも売っちゃう。
ついでだから、べーゼ・ラミアフィッシュの下半身も蒲焼きにしてみよう。
うなぎより味が濃厚だから、これも美味いよ。
問題はネーミング。
知らない魚の名前は敬遠されるし、かと言って『特上うなぎの蒲焼き』などと、ウソはいけないね。
まあ、正直に『ベーセの蒲焼き』とでもしとくかな。
さあ、明日が楽しみだなあ。
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