17 / 182
1章
闇の世界のはずなのに?
しおりを挟む光が差し込まない洞窟の奥。
ずいぶん進んだけど、何故か薄暗いままだったよ。
そう言えば生まれ育った洞窟の中も闇なのに、ちゃんと見えていたっけ。
スライムって、そういう生物なんだろうね。
試しに人間の姿に戻ったら視界ゼロ。何にも見えないや。
じゃあ、下半身だけスライムに戻すと……?
へ~、人間の目では闇だけど、下半身に作った眼から見ることはできるんだ。
まてよ、それなら、人間の姿のままで、右手だけスライム化してみたらどうだろう。
右手に作った眼から20メートルぐらい先まで……見ることができるね。
ちなみにスライムの眼は体表を自由に移動、作成できるんだよ。
ふと後ろを見ると、SSたちが俺のマネして上半身だけ人間に姿を変えていた。
「キモいから、それ止めようね」
「「「はーい」」」
◆
100メートル進むと、洞窟が二手に分かれていたよ。
2匹づつに分かれて進むのは心細いな。
SSたちも『うんうん』言っているから揃って右の穴へ進んだね。
人がひとり通れるくらいの狭く歪な穴を50メートルほど行くと、野球場3つ分くらいの広い池の辺りに出たよ。
洞窟の天井からは岩柱が伸びていてる。
水面からピチャピチャと音がするから、魚でもいるのかな。
池に入ってみると深さ1メートルくらい。
「塩っぱい」
海水が染みこんでできた塩だまりなんだな。
中央の岩場には、いかにも宝箱って感じの箱が見える。
罠かな?
「だとおもう」
「やめようよ」
「あぶないよ」
SSたちは触手を伸ばし、俺の身体を摘んでクイクイ引っ張る。
俺と同じで臆病者なんだな。
「でも無視するのは、ちょっと勿体ないな。俺が確認してくるから、お前たちはここで待ってなさい」
「「「ええ~っ」」」
触手を払って岩場に向かったら、SSたちがピッタリついてきていたよ。
玉ねぎがプカプカ浮いているみたいなんだけど。
ゴツゴツした岩の隙間のあちこちから、シュシュシュと擦るような音が聞こえてきたよ。
なんだろう……尾びれの音じゃない。
黒い影が水中をうねりながら、向かってくる。
「……蛇か?」
いや……、全長50センチほどの上半身が魚で下半身が……蛇。
べーゼ・ラミアフィッシュ Lv 4
生命力 45/45
ステータス
攻撃力 32
素早さ 15
知能 3
運 14
1,強靭なアゴは鋼鉄の剣でも砕く。
2,尻尾に巻き付かれると圧迫死、あるいは骨が砕ける。
「モンスターなんだ! 蛇と魚が混じったモンスターか。ちょっと数が多いな」
背後から「はやく、戻ろうよ」とSSたちが言ってる。
俺だけなら、ラミアフィッシュの攻撃を躱して、なんとか宝箱まで行けると思う。
SSでも可能かもしれないが、ここは初めての水の中だし、戦闘未経験のレベル1。
それに、こんなに怖がってちゃあねえ。
「陸に上がってなさい、お前たち」
そう言って、ダッシュした途端、SSたちに引っ張られ――。
コケた。
「「「いっしょがいい」」」
「ええーい、うっとおしいッ!」
「「「でも」」」
言ってるうちに、ラミアフィッシュに囲まれてしまう。
ほらガンガン襲ってきたよ。
咄嗟に俺は身体中に眼を増やし、360度全部の視界を把握。同時に無数に出した触手で応戦したよ。
倒しても倒しても襲ってくる。
ピラニアみたいに獰猛だ。
SSたちはビビッて俺の頭の上に避難しており、なんだかトーテムポールみたい。
「グラグラ揺れるんだけど」
「お魚さんが、どんどん刺されていくねー」
「ほんとだー」
「あっ、半分になったよ」
「触手が剣みたいになってるー」
聞いちゃいないなあ。
「「「すごーい」」」
一匹が俺のマネをして触手を作り、海面から飛び上がって来たラミアフィッシュを一発で串刺し。
「ボクにもできた!」
へ~っ、これが、生まれて初めて触手を作ったスライム?
才能あり過ぎだよ。
俺が初めて触手を出した時なんか、酷いもんだったね。
「上手い上手い!」
「ほめられた。うれしい」
「揺れるから、ぴょんぴょんしない」
「ボクもやってみる……あ、できた」
「じゃボクも」
ザクザクザク。
SSたちは上手にラミアフィッシュを倒している。むしろ競い合っているんだけど。
「もう怖くないだろ?」
「「「うん。たのしい」」」
「そろそろ、降りてやってくれない?」
「「「はーい」」」
10分後。
まだ刺しているよ。
何匹倒したかもう分からないね。
なんだか、モグラたたきしているみたいだな。
やがて、ラミアフィッシュは襲ってこなくなった。
静かな海面には俺たちスライムと、腹を上にしてプカプカ浮いている無数のラミアフィッシュたち。
全滅かな?
レベルアップッ!!
『レベルアップ レベル4』
『レベルアップ レベル5』
『レベルアップ レベル6』
『レベルアップ レベル7』
『レベルアップ レベル8』
突然、長々とテロップが流れ出してびっくりしたよ!
俺が倒しただけじゃなく、SSたちが獲得した経験値と同じだけ俺にも注がれるから、レベル8になったんだね。
でもステータスを確認して、もっと驚いたよ。
――――――――――――――――――――
SSSレア・スライム LV 3 → 8
生命力 40/40 → 1280/1280
ステータス
攻撃力 12 → 384
素早さ 356 → 11392
知能 12 → 384
運 12 → 384
『変形』
『ステータス確認』
『アイテム収納庫』
『分裂』
その他多数(詳細)
――――――――――――――――――――
いや、もう、倍々で増えるからだろうけどステータス値凄い。
特に素早さは5桁。能力表記も多すぎるから、その他多数ですませちゃってる。
10
お気に入りに追加
786
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる