ＳＳＳレア・スライムに転生した魚屋さん ～戦うつもりはないけど、どんどん強くなる～

1章

剣つくり

　竜・エインシェント。
　
　古代の名がつけられた迷宮のボスを倒す剣が、必要だと若者は言った。
　
「そうなんですか～」

　俺、あんまり興味がないよ。
　そもそも倒すのは剣の良し悪しでなく、己自身の戦闘技術を磨いて、レベルアップしたからこそ倒せるものじゃないのかな。
　違うかな。　

　魚屋さんだって技術がない者ほど、良い包丁を何本も持っていたりするんだよね。
　良い包丁も腕の良い職人が使ってはじめてその能力を発揮する、そう思うよ。　

「ぜひ、作ってくれないでしょうか！」

　でも、ぶっきらぼうに断るのも、悪い気がするね。
　わざわざ俺の包丁作りの腕を見込んで訪ねてきたわけだし（包丁の作り方はナイショだけどね）。

「そうだなあ～。作ってあげたいけど、店が忙しいのよね。それに新人の教育もしないといけないし、新しく店も出したいしね」

　店主と奥さんがうんうん、頷く。　
　俺が剣作りに没頭すると、魚屋家業をやって行けるか心配なんだね。
　もちろん、元魚屋さんの俺としても、このキキン王国に日本の魚屋技術を広めたいんだよね。

「そこを、なんとか！」

「う～ん」

「なんとか、なんとか！」

　土下座までした若者を突っ返すのも可哀想だし、話しだけでも聞いてあげるかな。
　３階の俺の部屋に上がってもらうことにした。