SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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1章

体内でいろいろ

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 あっさり住まいを確保したよ。
 1階が魚屋店舗で、2階が店主夫婦が住み、3階の一室が俺の部屋。
 窓からキキンの城下町が見渡せるね。

 食事は人間と同じように食べても、なんの問題もないよ。
 結局は体内に取り込んで消化してしまうわけだし。

 ガリッ……。

「あ、石が混じっていたかしら?」

 2階の店主夫婦の部屋で夕食の鶏肉をごちそうになっていたら、口の中で違和感があったね。
 何か硬い物が混じっていたみたい。

 店主の奥さんが泣きそうな顔で心配していたから、「大丈夫ですよ~」と笑顔で言っておいたね。

 食後、トイレの個室に入り、ひっそりとスライムに戻ってから半透明な青い身体を確認すると、灰色の金属片が入っていたよ。 

 ナイフの先端かな?
 鳥をさばくときに、たまたま欠けたんだろうね。
 金属片は身肉に組み込まれ、鉄みたいだから溶けないし、動くとちょっと痛いな。

 上手く取り出せないかな。
 そうそう、俺には『変形能力』があったね。
 自身(じしん)をカスタマイズできるわけだから、異物もできないかな。
 
 金属片がまん丸いパチンコ玉みたいなら、抵抗なくするする出そうなんだけど――。
 そう思ったら、金属片の突起がなくなり、みるみる丸くなってゆく。
 イメージどおりのパチンコ玉になっちゃったよ。
 
 ゆっくりとゼリー状の身体の表面に移動してきて、ついに体表からころりと出て、ぽっとんトイレの底へ消えてしまった。

 へ~! 
 体内に入った異物さえも、『変形』能力で自由に形を変えて移動もできるんだ。



 ◆


 翌日。
 
 さっそくテクニックを教えてくれという店主に、まずは出刃包丁に慣れてもらうことにしたよ。
 初めて見る片刃の包丁に戸惑いを隠せない店主。
 
 出刃包丁をどうしたかって?

 はい。 
 納屋にあった中剣を出刃包丁に作り変えましたよ。

 まず、誰も見られないよう押入れの中に入ってスライムに戻り、中剣を刺したね。

 切腹じゃないよ。
 体内に中剣を入れて『変形』能力で、記憶にある出刃包丁の姿に作り変えていったよ。
 体内で粘土細工をしているみたいだな。

 イメージどおりにならなくても、何度もトライできるのが良いね。 
 普通、この世界で包丁を作るには、高温の炉と、大量の材木、金槌、冷まし水、作業員、などがいないと無理だけど、俺の体内なら、その作業ができちゃう。

 日本の刃物職人の技に比べ、性能が落ちるかと思ったけど、意外や意外、立派な出刃包丁に仕上がったね。
 
「これが出刃包丁……まるで名刀だな……」

 店主が製氷猫の毛に軽く出刃を添えて引くと、パラパラと毛が床に落ちた。

「す、すげえ」

 まじまじと包丁を見ている。
 そう、普通、髪をカットするには挟む形式の刃物でないと切れない。
 薄いもの、軽いものを切るには、押して切るタイプの刃物(刀や西洋包丁)は不可能と言えるんだよね。

 だけどこの出刃は先端がばりばりにそっているから、軽く引いただけでも切れる。
 日本の刺し身包丁などがこの発想だよね。 

「そう、慣れれば刃先が自分の指先に感じるはずですよ」

「魚の骨に添って包丁を滑らす……」

「そうそう、うまいですよ」

 店主には小魚の3枚卸しを毎日100匹やってもらったね。
 一週間もしないうちに、出刃に慣れましたよ。

「ついでに、魚の管理も教えておく」

「管理?」

「鮮度を落とさないため、魚を氷で冷やして売る。
 仕入れたら、鮮度が落ちる前に売る」

「鮮度か」

「そう、鮮度が良ければ、なんでも旨い。魚は肉に比べて鮮度劣化が早い。
 魚の中でも、大きな魚より小型の魚のほうが往々にして劣化が早いね」

「そうか。クジラはなかなか腐らねえな」

「だけど、冷やさないと、一気に鮮度劣化するから、氷は絶対に必要」

「ふむふむ」

 メモをとり始めたよこの店主。思いのほか熱心だね。
 やる気があるから、ついでに刺し身も教えちゃおう。

 醤油があればいいけど、この世界にあるわけない。
 オリーブオイルと、香辛料とでドレッシングで、カルパッチョ風でもいいよね。
 この世界は魚を生で食べる習慣がないから、新しい物好きの貴族にウケないかな?
 
 
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