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★勇者さまとお風呂♪

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 勇者さまのお父さまが酔ったらしく、ゲーム中に高いびきを始めました。
 一人でやってもつまんない。お母さまは台所で後片付け中。
 やっぱりお風呂に入ろうかな。勇者さまが入っているけど、いいよね。

 黙って廊下を進みます。
 勝手知ったる他人の家。勇者さまのお家は何度か来ているので全部把握しているもん。
 脱衣所に潜入すると、お宝発見っ!
 勇者さまのシャツが、パンツが、無造作に脱いでいるじゃあないですかっ!
 
「じゅるるる……」

 ヨダレを拭いつつ、まだ人肌に温かいパンツを手に取り、『ああ、ダメよダメダメ。これ以上したら犯罪だわ』と罪悪感にかられながらも『もし愛里コレクションに加えることができたら、最上級の秘宝になるわ』と『できなくとも、せめて香りだけでも』とクンクンしながら猛烈に感動しました。
 しかし、今のあたしってめちゃくちゃ下品です。どの愛里の性格なんでしょう。
 こんな下品な愛里がいることが恥ずかしいんだけど。
 冷静に自分を考える自分がいたりして、なんか変な感じ。
 これが勇者さまが言っていた心と身体がびっくりしちゃってる状態なんだなー。

 パシャ、とお風呂場から水の音がしました。
 すりガラス越しだけど、はっきりと湯船に浸かっている勇者さまの姿が分かります。
 あの湯船には、あの湯に中には、勇者さまのすっぽんぽんの下半身があるのです。
 ああ、なんというイヤらしく、そして素敵なのでしょう。あたしが今まで探求していた全てが、あの中にあるのです。
 だけど、だけど、愛里ちゃんたちの知識が集まったあたしは賢くなり、知らないことなんかありません。
 知識が増えるって素晴らしいし、嬉しい。だけどちょっと悲しい。
 
 おちんちんの最終進化形がなんなのか。どういった役割をするのか。おちんちんの謎はすべて解けてしまいました。
 あくしょんばいおれんすの勘違いも、SMがなんなのかも。ママのお仕事もそう。
 いままでことが脳裏に蘇ります。

 鷲掴み、ぺろぺろ、にぎにぎ。
 うぅ……ん。
 知らなかったとはいえ、よくもまあ、見事にイロイロとやってしまったのかしら。ああ、あたしはなんてふしだらな女の子なのかしら。知らないほうが良かったかも。

 新しい知識だと、男性は欲情したら我慢できない生物らしく、そういった意味では、あたしがやらかしたイロイロをよく勇者さまは我慢できたなぁ~としみじみ感心したのでした。
 やっぱり、勇者さまは勇者さま、ここは間違っていなかった。

 今までの恩返しでお背中でも流してあげよう。ごしごししてあげよう。
 そして実際に確認してみよう、いろいろ実験してみよう、おちんちんを! 
 風呂場に勝手に入って勇者さまの前に立ちました。
 
「あ……っ!」

 勇者さまはがっかりしたような、怒ったようなお顔をしました。

「ビキニでーす」

 さっき全部脱いでからママのお仕事で使っているらしい際どい水着に着替えました。
 紐を軽く引っ張るだけで、上の下もするりと脱げちゃうエッチ仕様です。

「な、なんだ……」

「ごめんねー」

「いや、別に……か、可愛らしい水着だね」

「ありがとう。勇者さまも素敵」

 外国の俳優さんみたく引き締まった身体です。あたしは吸い寄せられるように、抱きつきました。得意のジャンピング抱っこです。

「ちょっと、ちょっと!」

 勇者さまが右手を股間に、残った左手であたしを退かそうと押しますが、せっかくのラブラブチャンスじゃないですか。
 腰に回した両足、と背中に回した両手は絶対に放しませんよ。それにせっかく下の方で(詳しく言えばお尻に)マックスくんになって、コツコツしているちんちんに申し訳ないもんね。
 いやー、もう、いったい誰の、どの愛里の性格なんだろう。いつものあたしだったら、ここまで積極的にはならない。
 人格統合恐るべし。

「聖ーっ! 騒がしいけど、どうしたの?」

 すりガラス越しにお母さまの姿がっ! 

((ええええええええええええええええええええええええええっ!))

 とても慌てている勇者さま。もちろんあたしも。 
 顔を見合わせ、どうする? どうすりゃいい? 黙ってても意思疎通。

「なっ……なんでもないよ、母さん」

 なんと!
 何でもない。何でもないと言ったじゃないですか。
 つまりそれって、あたしを隠そうとするってこと? 
 嫌がる素振りをしながら、心の底では望んでいる。いやいやうっふんと同じ心境なのでは?
 
「あらそう? こっちで女の子の声がしたけど」

「ゲームの音じゃない? 愛里ちゃんが居間でやってる声だろ」

「そうよねえ」

 必死にお母さまとやり取りをする勇者さまは、あたしに湯船へ入れってジェスチャーをしました。
 なるほど、このままもし戸を開けられたら、ジャンピング抱っこをしているあたしたちを見られちゃう。
 あたしとしては全然気にしないけど、『まだ結婚してないのに、ちょっと先走り過ぎじゃないの』ってお母さまに怒られるかな。
 
(分かったー)ヒソヒソ
(ありがとう、さっ早くっ!)ヒソヒソ
(……、……)
 じっとしているあたし。
(……、……? なんで離れないの)ヒソヒソ
(抱っこしたまま一緒に)ヒソヒソ
(ダメだって)ヒソヒソ
(一緒じゃなきゃ、ヤダ!)ヒソヒソ
(わがまま言わないでよ)ヒソヒソ
(ヤダもん!)ヒソヒソ
(うう……もう、仕方がないなー、絶対に変なとこ触っちゃダメだからね)ヒソヒソ
(分かってるよー。もう以前の愛里じゃないんだからー)ヒソヒソ

 勇者さまはあたしを抱っこしたまま湯船に浸かりました。
 二人で入るにはちょっと小さいかな。
 ふと湯面に際どいビキニの上下が浮かんでいるじゃないですか。

(あーっ、やっぱり取れちゃったんだー)ヒソヒソ

「い――――っ!」

「どうしたの聖?」

「ななな、なんでもないって……」

「声が引きつっているけど」

「いや、ほんと、なーんにもないって」

「へーっ……、あれ? これって……」
 
 お母さまが持ち上げた衣服は――。

「これ……、愛里ちゃんが着てた……あれあれ?」

 そういえば脱ぎっぱなしだったね。

(困ったー)
(終わった―)

「聖っ! これはどういうことっ!」

 返事ができない勇者さまは両手で頭を抱え、元気だったマックスくんは申し訳なさそうに下を向きました。
 
「黙ってたら分からないわ。ちょっと出てきなさい」

「……」

「出ないんだったら、母さんが入るわよ」

「わ、分かった……」

 おずおずと股間を隠しながらお風呂を出る勇者さまの後ろを、あたしもついて出ました。
 唖然とするお母さま。
 なんとなく分かる。
 すっぽんぽんの息子の後ろから、ビキニを持った素っ裸の小学生が登場したもんね。
 
「あ、愛里ちゃん……あなた……」

 勇者さまが怒られる、と思いました。
 だけど――。

「血――」

 血相を変えたお母さまがおっしゃられました。
 
「ほんとうだ。愛里ちゃん、血が出ているっ!」

「ふえ?」

「聖、あんたは見ちゃだめっ! どっかよそ行ってっ」

 勇者さまの顔をグイッと反対方向に向け、お母さまがあたしの前でかがみ呟きました。

「……初潮……」

 えっ? ええええ!

 ついにあたしにもできたんだ! 
 赤ちゃん製造機。
 
 ん? 間違ってないよね。



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