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★最強の生体武器
しおりを挟むあたしの収録シーンがひとまず終わったので、ちょっと休憩。
勇者さまはたぶん控え室にいるはず。あたしは急いで向かいました。
というのも最近、優花ちゃんが勇者さまに馴れ馴れしくしていて、ちょっとくらいなら、と目をつぶっていたのですが、流石にパンツを脱いで見せるのはムカつきました。勇者さまに触らせるのはもっとムカつきです。
勇者さまは凛とした態度で、優花ちゃんを拒否しておられました。流石です。
だけどあたしはそこまで立派には成れません。一気に頭に血が昇ってしまって、別のあたしが飛び出してきたのですが、後からミッチェルさんに顔をペシペシ叩かれ正気に戻り、そのままずるずる控え室まで連行されたのでした。
おちんちんは女の子の下半身に共鳴して進化してゆくのです。
つまり優花ちゃんはおちんちんを最終進化形態にしてみようとか、武器になったおちんちんであくしょんばいおれんすして貰おうとか、ぺろぺろしてあくしょんカルピスを飲もうとか、そんな狙いが見え見えなのです。
だけどダメ。ほんとうにダメ。
とても苦しんでいる勇者さまを覚えているでしょうに。
おちんちんは自然進化させるもの、無理やり進化させてはいけないのです。
あれからあたしはずいぶん考えました。おちんちんとは、なんだろうかと。サルにシッポが生えているように、男性にもおちんちんが生えている。
ヘビのような、あたしたちが息を吹きかけるだけでピクピク反応して、どうも勇者さまが動かしているわけじゃなさそうです。
何か別の意思によって動かされているのかな? ズバリ別の生き物なんじゃないでしょうか――。
日頃はちんまり可愛い竹の子の里が、ある日突然進化してゆき、最終進化形態――つまり最強の生体武器になる。
寄生獣という楽しい漫画があるけれど、あれに登場する寄生生物に近い生き物でしょうか。
まあ、おちんちんが喋ったりするとは思えませんけど、でも最終進化形態になると鋭利な剣に変形したり、硬質化して頑丈な盾になるのかも。
特に硬質化に関しては、ペロペロしてたら本当に硬くなったしとても熱かった。
変化していたから熱が出てたんだと思う。
でも全ての男性がそうじゃないでしょう。
特に国語の斉藤先生なんかは弱そうだからたぶん進化とか無理だと思う。
おちんちんの修行レベルや、これも個人差、いや個チン差があって、勇者さまだともの凄いんだと思う。見たことないけどそう思う。
とにかくおちんちんが進化すると意思を持つようになり、眼は無いけど表面全部が空気の動きを察知して周囲の状況を把握するみたい。
そしてペロペロしていると、木に美味しい果実が実るように、最終進化形態からカルピスが出てくるという。頑張ったご褒美があるという。
不思議です。男性にだけ何でこんな生体武器が、アドバンテージがあるのでしょう。
いつか勇者さまに直接訊ねてみよう。全ての謎が判明してスッキリすると思う。
それは置いといて、とにかく勇者さまのいる控え室に急がなきゃ。
優花ちゃんは今日も収録があたしより早く終わって、直ぐに姿が見えなくなりました。勇者さまに擦り寄ったり、あくしょんばいおれんすのおねだりをしているとは思いたくないんだけど。
もちろん優花ちゃんにはキツく言ったし、メールでも注意しましたが心配なのです。
「うーん。困ったなあ……」
控え室から勇者さまの声が聞こえました。
まさかこのドアの向こうで、勇者さまと優花ちゃんが……。
「よーし」
誤魔化しが利かない証拠を握ってやるから。
後で優花ちゃんを本当のバイオレンスしてやるから。
音がしないよう、ドアを少しだけ開けて隙間から覗くと室内は二人だけ。勇者さまと、意外にもブラックが会話をしていました。
優花ちゃんでないのがなによりですが、よく見ると、ブラックの下半身はすっぽんぽん。あたしの位置からはブラックの側面が、見たくもないちっこいのが、ポッチみたいなのが進化もせず項垂れていました。
勇者さまはブラックのちっこいのを見て、気の毒そうにしてます。
「違うんだって、あのなあ……」
違う……、なにかな?
勇者さまに進化のさせ方を教わっているのかな?
おちんちんの修行しているのかな?
あたしが見学してもいいのかな?
「坂本氷魔さんが無理やり僕のおちんちんを触ろうとしたって!」
あれ、なんか違う。
ブラックは怒っているみたい。
――無理やり僕のおちんちんを触ろうとした――。
あーそうか!
勇者さまがブラックのおちんちんを鍛えようとして、無理やり進化させたわけですね。
ところがブラックは進化の苦しさに我慢できず、泣き言をほざいているわけですね。うんうんブラックらしい。
「僕があいりんを守るんだ。絶対に守るんだから――っ!」
もー駄々をこねて。
あたしを守るのは無理ですって。
「いやいやいや」
勇者さまは呆れておられます。そうでしょうそうでしょう。
そのちっこいのじゃ無理ですって! 硬質化もしてないし! とりあえず進化させないと!
ここはあたしがバシッとブラックに言い聞かせなきゃ。
「ダメよ、羽沢くんっ!」
「あいりんっ?」
あたしが近寄ると、ブラックが慌ててズボンを穿きました。
「そのままでも良いよ」
「ははは、でもあいりん~」
ブラックは恥ずかしそうにしています。ひ弱いおちんちんを見られるのが嫌なのでしょう。
分かる分かる。
「おちんちんの修行は苦しいものだよ。せっかく勇者さまが指導して下さっているんだから、ある程度は我慢しなきゃ」
セミ部屋作りに連日参加して貰ったお礼ってわけじゃないけど、あたしなりに助言してあげました。
「はあ……」
まーっ、気の抜けた返事。やる気ゼロですブラック。
「進化すれば強くなれるんだから」
「進化?」
ブラックって、まさか進化も知らないのっ?
「おちんちんの進化よ、し、ん、か」
首を傾げるブラック。
言い方が違うのかな? 男の子はどんな言い方をしているのかな。
「カルピスも出るんだから」
「うそ。出るの、かるぴす?」
知らないんだ!
そうかそうか、ブラックは子供だから出したことも無いんだ!
いや、これも個チン差があるのかもしれない。
セナお姉ちゃんが白い海苔みたいなのが出るって教えてくれたけど、大人でも出ない男性がいるのかもしれない。
もちろん勇者さまは良質なカルピスがたっぷり出ると思うけどね。
「まっ、男だったら誰でも出るもんじゃないんだけどね。ちゃんと修行した者にしか出せないんだよ」
「はあ……そうなんだ。かめかめ波みたいな?」
「そうそう」
勇者さまが、ちょっと違うんだけどなー、と苦笑い。
あたしの予測が違ってたかな。
「僕も出ると思う」
「あっはっはは。無理だよ絶対」
逆立ちしても無理。
「やってみないと分からないじゃん」
「子供だから。どうせ一度も進化したことないんでしょ?」
「あ、あるよ。進化くらい」
ブラックが口を尖らせました。
「ムリムリー」
きっと嘘ついてる。
「出来るたら出来るー」
意地で言っているだけなのは明白なんだけど。
「はいはい、分かった分かった。そこまで言い張るのなら、カルピスを出してみて。見てあげる」
「えっ! 見てあげるって……」
困っている困っている。
進化のさせかたが分からないんだ。うふふふ。
「仕方がないなあ。じゃーちょこっとあたしがお口で進化させてあげるから、さっさとズボン脱いで」
「「ええええ――――っっ!!」」
ブラックと一緒に勇者さままで驚いています。
なんでかな?
勇者さまが「ダメダメ、絶対にダメ――――っ!」と屈んでいたあたしの手を引っ張りました。
「いいかい愛里ちゃん。女の子がおちんちんとか、口に出して言っちゃダメだよ。それから進化もさせちゃダメ。本当にダメ。二度とダメ」
早口でどんどん話されて、ちゃんと聞き取れないけど、でもあたしを心配しているには違いない。
「うん……わかったぁ」
嬉しい。
「本当にだよ。約束だよ!」
「……わかったぁ……。進化は勇者さまだけにするぅ」
勇者さまが絶句し、ブラックは複雑な顔をしました。
まあ、ブラックはカルピスどころか、進化すらしないと思う。10年早いと思う。
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