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★小さな胸と暴力本
しおりを挟む勇者さまがいきなり後ろから抱きついてきて、あたしは嬉しくて嬉しくて液晶画面はどうでも良くなっていました。
うまい具合に今この廊下にはあたしと勇者さましかいません。
ひと目が無いからだと思います、いきなり襲ってきたのは。
いえいえ、そんな計画的な犯行を勇者さまともあろう方がするはずもなく、たぶんもっとなにか理由があるのです。
それに勇者さまには、あくしょん・ばいおれんす女優のセナお姉ちゃんが彼女でいるじゃないですか。
小学生相手に浮気みたいなマネをするわけがないのです。
偶然、たぶん何かの偶然ですきっと!
と言い聞かせつつ、揃う数字を喜んでいるフリを装っていると、あたしの胸の膨らみに勇者さまのお手々が滑り込んできたのでした。
こここ、これも偶然?
なにかの拍子にしても両手ともすっぽりカップインするとは、ドラクエ・カジノスロットで、いきなりスリーセブンが揃ったくらいの確率。
ワザとかな? 触りたくて触っているのかな?
衣類の上からですが、もぞもぞ触っている、いえ、くれているご奉仕付き。
偶然にしてはおかしい。
膨らみといえるほど膨らんではいませんが、一応凹凸はあるささやかな胸がぞぞぞぞぞ~っ、と痺れました。
親切に労るつもりで、ほぐしているのかな?
でも胸ばかり触られ、ぞぞぞ~っが止まらなく、つい声を出してしまったので、サービスは終わってしまいました。残念。
でも女性にこんなご奉仕はしないでしょう。
彼女がいるのに、浮気みたいな行為は変だし、あたしは思い切って訊ねてみました。
「あの……。ゆうしゃさ……」
「?」
「いえ……、山柿お兄ちゃんって、セナお姉ちゃんの彼氏なんですか?」
勇者さまのお顔が直ぐにくもりました。
あぁっ! いきなり過ぎたわけです。
もうちょっとゆっくりそれとなく訊ねればよかったのに、バカバカ!
だけど、そこは勇者さまです。
「いや、僕は誰とも付き合ってないよ。セナさんは冗談で言っていただけ」
あたしの狼狽を感じ取られたようでそう言いました。
「そ、そうなんですか……」
なんと! 誰とも付き合ってない。
モテモテなのに、本当でしょうか。
笑いながらではありますが、ちゃんとあたしの眼を見て言い切っていらっしゃるところから、真実味があります。
「じゃ……」
じゃあ、あたしにもチャンスがあるのでしょうか!!
あたしのレベル1の胸を触ったのは、将来に期待してくれた……『大きく育てよ』の意味かしら。
おちんちんが最終進化するみたいに、あたしの胸も進化です。
「こんな所にいたのね」
セナお姉ちゃんがやって来ました。
「そう。山柿お兄ちゃんにカルピスをごちそうして貰ったの。一本買ったら当たりが2回も連続したんだよ!」
「へー、そりゃ凄い。あっ監督!」
ママもやって来て4人で談笑。
だけど、どことなく勇者さまが、ママに緊張して見えるのは気のせいでしょうか。
「疲れたろう愛ちゃん。着替えてゆっくりしよう。夕飯は建成と美味しいものでも食べるか?」
「わーい」
勇者さまとセナお姉ちゃんを二人っきりにするのは心配だけど、どうすることも出来なくて、あたしはママとビルを出ました。
◆
◆
一週間後。
トキメキTVの収録で再び大阪にやってきました。
ママと2人でスタジオの近くのコンビニに立ち寄りました。
お買い物をしているママと離れ、あたしは『なにかイイのもがあるかなあ~』と店内をいろいろ歩いていると、ふとある物に目が止まりました。
それは雑誌コーナーの一角。陳列棚の下。表紙がはっきりと分かるよう、丁度あたしのお膝の高さに置かれてあるご本です。
ご本がヒモで縛られ、なんだか禁断の雰囲気をかもし出していました。
もちろん中身を見せない工夫でしょうが、表紙にセナお姉ちゃんが掲載され、ご本と同じように縛られているのでした。
しかも――裸。裸なのです。
もの凄いパワフルなプロポーションだとひと目で分かりますが、きつく縛られた縄が、その豊満な胸や身体に食い込み、セナお姉ちゃんのお顔は苦痛に歪んでいてとても痛そう。
素肌には赤い痣があり、背後に立つ半裸の男が、構えてたムチを浴びせたのだと思います。
もちろん、もちろん演技だとは分かっています。分かっていますが、まさしく《ばいおれんす》!
A∨(あくしょんばいおれんす)女優が出ているのですから、暴力的なご本だとは分かりますが、この平和な日本において、どうしてこんな暴力のご本が作られるのでしょう。
ずっと前から不思議でなりませんでした。
ママやセナお姉ちゃんのお仕事を批難するつもりはありませんが、作り続けているということは売れているということ。
暴力的なご本を買っている人がいるということです。
表紙でさえこんな過激な暴力なのですから、中身はもうそれはそれは、小学生のあたしには想像も出来ないくらいの暴力が掲載されているのでしょう。
18歳未満には見せないようにご本を縛っているのも頷けます。
あたしは左右の通路を確認しました。
丁度誰もいません。ママはお買い物中。
そっとご本を手に取り、じっと表紙を見ます。
見れないとなると、よけいに見たくなるもの。
それにご本の過激な表紙をじっと見ていると、ぞぞぞ~~っと背中が痺れたような、くすぐったいような、キノコちゃんのレバーにいたずらしちゃった時みたいな気持になるのでした。
月刊SM恋コイ。
そう記された不思議なご本。
暴力本でありながらも《恋》を押し出しています。
暴力の中にもあるのでしょうか恋が。
確かにお昼のドラマでも、イヤよイヤよと言いながらも好きになるお話しがありました。
あれにアクションと暴力のレベルを上げたご本なのかしら。
タイトルの下には大きな文字で、『第二弾・美胸柏樹セナの魅力満載!!』
ずっと下には小さく『異色新人男優の巨大暴れん棒・乱れる若妻』
はて、なんの事でしょう? とても興味が湧いてきます。
裏面には定価1980円(税別)と。
運良くあたしはママからお小遣いとして3000円貰っているのです。
えっと、あ……ストップストップ。これは18歳未満はダメなご本じゃないですか!
うつかり買っちゃうところでした。
皆さんこうやって購入してしまうのでしょう、あぶないあぶない。
そっとご本を元に戻し終え、改めて気付きました。
この男優……異色新人男優さん……お顔にモザイクがかかっていますが……似ている……。
大きな四角いお顔といい、背格好といい、クセ髪のがさがさ具合といい、勇者さまにそっくり。
セナお姉ちゃんと一緒にいるわけで、このご本の写真はママのお仕事でしょうし……、やっぱり坂本氷魔さん。
だったら勇者さまです。
「そろそろ行くよー愛ちゃん」
「あっ! はーい。ママ」
あのご本には勇者さまの暴力的なアクションシーンが満載というわけなのです、きっと。
あぁ……。欲しい。
巨大暴れん棒がなんなのか気になる~~っ!
下半身裸だから、おちんちんの最終進化形が映っているかも……。
背中がぞぞぞ~っと、またしました。嫌いじゃないこの気持。
ご本の中を見たら、もっとぞぞ~っとなるのかしら?
勇者さまの事も、このぞぞぞ~っとなる事も、買って確かめたいけど、あたしは小学4年生。
A∨(あくしょん・ばいおれんす)俳優。
詳しいお仕事は分かりませんが、見た殆どの人が、あたしみたいにぞぞぞ~っとなるのでしたら素晴らしいお仕事です。
大きくなったらあたしにも出来るかな?
セナお姉ちゃんみたいに、胸がおっきくなったらなれるかな?
まずは身体つくり。
身体をはったお仕事だもの。
大きくなったら、ママにお願いしてみようかな。A∨女優になりたいって。
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