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K大試験日二日目 その2
しおりを挟む「ぎゃあああああああああぁぁぁ――――っっ!!」
階段を降りながら防寒マスクを脱いだ瞬間だった。丁度登ってきた二十歳位のOLと至近距離で鉢合わせしてしまった。
瞬時にOLが硬直し、一拍おいてムンクに豹変したのだった。
過去、女子に絶叫されたケースとして一番多いのが鉢合わせ。
トイレから出てきた女子と偶然バッタリ。ドアを開けたら目の前にいた女子とバッタリ。女の子の落とした物を拾って渡そうと顔を起こしてバッタリ。とにかくバッタリ僕の顔を視界に入れてしまった女子は、かなりの高確立で絶叫する。
OLはムンクの顔のまま後ずさったが、階段の段差につまずいた。
「危ないっ!!」
咄嗟に叫び、僕はバランスを崩したOLの両肘を掴んで転倒を食い止めた。が、OLは自分の肘を見ていっそう顔を引きつらせ、ブンブン左右に振った。
「いっやぁぁぁぁ――――――っ!!」
「あの、ちょっと! いや、いや、もがくの止めて! 落ち着いて! 危ないから、ほんと! 後ろ階段あるから!」
「放してっ! 誰か助けてっ!!」
「分かったから、分かったから、だからじっとして、ムンクレベル落として、階段ちゃんと立って。はい、そうそう。ゆっくり、そう」
手を放したら、OLは自身の身体を抱くようにし、ガチガチと歯を鳴らしている。
周りの乗客が階段を上り降りする形のまま僕とOLを見ていた。
「どうした、痴漢か?」
誰かが言ったのを切っ掛けに、ざわめきが起きた。
「なんだなんだ! どうしたあの男」
「きゃ――――っ!!」
「わっ! 超怖」
「犯罪者? 駅員はどうしたーっ!」
「きゃ――っ!」
写メ撮っているヤツもいる。この場を離れたほうが良さそうだ。
僕は今だに心が動揺しているらしいOLに「ゴメンね」と頭を下げたが、返事はなく、怯えたままだった。
もし呉地市だったら、落ち着いた後でちゃんと謝る。事情を話す。周りの人も僕を知っててフォローしてくれる。
違うんだ、ここは……。
OLさんをそのままにしておくしかなく、僕は今一度頭を下げてから急いで階段を下りた。
「「「キャ――――――ッ!!」」」
下にいた新しい乗客が僕を見るたびに次々と小さな悲鳴を上げる。
僕は女性客となるだけ接近しないよう、そして顔を見られないよう俯いて走った。
それでも女性たちが僕顔を視界に入れ絶叫。複数の絶叫にその近くの女性たちが取り敢えず絶叫。三階から二階へ繋がる階段、僕の通過した後を女性たちの絶叫が付いてくる。音速ジェット機が通過した後に爆音が聞こえるみたいだった。
凄い! ここまで凄い絶叫は初めてだっ!
二階へ降り立ち更に一階へ通じる階段を駆け下りた。
周囲の人々の視線が更に集まり、前方の人たちが潮のように僕を避けて道が出来た。
そのまま一階のロビーから外へ出るとバスターミナル、そして鳴り出したパトカーのサイレン。
『止まりなさい、そこの学生、止まりなさいっ!!』
拡声マイク?
えっ? えっ? 僕の事なのか?
僕は駆けつけた警官に取り押さえられ、パトカーの後部座席に放り込まれた。
「無事捕獲完了」
隣りにはヤクザ顔の高野さん。ニヤけている。
「急いでくれ!」
「了解」
グン! と急加速するGを感じる。
「目立ってたぞ、小僧。居場所が直ぐにわかった。後は任せておけ!」
サイレンを鳴らしながら、馬顔刑事並の猛スピードでパトカーは爆走した。
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