63 / 221
☆フィギュアたち
しおりを挟む「じゃあね、山柿お兄ちゃん。今日はとっても楽しかったーっ!」
山の上公園のてっぺんに差し掛かった滲む夕日。
見舞いに来た愛里が手をふりふりしながら帰ってゆくのを、僕はぽわわわゎゎ~んとしながら胸の位置で両手を揺らした。
こんなに綺麗な夕日を見たのはいつだったか。
あぁ……幸せだなぁ……。
ほのぼのしていたら、隣の若奥さんが家に入る音で、我に返り恥ずかしくなる。
デレデレ顔を見られたか。怖顔とミックスされて気持悪い怖顔だったかも。
えーいっ! どうでもいっ。
部屋に戻ってクローゼットを開いた。
「凄いだろ……みんな」
愛里が『今日はとっても楽しかったーっ!』マジで喜んでくれた。
トイレの出来事を黙ってとお願いされたし、ベッドですごい雰囲気になったのに『今日はとっても楽しかったーっ!』だぞ。
愛里が長い黒髪を乱し、仰向けになっていたのが目に浮かぶ。
ムフムフムフ……僕も楽しかったよぉぉぉぉおおっ!
『聖くん、本気なの?』
彼女たちから声がした。
「なにが」
『愛里ちゃんを好きかってことに決まってるじゃない』
「もちろん。相性ぴったり」
『でも、どこまでなの?』
そう言われて、僕のほんわかモードは停止した。
どこまで……。
『彼女にする気ある?
恋人によぉ~出来るかなー。
厳しい聖くんのパパに紹介してぇ~、納得してもらってぇ~。外でデートしちゃうんだー』
そうだ。
無理に決ってる……。
僕の両親はもちろん、岩田や岩田ママにも僕たちを理解させる……、
だいたい愛里と手を繋いでデートする僕って、まずカップルに見えない。
幼女連れの危ないロリコンだ。
『ふふふふ。目が覚めたわね。残念だけど身を引くべきよ』
『そうよそうよ。生身の女の子でひどい目に合ったでしょ。忘れたの?』
「でも愛里は君たち(フィギュア)を褒めた。
『綺麗で、凄く可愛い』って。聞いてただろ『もっと見せて』とお願いもしただろ?
あんな子は日本中探してもいない」
『ふふふふ』
「何がおかしい?」
『愛里ちゃんに惚れられてると決めて話してる。だからよ』
「いや……。見舞いに来てくれたし、ベッドで、あんな感じ……」
『相手は小学生の女の子。無邪気な子供よ?』
さーっと血の気が引いた。視界が乱れる。
今日はもう、彼女たちと会話は止めよう。
クローゼットを閉じて、よたつきながら、ベッドに腰をおろした。
「そうだ……、そうだよ……」
愛里が僕と同じ気持でいるか――。
見舞いに来たのは優しさで、純粋に僕の身体を心配してくれただけ。
ベッドで見つめ合ったのも、分からずじっと固まっただけかも。小3が性に目覚めているわけ無い。
愛里は怖顔の僕でも会話ができる優しい子。それだけでも凄いのに僕に懐いている……。
僕って男は何を期待していた。下心で愛里を愛でていたのか。
いかんいかん!
教師を目指す人間の思考じゃないぞ。
今はK大学入試だ! 勉強だ勉強!
参考書、K大入試過去問題集を広げた僕は、何度も浮かぶ愛里を消しながら左手を走らせた。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる