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★青い目の男子 その2
しおりを挟む「じゃ」
「待って待って!」
「何なんでしょうかっ!」
嫌な顔のつもりで、口をふくらませてみました。
初対面の人に失礼な事をするのはレディじゃないけど、コイツは例外。レディの先生でも納得する場面です。
「もーっ。怒らないでよ岩田さん。
凄いね最終選考って……。あぁそうか!
岩田さんのママって芸能関係で仕事してるから、あぁそうか、そうだよね。
そういうコネって有るって知ってる。そうかそうか」
「終わった? ならじゃ」
「待って待って」
「急いでるんだけど」
「こっからが本題。いま岩田さんがやっているの酷くない?」
「……は?」
「はじゃなくて、おかしいでしょ」
「おかしい? あんたがよっぽど可笑しいよ」
「違う違う。立派な事言ってたくせに、自分で覗きをしてるじゃない」
立派な事……、はて?
――おおっ!
思い出しました。
青い瞳の子は、勇者さまを覗いた小学生のひとり。
確かにあたしは覗きはダメと言いました。
はは~ん。
だから、あたしの勇者ウオッチングを目撃して、鬼の首を取った気分なのか。
でもお生憎さま、あんたの覗きとあたしの勇者ウオッチングじゃ、意味が全然違う。
あんたは相手を軽蔑するだけで、あたしは愛です。愛に溢れた心で見惚れているのです。
でもそれを力説しでも意味分かんないでしょうし、勇者さまへの愛を語るのは嫌。
あたしのダンジョン最深部の超レアアイテムですから。
「岩田さんもフランケンを見たかったわけだ」
「フランケン……」
「そう、変態フランケン」
「へ、変態って……」
変態って、ちょっとそれ――――、
「どっちの意味っ!」
「はぁ?」
完全変態。
あぁ、完全という響き……。完璧な大人になるスマートさ……。
有名幼稚園から名門小学校、高校、ハイレベルな大学を卒業して見事立派な社会人へとなる完全変態。
不完全変態。
未完成イメージ……。
義務教育は卒業するけど、やさぐれて世間の爪弾き。当然就職は出来ず、自室にこもってグダグダ駄文を書いてサイトに投稿しニタニタする、小説家気取りの大人になる不完全変態。
あたしは不完全変態が好き。
未完成の哀愁がそそります。
勇者さまはK大に合格し立派な社会人、光が差す完全変態を歩まれる。
変態フランケンなどと、完全変態の意味なら許しますが……。
「どっちもなにも、変態フランケンは変態フランケンだよ~ん」
薄ら笑い。
馬鹿にしている。あたしの勇者さまを見下してる。 許せない……。
「ち、違う!」
「なにが違うのさ。岩田さんも、あの男が見たいんじゃないの?
そうでしょ? 言う事おかしいよ」
この子、自分が悪い自覚がない。
「あんたと一緒にしないでっ!」
「僕と岩田さんは同じじゃん」
ニコニコで近づいてくる。気持悪い。好きの意味じゃなく本当に気持悪い。
誰とでも仲良くできるけど、この子は苦手。
後退りしたけど歩きが早く縮まり、
「逮捕だよ♪」
笑って右手をガシッと捕まれました。
「逮捕って……あたし犯罪者?」
フザケてる。悔しい。
「離してっ!」
振って解こうとしたけど、強い力で無理。
「いいの~? 三人組に話しちゃっても……。
僕たちに説教をした岩田さんが覗きなんて。スクープだね」
脅しをする最悪人間。
いいでしょう。好きなだけ言えばいい。
勇者さまに愛を込めただけですから、な~んともな……、……あ。
そうでもありません。
あたしが勇者さまを見ていたと噂が広まれば、あたしたちの愛が知れる。
小学生と高校生が関係を持った事まで。秘蔵のお人形さんまで。
あたしは構わないけど勇者さまが負担……。
言い返せないっ。
「じゃ、どうしたらいいの……」
この子に黙ってもらうしかありません。
「そうだなぁ」と勝ち誇ってあたしを観察します。
「手を繋いで、一緒に学校へ行ってくれれば、黙ってあげてもいいけど……どうかな。
岩田さん次第だけど」
嫌です。
嫌です嫌です嫌です嫌で――――すっ!!
男の子と体育で繋いだだけで、山柿さまとも手を繋いでいないのに……。
こいつなんかと繋ぐのは……死んでも嫌っ!
でも……断ったら勇者さまの秘密が……。
黄帽を被った男子が、にちゃにちゃ返事を待っています。
あぁ、勇者さま。
理由はあるけど、勇者さまと繋ぎたい手を、卑劣男子と……ごめんなさい。
決して浮気じゃないからっ!
昼ドラな展開に、ゾクゾクしました。
「いいけど……」
「ありがと。じゃ、学校へ行こうか」
差し出された右手に渋々手を合わせると、ぎゅっと握られ満面の笑み。
嫌々なあたしと繋いで何が楽しいの?
人の弱みに付け込んで喜ぶ……こいつおかしな人間。
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