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旅立ち

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ロイさんについていき先程よりも小さい部屋に入る。小さいといってもそこそこ広いんだけど。中に数人ほどいた。皆ロイさんを見ると立ち上がり姿勢を正している。

「今日から1ヶ月間、臨時でアレク様達の護衛に入る人達だ。2日前の襲撃で助けてくれた人達だから腕前は保証する。それと変な詮索はしないように」
「よろしくお願いします」

頭を下げて挨拶をする。護衛の人達にも挨拶をされロイさんから椅子に座るよう促される。他の人たちはチラチラとこちらを見ながらも自分たちの仕事をしている。

「ここは護衛達の休憩室みたいなところです。ソラさん達も仕事の時は1度ここに来てくださいね。
では護衛について説明します。護衛対象はアレク様、エリス様、アリス様の御三方です。護衛の時は必ず2人組。24時間交代で、1日働くと2日休みになります。ここまではいいですね?
私たちの仕事は名前通り護衛です。アレク様たちに危害が及ばないよう身辺を護ることです。普段の護衛なら私たちだけでも大丈夫なのですが…。2日前のような事が起きる可能性もありますので念には念をってことで3人にも協力して頂きました。とりあえずここまででなにか質問はありますか?」
「巡回とかもするんですか?」
「それは警備のものがいるのでしなくても構いません。他には…なさそうですね。では給金についてお話します。3人には1ヶ月で金貨50枚お渡しします」
「ご、50枚!?」

金貨50枚って50万円って事だよな。1ヶ月働いて、しかも働くのは1日働いて2日休みで、めちゃくちゃホワイトじゃん。俺が働いてた会社と天と地の差があるんだけど。

「少し高めに設定させて頂いてます。3人とも腕は確かですし、命に危険のある仕事ですからね。これぐらいはしないと。終了時にはアレク様が言っていた本や鉱石なども準備しておきますよ」
「そんなに!?あ…失礼しました」

思わず大きな声が出てしまう。その瞬間一斉に俺に視線が集中してしまい縮こまりながら謝る。でも50万円も貰うのにさらに色々とくれるって公爵様太っ腹すぎない?大丈夫?本当にいいの!?ロイさんをチラッと見ると嘘を言っているようには見えないから本当なんだろう。

「ネルさんは女性なのでアリス様の護衛をお願いします。ソラさんとライドさんはアレク様の護衛にあたります」
「わかりました」
「ではそれぞれに1人相手をつけます。分からないことがあったらその人に聞いてください。聞いたな。クリス、リーク、シオン。3人に教えるように。では私は報告があるので失礼します」

ロイさんは忙しい人なんだろう。説明を終えるとすぐさま部屋から出ていった。名前を呼ばれた3人が俺たちの前に立つ。男の人2人と女の人1人だ。俺達も慌てて立ち上がる。女の人は多分シオンさんだろう。他のふたりはどっちがクリスさんでどっちがリークさんだろ。

「俺がクリスっす。よろしくソラ」
「拙者がリークでごじゃる。よろしくでごじゃるライド殿」
「あたしがシオンだにゃ。ネルっちよろしくにゃ」

「「「よ、よろしく…」」」

今までに無いタイプの人達に少し固まってしまう。シオンさんは耳もあるし獣人族なんだろう。多分猫族だ。けれどあのフランクさ。ネルとは正反対だけどやっていけるんだろうか。
リークさんの話し方も少し変わっている。外国人がやる「Japanese Ninja」に似ているな。もしかしてリークさんの祖先が転生者とかなのかな?

「俺たち今日は待機組なんすよ。特に仕事はないだろうからゆっくりしときますよ」
「待機組?」
「緊急時には護衛人数を1人ずつ増やすんです。その時にすぐ対応できるようここで待機してるんす」
「なるほど」
「ねーねーネルっちー。めっちゃ綺麗にゃ。にゃにかしてるのかにゃ?」
「い、いえ特に…」
「ほんとかにゃ?でも髪も肌もめっちゃ綺麗にゃ!!」
「ライド殿は鍛冶師でござるな。ではこれは見たことあるかな?」
「なんだこれ!?剣…じゃないよな。見たことないぜ」
「拙者の国に伝わる刀というものでごじゃる。こちらでは作っている人が少ないので壊れると大変でごじゃる」
「だろうな。でも綺麗な造りだな。すげー。どうやってんだろ」

ライドとリークさんはなんか気が合いそうだ。しかしネルとシオンさんはやはりネルが押されてる。あそこまでグイグイ来る人少ないもんな。下心のある男には問答無用だったけど流石に出来ないもんな。

「仲間がすんません」
「いえ。これも社会勉強ですよ」
「ソラがこのチームの保護者っすか?」
「まぁそんな感じです」
「その歳で大変っすね。とりあえず仕事の話をしましょう。俺たちは明日護衛にあたります。3人ともぶっつけ本番になりますが、ロイさんに認められてるなら大丈夫でしょう。格好は…まぁそのままでいいっすね。明日の朝、9の鐘がなる前にはここに来てください」
「わかりました」

ってことは9時出勤ってことだよな?なんていい仕事なんだ。地球にいた頃は6時出勤が普通だったぞ。

「宿舎があるから今日は3人ともそっちに泊まるっす。その後は街で宿を取るのも自由なんで」
「ありがとうございます」

今日の宿をどうしようかと思っていたから本当に助かる。宿舎の場所を教えてもらい先に部屋を出る。シオンさんとライドたちは少し名残おしそうだったけど、ネルはほっとしている。少し困っていたようだ。

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