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旅立ち

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sideティリル

『くそっ、ソラは帰ったか』
『ついさっきね。用事は終わったの?』

ソラ君が帰ったあと、どこからともなくグーフか現れた。あと数分早ければ会うことが出来たのに。彼は本当に甘いものが好きなようでいつもソラ君に創ってもらってるんだから。

『ふん。いつも通りの中身のない集まりよ。なぜお前は免除されてるんだ』
『僕はここの管理者だからね。いつ誰が来るかもわからないし。それにあんな堅物だらけの集まりになんて行きたくないもん』
『我だって行きたくないけどな』

グーフは盛大にため息をつく。よほど集まりたくないんだろう。まぁ僕も絶対に嫌だけど。アイツがいるし…。

神というものは無闇矢鱈に地上に住む人達に関わってはいけないとされている。今回のソラ君みたいな子は別だけど。

それを暇だからと特定の人物の人生を弄っている神が存在する。それが僕の嫌いなアイツだ。何度も注意をしたけど聞く耳もたずだし、神同士の私闘が禁じられているから力づくで辞めさせることも出来ない。

それをいい事にこの数百年好き勝手やっている。ソラ君の魂が地球にいってしまったのも多分アイツのせいだろう。

『そういえばソラは変わりなかったか』
『うん。元気そうだったよ。次の街に行くんだって』
『そうかそうか。奴は中々変わってるからな。我の加護もあまり使ってないようだし』
『そうだったね。エルフの子の時も、里をグーフの加護を使って調べればいいと伝えたのに「勝手に知ることはネルに悪い」と言って調べなかったもんね』

チームを作った日の出来事がよほどこたえたのか、ソラ君の意思はかたかった。僕達も別に本人が知りたくないならと強くは言わなかったけど。

『最近は図書館で勉強もしていたから我の加護を使うことも減ったからな。甘いものを創ってくれなくなったらどうしようか』
『ははっ。普通にお願いしたらソラ君は創ってくれるよ』

ソラ君は優しいからね。人を愛したいし愛されたいと今でも思ってる。彼の周りにはこれからもっともっと人が増えるだろう。その人たちが皆笑っている姿が想像出来る。

『ふんっ。またここに呼んで創ってもらうことにする。我は疲れたから帰る』
『今日来たばかりだからすぐには呼ばないようにね』

来たばかりというのにすぐに帰ってしまった。真っ白い空間にまた1人だ。ソラ君が居なければ机も椅子もない、本当に白いだけの空間。

『じゃあ僕はいつも通り仕事かな』

魂を司る神として、死んで魂となったものが次に生を受けられるようにする事が僕の仕事。その合間にソラ君にあったりグーフ達と話している。

『ソラ君に危険なことが起きなければいいけど』

転生する際にアイツから見つからないよう魂に少し細工をしているから大丈夫だとは思うけど。
他の神に興味を持たないやつだから僕達がソラ君に加護を与えてることも知らないはずだ。この空間に来ていることも知らない。

『旅に出ることになったんだし、アイツの動向にも注意しとかないと』

せっかく今世では楽しそうにしているんだから、人生を謳歌してもらいたい。
ソラ君がアイツにみつからないための方法を、今度グーフにも考えさせないといけないな。
ソラ君の(創ってくれる甘いものの)ためなら頑張ってくれるだろう



sideソラ


次の日…
俺たちは9の鐘がなる前に門の所に来ていた。サリアはまだ来ていない。
さて、どうしようか。このまま出ていってもいいんだけど…

「まさか行こうなんて考えてないよな?」
「ライド?」
「嬢ちゃん来るんだろ?なら待たないと」
「でも本当に来るか分からないし。9の鐘がなる頃ってお店も忙しいだろうし」
「サリアさんなら絶対に来ますよ。待つべきです」

ライドだけじゃなくてネルまでそんなこと言うなんて…。そんなに言うならちょっと待ってようかな。




「ソラー!!」

9の鐘がなる直前、2人が言った通りサリアが走って門のところに来た。お店も忙しいだろうに大丈夫なんだろうか。

「良かった。間に合ったんだね」
「本当は行こうかと思ったんだけど、2人が絶対に来るから待ってろって」

俺の言葉にサリアは溜息をつき、俺の後ろにいるライドとネルに頭を下げている。
そして顔を上げると俺にひとつの袋を渡す。

「なんだこれ?」
「お弁当よ。私が作ったんだからね。ちゃんと今日中に食べてよ」
「サリアが?」

確かサリアは料理が苦手だったはず。 ふとサリアの指を見ると全ての指に包帯が巻かれている。頑張ったんだろう。

「ありがとうサリア。嬉しいよ」
「う、うん。いいのよ」

サリアの気持ちが嬉しくて笑顔で感謝を告げる。サリアは顔を赤くしながら俯いてしまった。

「ソ、ソラ!また戻ってきてね!絶対よ!」
「うん。必ず戻ってくるよ。そしたら会いに行くから」
「絶対!絶対だからね!」
「分かってるよ。もうそろそろ行くね」

何度も言うサリアに驚きながらも約束する。俺としても村を出て初めて住んだこの街は村に次ぐ第2の故郷みたいなものだ。また遊びに来たいと思っている。
俺の言葉を聞いたサリアは安心したように頷いている。

気付けば既に9の鐘がなった後だった。最後にサリアに挨拶をすると俺たちは門を出た。

村を出る時も同じことを思ったかもしれないけど…これでようやく俺の旅が始まった。前回の1人とは違い今度は3人だ。楽しい旅になりそうだな。

胸踊る気持ちを抑えながら、次の街へと出発したのだ。

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