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新しい街
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sideソラ
「へへーん。驚かないでよ。じゃじゃーん!!」
そう言って俺は2人の目の前に1枚の紙を掲げた。2人が顔を近づけ書いてあることを読んでいる。
「なんだ?賃貸契約書…ってはぁぁぁあ?」
「家を借りたんですか?」
「そう!工房付きの大きな一軒家!!」
俺はライドの家を出てギルドに向かった。この辺りで家貸しはないかキースさんに聞くためだ。
キースさんの紹介で家貸し商人に会って、1時間もしないうちに家を決めてきた。本当は2人にも聞いた方が良かったんだろうけど、驚かせたかったから急いでしまった。
「ちょっと中心地からは離れちゃうけど3人で暮らせて、ライドもたくさん鍛冶できるよ。それにネルも家にいる間は魔法を解くこともできるし。俺も魔法の練習ができるか、ら…」
2人を見ると喜んでいる様子が見えない。もしかして俺はまたやってしまったのか。そう思うと徐々に声が小さくなってしまう。
「ごめん。俺また1人で暴走してた」
2人の前で下を向く。昨日ネルに酷いことをしたばかりなのになんで成長してないんだ俺は。2人に呆れられてないだろうか。
「いや、俺達のことを思ってくれたんだろ?嬉しいよ」
「はい。ありがとうございます」
「けど、一言欲しかった。まぁ決めちまったもんはしょうがねぇけどな」
「ライド、ネル…」
「ほら、さっさと家まで案内しろ。どんな家か見てみないとな」
「うん!!」
良かった。どうも前世の時の慎重さがぬけてしまい、今世ではどうにかなる精神でいる気がする。これ以上2人に迷惑をかけないよう気をつけないと。
「ここが俺達の家だよ」
ライドの家から徒歩30分。小高い丘の上に俺達の家があった。二階建てのレンガ調の家だ。
「大きすぎないか…」
2人は入口のところで立ち止まっている。うんうん。俺も始めみた時は驚いたもん。
目の前にある家は地球の一戸建てが縦横に2つずつ並んでいるような大きさだ。とても大きい。
「こんな家契約するなんて…高かったんだろ?」
「1年契約で金貨60枚かな」
日本円で月5万程。大きさの割に安いと思ったけど、中心街から離れていることや、工房付きの家を借りる人が滅多に居ないことで安くなったみたいだ。まぁそれだけじゃなかったけど。
「おまっ、そんな高いもの1人で決めるなよな」
「ごめん。次からは2人に相談する」
「ったく…少しずつ金は返すからな」
「私も。時間はかかると思いますが必ず返します」
「へ?」
2人の言葉に変な声が出てしまった。俺が勝手に決めたことだし、喜んでもらいたくて契約したものだ。要らないと説明したが2人は頑固として譲らなかった。
「わかったよ。2人からもお金を受け取るよ」
「わかればいいんだよ。それより隠してることは無いな?」
ライドの言葉にドキッとしてしまう。ライドの目を見ることが出来ず目線が泳いでいる。
そんな俺を見たライドは額には怒りマークを浮かべそうな形相だ。
「ソ~ラ~!!」
「ごめんこめんって。言うからその不吉なオーラ抑えて!!」
怒った顔のまま近づいてくるライドを宥める。もう既に終わったことだから言わなくていいと思ってたんだけどな。
「実は…この家、幽霊が居たんだ」
「はぁ?幽霊?」
ライドは信じてなさそうな顔をしている。そうだよな。見てないもんな。でも本当なんだけど。
「ライド信じてないだろ。本当なんだからな」
「けどそんな気配しないぞ?」
「だって俺が浄化させたからな」
「ソラさんが?」
「うん。来た時には目で見えるほどの幽霊がたくさんいたけど、覚えてた聖魔法を適当に発動させたらいつの間にか消えてた」
「まったくお前は…」
ライドが呆れているのがわかる。そんなおかしなことをしたのだろうか。ネルの方を見てもライドと同じ感じだ。
「ま、まぁお前が規格外なのは今更だ。家の中も見るぞ」
玄関を開け中に入る。家の中もやはり広いが長年借りる人が居なかったからだろうか、埃を被っている。あとは前の住人が置いていったと思われる家具もいくつかあった。
俺たちは部屋を見て周りながら全ての窓を開けていく。
「まずは掃除だな。こう埃っぽいのは鼻がムズムズする」
「掃除なら任せて」
俺の創造魔法の1つ“ミストストーム”を唱える。ミストストームは水魔法と風魔法を融合させたものだ。
水魔法で埃に水分を纏わせ重みで床に落とし、風魔法で一箇所に集める。あとはその集めた埃を拾って捨てるだけだ。
「へぇ、便利な魔法なんだな。でもソラにだけ任せるのは嫌だから、俺達も手伝うよ」
「はい。けれど掃除道具がありませんね」
「俺の家にあるんだけど遠いからな…」
「じゃ俺取ってくる。スキルも使って走れば10分ぐらいで戻って来れるから」
「そうか。じゃお願いな」
「行ってきます!!」
俺は2人を家に残して掃除道具を取りに行った。10分後に戻ってくると、家の中にあった家具が一通り庭に出されている。
「お、ソラ早かったな。勝手だとは思ったが家具を全部出させてもらった。使う使わないにしろ一度綺麗にしたいしな」
元々広い家だったが、家具が無くなったことにより更に広く感じる。物が無くなった家の掃除をする。俺がミストストームで埃を集め、2人は埃を回収したり、窓を拭いたりしている。
広い家だが魔法を使ったこともあって3時間ほどで住める程度には綺麗になった。
「よし。これで良いな。家具は意外と壊れてて使えないものの方が多いな。明日にでも必要な分を買いに行くか」
「2人が良いなら俺が創造で作るよ。ほら」
2人の前に試しに食事用テーブルを作る。村で作っていたような4人で使えるシンプルな四角いテーブルだ。同じように椅子も4脚作る。
「へぇ、本当に便利だな。ソラの負担にならないならお願いしていいか?」
「うん!!ネルはどうする?」
「では私もお願いします」
「任せて。こんな風に作ってほしいとか希望があったら2人とも言ってね」
俺は2人の希望を聞きながら、それぞれ決めた部屋に家具を作っていく。作りながら幾つか約束をさせられた。これから家具等が壊れた場合は買うこと、修復スキルもあるけど俺にばかり負担をかけるのはダメらしい。家の外で創造を使わないこと、これは父さんたちに言われたことと同じだ。創造するのは俺の村にあったものか、この街にあるものだけ。もし見たことの無いものを作ると大事になるからだって。味噌や醤油は外に出さないことと2人以外には食べさせないことになった。
「へへーん。驚かないでよ。じゃじゃーん!!」
そう言って俺は2人の目の前に1枚の紙を掲げた。2人が顔を近づけ書いてあることを読んでいる。
「なんだ?賃貸契約書…ってはぁぁぁあ?」
「家を借りたんですか?」
「そう!工房付きの大きな一軒家!!」
俺はライドの家を出てギルドに向かった。この辺りで家貸しはないかキースさんに聞くためだ。
キースさんの紹介で家貸し商人に会って、1時間もしないうちに家を決めてきた。本当は2人にも聞いた方が良かったんだろうけど、驚かせたかったから急いでしまった。
「ちょっと中心地からは離れちゃうけど3人で暮らせて、ライドもたくさん鍛冶できるよ。それにネルも家にいる間は魔法を解くこともできるし。俺も魔法の練習ができるか、ら…」
2人を見ると喜んでいる様子が見えない。もしかして俺はまたやってしまったのか。そう思うと徐々に声が小さくなってしまう。
「ごめん。俺また1人で暴走してた」
2人の前で下を向く。昨日ネルに酷いことをしたばかりなのになんで成長してないんだ俺は。2人に呆れられてないだろうか。
「いや、俺達のことを思ってくれたんだろ?嬉しいよ」
「はい。ありがとうございます」
「けど、一言欲しかった。まぁ決めちまったもんはしょうがねぇけどな」
「ライド、ネル…」
「ほら、さっさと家まで案内しろ。どんな家か見てみないとな」
「うん!!」
良かった。どうも前世の時の慎重さがぬけてしまい、今世ではどうにかなる精神でいる気がする。これ以上2人に迷惑をかけないよう気をつけないと。
「ここが俺達の家だよ」
ライドの家から徒歩30分。小高い丘の上に俺達の家があった。二階建てのレンガ調の家だ。
「大きすぎないか…」
2人は入口のところで立ち止まっている。うんうん。俺も始めみた時は驚いたもん。
目の前にある家は地球の一戸建てが縦横に2つずつ並んでいるような大きさだ。とても大きい。
「こんな家契約するなんて…高かったんだろ?」
「1年契約で金貨60枚かな」
日本円で月5万程。大きさの割に安いと思ったけど、中心街から離れていることや、工房付きの家を借りる人が滅多に居ないことで安くなったみたいだ。まぁそれだけじゃなかったけど。
「おまっ、そんな高いもの1人で決めるなよな」
「ごめん。次からは2人に相談する」
「ったく…少しずつ金は返すからな」
「私も。時間はかかると思いますが必ず返します」
「へ?」
2人の言葉に変な声が出てしまった。俺が勝手に決めたことだし、喜んでもらいたくて契約したものだ。要らないと説明したが2人は頑固として譲らなかった。
「わかったよ。2人からもお金を受け取るよ」
「わかればいいんだよ。それより隠してることは無いな?」
ライドの言葉にドキッとしてしまう。ライドの目を見ることが出来ず目線が泳いでいる。
そんな俺を見たライドは額には怒りマークを浮かべそうな形相だ。
「ソ~ラ~!!」
「ごめんこめんって。言うからその不吉なオーラ抑えて!!」
怒った顔のまま近づいてくるライドを宥める。もう既に終わったことだから言わなくていいと思ってたんだけどな。
「実は…この家、幽霊が居たんだ」
「はぁ?幽霊?」
ライドは信じてなさそうな顔をしている。そうだよな。見てないもんな。でも本当なんだけど。
「ライド信じてないだろ。本当なんだからな」
「けどそんな気配しないぞ?」
「だって俺が浄化させたからな」
「ソラさんが?」
「うん。来た時には目で見えるほどの幽霊がたくさんいたけど、覚えてた聖魔法を適当に発動させたらいつの間にか消えてた」
「まったくお前は…」
ライドが呆れているのがわかる。そんなおかしなことをしたのだろうか。ネルの方を見てもライドと同じ感じだ。
「ま、まぁお前が規格外なのは今更だ。家の中も見るぞ」
玄関を開け中に入る。家の中もやはり広いが長年借りる人が居なかったからだろうか、埃を被っている。あとは前の住人が置いていったと思われる家具もいくつかあった。
俺たちは部屋を見て周りながら全ての窓を開けていく。
「まずは掃除だな。こう埃っぽいのは鼻がムズムズする」
「掃除なら任せて」
俺の創造魔法の1つ“ミストストーム”を唱える。ミストストームは水魔法と風魔法を融合させたものだ。
水魔法で埃に水分を纏わせ重みで床に落とし、風魔法で一箇所に集める。あとはその集めた埃を拾って捨てるだけだ。
「へぇ、便利な魔法なんだな。でもソラにだけ任せるのは嫌だから、俺達も手伝うよ」
「はい。けれど掃除道具がありませんね」
「俺の家にあるんだけど遠いからな…」
「じゃ俺取ってくる。スキルも使って走れば10分ぐらいで戻って来れるから」
「そうか。じゃお願いな」
「行ってきます!!」
俺は2人を家に残して掃除道具を取りに行った。10分後に戻ってくると、家の中にあった家具が一通り庭に出されている。
「お、ソラ早かったな。勝手だとは思ったが家具を全部出させてもらった。使う使わないにしろ一度綺麗にしたいしな」
元々広い家だったが、家具が無くなったことにより更に広く感じる。物が無くなった家の掃除をする。俺がミストストームで埃を集め、2人は埃を回収したり、窓を拭いたりしている。
広い家だが魔法を使ったこともあって3時間ほどで住める程度には綺麗になった。
「よし。これで良いな。家具は意外と壊れてて使えないものの方が多いな。明日にでも必要な分を買いに行くか」
「2人が良いなら俺が創造で作るよ。ほら」
2人の前に試しに食事用テーブルを作る。村で作っていたような4人で使えるシンプルな四角いテーブルだ。同じように椅子も4脚作る。
「へぇ、本当に便利だな。ソラの負担にならないならお願いしていいか?」
「うん!!ネルはどうする?」
「では私もお願いします」
「任せて。こんな風に作ってほしいとか希望があったら2人とも言ってね」
俺は2人の希望を聞きながら、それぞれ決めた部屋に家具を作っていく。作りながら幾つか約束をさせられた。これから家具等が壊れた場合は買うこと、修復スキルもあるけど俺にばかり負担をかけるのはダメらしい。家の外で創造を使わないこと、これは父さんたちに言われたことと同じだ。創造するのは俺の村にあったものか、この街にあるものだけ。もし見たことの無いものを作ると大事になるからだって。味噌や醤油は外に出さないことと2人以外には食べさせないことになった。
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