転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ

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新しい街

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「魔物よけのお香なんてあるんだな」

キースさんは教えてくれなかったぞ。探索と風魔法で作った結界があるからなくても平気なんだが、あったらあったで便利だ。

「ハイエルフとしての知恵ですよ。他にも魔物が寄ってくるお香やメロメロになるお香まであります」
「そんなものが。おそるべしハイエルフ」
「なぁソラ、聞きたいことがあるんだけど」

ネルと話していると真面目な顔をしているライドに話しかけられた。やっぱり聞かれるよね。ネルにかけた魔法だったり、枷を外せるほどの魔力をもっていることだったり…。なんて答えよう。
この数ヶ月ライドと一緒に任務を行ってきて、信頼している。全部は無理だけど俺の事話しても今まで通り接してくれるとは思う。けどやっぱり怖いと思ってしまう。目を強く瞑りライドの問いかけを待つ。

「この肉美味いな!!お前が作ったのか?」

ライドは手にもっているサンドイッチを俺に見せてくる。中には照り焼きチキンを挟んである。この世界には調味料が少なく醤油がなかったため創造で出したのだが、味はバッチリだった。

「へ?」

思いもよらない問いかけに俺は間抜けな声を出してしまった。ついでに間抜けな顔もしているんだろう。ネルも思いもよらない質問だったんだろう。ライドの様子に呆気を取られている。

「なんて顔してんだよ」
「いや、その、魔法のこと聞かれると思ったから」
「まぁ気にならないって言ったら嘘になるけどよ。ソラが言わないってことは何か事情があるんだろ?
鍛治職人として何も出来なかった俺を救ってくれたソラを信じてるんだ。ソラが話したくなったら話してくれよ。なんてったって俺はソラの専属の鍛治職人だから。ソラがどんなやつでもずっと一緒にいるつもりだ」

ライドの言葉に目頭が熱くなってくる。両親以外にこんなにも俺の事を信じてくれる人がいるとは思わなかった。だから俺もライドを信じよう。俺の全てを伝えよう。彼なら笑ってくれるはずだ。

「いや、話すよ。聞いてくれる?」
「あぁ」
「私は少し遠くで魔物が来ないか見張りをしています」

ネルは立ち上がるとこの場から離れていった。探索で十分に離れたことを確認するとライドと向き合い口を開く。

「実はーーー」








「ってことで、俺は人よりも魔力量があるし、魔法も使えるんだ。ほら、これみて」

俺はライドにリャド神の加護を貰っていることや全属性の魔法が使えること等を話した。流石に前世の事は話さなかったが、ライドは笑うことなく俺の話を聞いてくれた。
ステータスも隠蔽魔法を使わずありのままを見せる。

「へぇ。すごいな。ってソラ俺より強いじゃないか!!今までソラを守ってたつもりだったけど、守らなくても良かったっなことか?うわー恥ずかしい」
「い、いや。ライドが接近戦を引き受けてくれるおかげで俺も魔法を出しやすかったし、必要だったよ」
「本当か?ならいいけど」

俺はステータスカードをカバンに仕舞う。目の前には創造で作った醤油や味噌が置いてある。初めて創造を見たライドは子供のように喜んでいた。

「その創造では武器は作れないのか?グーフ神の知識もあるなら大丈夫そうだけど」
「俺もそう思って1度作ってみたんだけど」

そう言ってアイテムボックスから刀を取り出す。見た目はしっかりとした剣だ。けれどけれどこれで攻撃しても相手は傷つかないなまくらな刀だ。

「うーん。見た目は立派なんだけどな。これには鍛治職人の魂が入っていない感じがするな」
「た、魂!?」
「本物は入ってねぇよ。武器ってのは鍛治職人が魂を込めなが作るものだからな。その魂のこめ具合で武器の善し悪しも変わってくると言われている。だからじゃないのか?」
「そうなんだ」

俺の作った武器が使えないのはそんな理由か。まぁ武器はライドが作ってくれるからわざわざ創造で作らなくてもいいんだけどな。

話が終わると奥の方からネルがやってきた。俺たちが話している間に来た魔物は数匹だけだったようで難なく倒しましたと報告された。

「よし。今日はもう寝て明日頑張るぞ」
「私は起きて見張り番をしておきます」
「順番に見張りをするから。ネルも交代したらちゃんと休んでね」

ネルが魔物よけのお香をたいてくれたおかげで近くまでは来ても、ここまで襲ってくる魔物はいないだろう。それに明日は鉱石採取もあり体力勝負だ。ちゃんと休んでおかないと倒れてしまう可能性がある。

「大丈夫です。私は奴隷ですし、体力もソラさん達の何倍もあるので」
「今は奴隷じゃないだろ。それに女の子が1人で見張りするのも俺は良しとしないよ。なぁライド」
「そうだな。俺たちはそこまで頼りなくないぞ」
「……わかりました。ちゃんと休みます」
「ありがとうネル。俺が次で最後がライドだからね。俺が起きなかったら起こしてよ」

ネルにそう告げるとアイテムボックスからタオルケットをとりだす。野営をする可能性があると分かってから入れたものだ。普通のタオルを繋ぎ合わせたものだから少し不恰好だけど寝る分には問題ない。

(初めての洞窟…色々あったな)

白銀の獅子を見つけたことから、パーフェクトヒールを使用したこと、ライドに俺の秘密を教えたこと……。なんだか今日一日でとても疲れた気がする。
見張り番を変わるまでにしっかりと休まないと。

俺は適度な疲労感もあり、目をつぶると直ぐに意識を手放した。

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