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新しい街
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しおりを挟む「どんな依頼にしようかな」
次の日、俺は早くから冒険者ギルドに来ていた。案の定朝早くに目が覚めてしまったのだ。少し眠たいが、目の前にあるたくさんの依頼書を見ると心躍る。
依頼は最低ランクのFから上はCランクまで貼ってある。Bランク以上は数が少ないらしく受付に行って確認するらしい。
俺は自分の受注できるE、Fランクの依頼書を探す。
「薬草集めと…害虫駆除、ゴブリン退治はEランクか」
最初は無難に薬草集めかな。村でもしてたし鑑定を使うなら早く終わるだろう。そういえば依頼の失敗にペナルティとかあるんだろうか。あとでキースさんに聞こう。
「ペナルティはあるよ。EFランクの依頼は銀貨1枚、CDランクの依頼は金貨1枚。Bランク以上はペナルティはないけど、明らかに達成できなさそうな冒険者にはそもそも依頼を教えないからね。
それと依頼の失敗が5回貯まると降格処分になるから気をつけてね」
「はい。ありがとうございます」
キースさんは昨日と同じように分厚いメガネにもっさりとした髪の毛だ。だけどこの見た目のおかげで待つことなく話を聞けている。
チラッと横を見てみると受付の女の人の所に長蛇の列が並んでいる。依頼を受けるにもあれなら時間がかかりそうだ。
「それより初めての依頼は決めたのかい?」
「あ、これを受けようかと」
俺は掲示板に貼ってあった依頼書をキースさんに渡す。選んだのは薬草採取だ。
受け取った依頼書を読んだキースさんは判子を押したあと、依頼書を、返してくる。
「サンシの葉。50個だね。はい。これで受注出来たことになるよ。ちゃんと達成できたか確認するからその依頼書はなくさないでね。
採取する薬草について話を聞く?」
「お願いします」
知ってはいるが俺の知識と違っていてはいけないから聞いておこう。俺の知らないこともあるかもしれないし。
「今回採取してもらうのはポーション作りに必要な薬草でサンシの葉って言うんだ。名前の通り葉っぱが3枚ついているから見つけやすいはずだよ。
それと気をつけないといけないのがサンシの葉に似ているヨンシの葉。こっちは猛毒だ。葉っぱが4枚なんだけど、1枚はとても小さく他の葉に隠れるように伸びてるから裏側を見ないとサンシの葉と見分けがつかないんだ」
うん。俺の知っていることと違いはないな。これなら鑑定ですぐさま採取出来そうだ。
「わかりました。じゃぁ行ってきます」
「門番に依頼書とギルドの会員証を見せれば直ぐに出れるからね。気をつけて」
キースさんに挨拶をして走って門へと走っていく。初めての依頼に出発だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クアールの街を出て歩くと1時間ほどで森につく。俺のいた森とは違う場所だけど、木に囲まれるとやっぱり落ち着く。
「んじゃ薬草採取しますか」
俺は目に見える範囲で鑑定をかけ、サンシの葉を取っていく。根から抜くのではなく、茎からポキッと折っていく。こうすると、折った所から葉っぱが生えてくるからだ。
サンシの葉の中にヨンシの葉も混ざっている。ぱっとみただけでは区別がつかない。ギルドで話を聞いたり、俺みたいに鑑定を持っていないとわからず採取しているんだろう。
こんなものかな。1時間ほどで目標値である50個を過ぎて80個ほど集めた。俺が鑑定出来る範囲は半径1キロ。この6年間少しずつ範囲を広げていったらこんなことになった。
この鑑定のおかげでどこに葉が生えているのかすぐに分かるから探す手間が省けた。
薬草を数えやすいように10個ずつに分けて纏めておく。これは前世からの知恵だ。バラバラに出されるよりも、纏めて渡された方が渡された方も数えやすい。
「最後にもう一度だけしてから帰ろうかな」
もう一度鑑定を行う。この森にいるのは俺を除くと森の生物ばかりだった。先程から鑑定を繰り返しておりそれは間違いない。
それなのに今回の鑑定ではそれ以外のものが鑑定された。
「なんだ?獣人…?瀕死!?しかもこの名前…」
目の端に見えるステータスの色が赤く表示されている。これは死の淵にいるもののステータスの色だ。村では死にかけのオオカミがこんな色をしていた。体力をみると5/220となっている。近くにはゴブリンも数匹いるようだ。
「急がないと」
今までの鑑定で出ていなかったのは鑑定の範囲外だったからだろう。ということは鑑定した人物は1キロギリギリの場所にいるということだ。ゴブリンも数匹いる事だし急がないと死ぬかもしれない。
俺は速度強化の魔法を使い鑑定した人物の場所まで急ぐ。
走って数十秒。目の前に獣人の男とゴブリンが5匹いた。男の方は血を流しているが、体力は先程から変わっていない。血も致死量ではない。ならまずはゴブリン退治だ。
俺は青年とゴブリンの間に立ち昨日買った剣を構える。
ゴブリンはいきなり現れた俺に驚いたが、見た目も幼い俺に負けると思っていないのか仲間同士で笑っている。
「笑っていられるのも今のうちだ」
俺は一蹴りでゴブリンとの間合いを詰める。速度強化もつけていたのでほんの一瞬だ。
そのまま剣を振り下げゴブリンを一体倒す。
(ゴブリンを倒すのは初めてだけど、オオカミと変わらないな。これなら勝てる)
ゴブリンは倒された仲間を見てようやく危機感を覚えたのか、敵を見るような目で俺を見ている。すぐに倒せそうだけど、後ろの青年を人質に取られると面倒だ。
土魔法を使いゴブリン達の下半身に土を盛って動けないようにする。
ゴブリン達は抜け出そうとするがビクともしない。俺は動けなくなったゴブリン達にトドメを指していく。
呆気なく終わった戦闘に安堵する暇なく血を流している青年の方に走りよる。身体には浅い剣傷が無数にある。ゴブリン達が逃げる獲物をジリジリと弱らせるためにつけたんだろう。
治癒魔法を使い傷を塞ぐ。そのまま体力回復の魔法もかけていく。
もう一度鑑定をすると体力が全部回復しているのを確認する。先程までは眉を寄せていた顔も今では穏やかに眠っている。
「このままじゃダメだよな」
自分よりも体格の良い獣人を運ぶ術を持たない俺は、青年が目を覚ますまでこの場所で休むことにした。
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