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第四章 エンディングのその後の世界
お悩み解決はのんちゃんにお任せ?
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ピッタリ閉じていたはずの窓がふわりと開き、案の定アロイスがいつものラフな姿でヒラリと部屋に入ってきた。
「のんちゃん、立ち聞きしてたの?」
にらみつける私にニコッと笑って肩をすくめてみせるのんちゃん。
そりゃ素敵な笑顔ですけど騙されないからね!
「悪気があったわけじゃないんだよ。今日という晴れの日を一緒に祝ってくれる婚約者にプレゼントをと思って訪ねてきたら先客がいたからおとなしく待っていたら勝手に聞こえてきたんだ。」
はい。と渡されたのはエメラルドグリーンの枝葉に桜によく似た小さな花が咲き誇るスノーホープの花束だ。
何を隠そうこの花、のんちゃんが開発したもので綺麗なだけでなく強力な毒消しにもなる優れものなのだ。
「毒殺ルートがあったから用心のために開発したけど素敵でしょ?
ちょうど俺たちの色だし二人の名前をつけてみた。」
そうやってニコニコしていたまだ少年らしかったアロイスが懐かしい。
今ではすっかり大人に成長したアロイスの色気混じりの笑顔は向けられた人によっては凶器になりかねない。
私はだいぶ免疫がついてるけどね。
「ありがと。でもねのんちゃん。いつも言ってるけど窓から入ってくるのはやめて。
女同士の話を立ち聞きするなんて…」
「そうですわよ、お行儀が悪いですわアロイス。」
「まぁまぁいいじゃないこの姿になるからさ。」
アロイスは瞬く間に妖艶な美女の姿に変わってみせる。
「リノアになったからってダメなものはダメだよ。」
リノアの姿もちゃんと成長させているあたり芸が細かい。
なんて感心してる場合じゃなかった!
のんちゃんは素知らぬ顔でちゃっかり席につき魔法で自分の分の紅茶を増やす。
「そんなにカッカしないで。イライザの悩みを解決するのが一番でしょう?」
「そういえば…違うってどういうことですの?」
イライザはもう丸め込まれている。そんなに切羽詰まってるんだね。
仕方なく私も席に戻り紅茶を口に運ぶ。
「単純な話だよ。リークが最近触れないようにしてるのはイライザを守るためさ。」
のんちゃんの言葉に私とイライザは顔を見合わせる。
「私を守る?…まさかリークは誰かに狙われているとか?」
イライザの言葉にのんちゃんはケラケラ笑いながら手を振って否定する。
「違う違う、鈍いなぁイライザ。
守ってるのはリーク自身からさ。
なんたって俺たちお年頃だしね。
それにイライザ最近さらに磨きをかけてるから手を出したら歯止めが効かなくなりそうなんでしょ。
心当たりないの?」
イライザはポカンとした様子でアロイスを見ていたけどしばらくしてみるみる真っ赤になった。
「あっ、やっぱり心当たりあるんだ?
なんだかんだ言って日頃から仲良いしね。二人。」
からかうようなのんちゃんの言葉にイライザは勢いよく頭を横にふっている。
え~なんか、一人置いてかれてる気分で寂しいなぁ。
気持ちが視線に表れていたのかイライザは私を見て慌てた様子で身を乗り出す。
「マリーそんな目で見ないでちょうだい。
べ、べ、別に私たちそんな…」
「破廉恥な事はしてません。って?」
ニヤニヤ口を挟むのんちゃんの腕にイライザの扇子が振り下ろされる。
のんちゃんが大げさに痛がる中、ノックの音がしてアイリーンが声をかけてくる。
「失礼します。リーク・イシェラ殿下がお越しで…」
「入るぞ~マリー。」
アイリーンの先触れを遮るように声をかけてリークがのしのし入ってくる。
さすが卒業生代表も務めるだけあって白地に金の縁どりがあるかっちりとした詰襟の正装を着こなしまっすぐこちらに向かってくる。
「イライザ、今日くらい自分の部屋で待ってたらどうなんだよ。ほら。」
リークは持ってきた白いバラの花束をポンとイライザに渡し、中から一本を抜き取りイライザの髪に優しい手つきで差し込む。
「なっ、自分でできますから。」
ワタワタと動くイライザを押し止めるようにリークはその肩に両手を乗せ屈んで顔を覗き込む。
「俺がやりたいんだ。今日は特別な日だからな。」
それからイライザの耳元に口を寄せ
「何かごちゃごちゃ心配してるみたいだけど、気にすんな。
お前のことはよく分かってるつもりだからよ。
今は望み通り節度を保つ。
こないだのキスの続きは婚姻関係になってからな。」
そう囁くと体を起こし嬉しそうにニヤニヤしている。
こういう時の顔は小さい頃と変わらないよね。
イライザは顔を真っ赤にしてサッと取り出した扇子を広げ慌てて顔を隠している。
2人は完全にこちらには聞こえてないと思ってるみたいだけど私の耳の良さはあなどれないよ?
のんちゃんは聞こえてるのか聞いてないのか分からないけどアロイスの姿に戻って自分が持ってきたスノーホープを魔法で加工しながらおろしていた私の髪にスイスイ編み込んでいく。
「わぁ、ありがとう。」
アイリーンがすかさず持ってきた鏡には後ろで一本、綺麗に編み込まれた三つ編みが映っている。
「崩れないように固定魔法もかけてあるから。」
のんちゃんはパチッとウィンクをすると三つ編みを片手で持ち上げうやうやしくキスをしてみせる。
時々キザな事してくるのはお父さんの影響かな~
ぼんやりとその様子を眺めていると、いつの間にかイライザとリークに注目されている。
「ま、マリーはすごいですわ。
よく平然としていられますわね。」
顔を真っ赤にしたままパタパタと扇子で顔を扇ぐイライザ。
「う~ん、だいぶ慣れたからかな?」
「苦労して刷り込んだからね。
リークも逃げられたくないならコツコツ慣れさせていかなきゃ。」
満面の笑みののんちゃんにリークはつまらなそうにケッとガンを飛ばしている。
「悪かったね、お前みたいに女の扱いに慣れてなくて。
慣れさせたいけど怖がらせたくないし俺だって色々考えてんだよ。」
「嫌だなぁ、マリーに誤解されるような言い方はよしてよ。わざとでしょ?」
ワイワイ言い合っているうちに時間がきてしまい皆んなで式典へ向かう。
結局イライザの悩みはどうなったかなと気になりこっそり話しかけたら、
「悩んでいるのが私だけじゃなかったと分かってなんだか安心しました。」
と嬉しそうに笑っていたのでホッとした。
「のんちゃん、立ち聞きしてたの?」
にらみつける私にニコッと笑って肩をすくめてみせるのんちゃん。
そりゃ素敵な笑顔ですけど騙されないからね!
「悪気があったわけじゃないんだよ。今日という晴れの日を一緒に祝ってくれる婚約者にプレゼントをと思って訪ねてきたら先客がいたからおとなしく待っていたら勝手に聞こえてきたんだ。」
はい。と渡されたのはエメラルドグリーンの枝葉に桜によく似た小さな花が咲き誇るスノーホープの花束だ。
何を隠そうこの花、のんちゃんが開発したもので綺麗なだけでなく強力な毒消しにもなる優れものなのだ。
「毒殺ルートがあったから用心のために開発したけど素敵でしょ?
ちょうど俺たちの色だし二人の名前をつけてみた。」
そうやってニコニコしていたまだ少年らしかったアロイスが懐かしい。
今ではすっかり大人に成長したアロイスの色気混じりの笑顔は向けられた人によっては凶器になりかねない。
私はだいぶ免疫がついてるけどね。
「ありがと。でもねのんちゃん。いつも言ってるけど窓から入ってくるのはやめて。
女同士の話を立ち聞きするなんて…」
「そうですわよ、お行儀が悪いですわアロイス。」
「まぁまぁいいじゃないこの姿になるからさ。」
アロイスは瞬く間に妖艶な美女の姿に変わってみせる。
「リノアになったからってダメなものはダメだよ。」
リノアの姿もちゃんと成長させているあたり芸が細かい。
なんて感心してる場合じゃなかった!
のんちゃんは素知らぬ顔でちゃっかり席につき魔法で自分の分の紅茶を増やす。
「そんなにカッカしないで。イライザの悩みを解決するのが一番でしょう?」
「そういえば…違うってどういうことですの?」
イライザはもう丸め込まれている。そんなに切羽詰まってるんだね。
仕方なく私も席に戻り紅茶を口に運ぶ。
「単純な話だよ。リークが最近触れないようにしてるのはイライザを守るためさ。」
のんちゃんの言葉に私とイライザは顔を見合わせる。
「私を守る?…まさかリークは誰かに狙われているとか?」
イライザの言葉にのんちゃんはケラケラ笑いながら手を振って否定する。
「違う違う、鈍いなぁイライザ。
守ってるのはリーク自身からさ。
なんたって俺たちお年頃だしね。
それにイライザ最近さらに磨きをかけてるから手を出したら歯止めが効かなくなりそうなんでしょ。
心当たりないの?」
イライザはポカンとした様子でアロイスを見ていたけどしばらくしてみるみる真っ赤になった。
「あっ、やっぱり心当たりあるんだ?
なんだかんだ言って日頃から仲良いしね。二人。」
からかうようなのんちゃんの言葉にイライザは勢いよく頭を横にふっている。
え~なんか、一人置いてかれてる気分で寂しいなぁ。
気持ちが視線に表れていたのかイライザは私を見て慌てた様子で身を乗り出す。
「マリーそんな目で見ないでちょうだい。
べ、べ、別に私たちそんな…」
「破廉恥な事はしてません。って?」
ニヤニヤ口を挟むのんちゃんの腕にイライザの扇子が振り下ろされる。
のんちゃんが大げさに痛がる中、ノックの音がしてアイリーンが声をかけてくる。
「失礼します。リーク・イシェラ殿下がお越しで…」
「入るぞ~マリー。」
アイリーンの先触れを遮るように声をかけてリークがのしのし入ってくる。
さすが卒業生代表も務めるだけあって白地に金の縁どりがあるかっちりとした詰襟の正装を着こなしまっすぐこちらに向かってくる。
「イライザ、今日くらい自分の部屋で待ってたらどうなんだよ。ほら。」
リークは持ってきた白いバラの花束をポンとイライザに渡し、中から一本を抜き取りイライザの髪に優しい手つきで差し込む。
「なっ、自分でできますから。」
ワタワタと動くイライザを押し止めるようにリークはその肩に両手を乗せ屈んで顔を覗き込む。
「俺がやりたいんだ。今日は特別な日だからな。」
それからイライザの耳元に口を寄せ
「何かごちゃごちゃ心配してるみたいだけど、気にすんな。
お前のことはよく分かってるつもりだからよ。
今は望み通り節度を保つ。
こないだのキスの続きは婚姻関係になってからな。」
そう囁くと体を起こし嬉しそうにニヤニヤしている。
こういう時の顔は小さい頃と変わらないよね。
イライザは顔を真っ赤にしてサッと取り出した扇子を広げ慌てて顔を隠している。
2人は完全にこちらには聞こえてないと思ってるみたいだけど私の耳の良さはあなどれないよ?
のんちゃんは聞こえてるのか聞いてないのか分からないけどアロイスの姿に戻って自分が持ってきたスノーホープを魔法で加工しながらおろしていた私の髪にスイスイ編み込んでいく。
「わぁ、ありがとう。」
アイリーンがすかさず持ってきた鏡には後ろで一本、綺麗に編み込まれた三つ編みが映っている。
「崩れないように固定魔法もかけてあるから。」
のんちゃんはパチッとウィンクをすると三つ編みを片手で持ち上げうやうやしくキスをしてみせる。
時々キザな事してくるのはお父さんの影響かな~
ぼんやりとその様子を眺めていると、いつの間にかイライザとリークに注目されている。
「ま、マリーはすごいですわ。
よく平然としていられますわね。」
顔を真っ赤にしたままパタパタと扇子で顔を扇ぐイライザ。
「う~ん、だいぶ慣れたからかな?」
「苦労して刷り込んだからね。
リークも逃げられたくないならコツコツ慣れさせていかなきゃ。」
満面の笑みののんちゃんにリークはつまらなそうにケッとガンを飛ばしている。
「悪かったね、お前みたいに女の扱いに慣れてなくて。
慣れさせたいけど怖がらせたくないし俺だって色々考えてんだよ。」
「嫌だなぁ、マリーに誤解されるような言い方はよしてよ。わざとでしょ?」
ワイワイ言い合っているうちに時間がきてしまい皆んなで式典へ向かう。
結局イライザの悩みはどうなったかなと気になりこっそり話しかけたら、
「悩んでいるのが私だけじゃなかったと分かってなんだか安心しました。」
と嬉しそうに笑っていたのでホッとした。
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