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第三章 魔法学園
異形の主からまさかの提案です
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緊張の糸が緩みそっと会場内を見回すと皆、突然姿を表した竜に固まっている。
「おい、アロイス。」
さすがというか、いち早く我にかえったのはリークでのんちゃんに近寄り困惑した表情で耳打ちしている。
「異形の主は年老いた竜じゃなかったのかよ?
実物を見たのは初めてだけどありゃどう見たって年寄りには見えねえんだけど。」
のんちゃんは少し強ばった表情で小さくうなずいている。
「おそらく封印中に再生したんだ。竜は休眠中に体の中から皮膚に至るまで全て新しく再生されて古いものを脱ぎ捨てる。そうして何千年と生き続けるからね。数百年やそこらじゃ再生は完了してないとにらんでたんだけど当てが外れたなぁ。」
「暴れられたらまずいんじゃね?」
「まぁ、この国と周囲三国が焼土になる程度で済めばラッキーってとこかな。」
のんちゃんの言葉にリークはもちろん私も固まってしまう。
冷や汗が吹き出してきた。
どうしよう、封印を解いたのは他ならぬ自分自身だ。
ギュッと体を締め付けられたような緊張が走る中、竜は周りの張りつめた空気を気にすることなくゆっくりと首を動かして壇上を見下ろした。
騎士たちにも一段と緊張が走り、剣が構えられる。
「この地を統べる王よ。騒がせてすまなんだな。
そして、国に混乱をもたらしたことも詫びておこう。
この地の均一を保つためとはいえ、いささか荒い手段であった。」
竜は偽ニリーナを見つめてからゆっくりと視線をアリアドネ様、のんちゃん、私へと巡らせる。
シュッと風を切る音がした。竜の巨大な尻尾がゆっくりと会場を一周するように弧を描いて床に着地し、一瞬の後会場内に残っていたたくさんの人々が崩れ落ちるように床に沈み込む。
壇上にいたたくさんの騎士や治療士たちも同様で変わらずに立っているのは陛下とエライザ妃、アリアドネ様とその背後に立つフードを被った一人の治療士だけだ。
一方私たちの方はのんちゃんに私、それにリークと少し離れた場所にいるアスターさん、ソリーさんにお父様だけが目を見張りながら立ちつくしている。
「無闇に混乱させることはない。
事情を知っている者だけで話せば良かろう?」
両手を組んでその上に顔を乗せくつろいだ姿勢をとった竜がのんびりそう話す。
「眠ってるみたいだ。」
慌ててイライザに駆け寄ったリークが立ち上がりながらホッとした様子で言い私たちも少し胸をなでおろした。
「えっ?待って。じゃあアスターさんとソリーさんも知ってるってこと?」
しれっと立ちつくしていた二人は顔を見合わせている。
「そういうことになりますわね。」
無邪気な笑顔を浮かべたアスターさんに続いてソリーさんもコクっとうなずいた。
お、恐るべき情報網。私以外はあまり驚いてないから当然のこと…なのかな…?
一人アワアワしている私を竜が面白がるように見つめていることに気づいて私は再び固まった。
「面白いものだ。同じ特性を持つもの同士似通うのだな。姿形は血のつながりで似るのは分かるが。」
そうしてのんちゃんに視線を戻し、フゥゥっと鼻から息を吐き出した。
「そなたをこの地に転生させたことは思わぬ幸運であった。いささか予想外すぎることもあるが。」
竜はのんちゃんの足元から肩にピョンっと飛び乗ったリーダーに目を向けながらゆっくりと瞬きをした。
「こたびの騒動の始まりを作ったのは我だ。巻き込んでしまったことを詫びたい。
そなたら各々望みがあらば叶えよう。
時空を司るものとして多少の無理は効く。
転生する以前の地に魂を戻してやることもできるぞ。
特にそなたは早く帰りたいと常々言っておったであろう?」
急に話しかけられた相手はアリアドネ王弟妃様だった。
本人も、まさか自分が話しかけられると思っていなかったようで目を丸くして固まっている。
え?え?まさか…戻すってどういうこと?アリアドネ様がこの国からいなくなっちゃうってこと?
「おい、アロイス。」
さすがというか、いち早く我にかえったのはリークでのんちゃんに近寄り困惑した表情で耳打ちしている。
「異形の主は年老いた竜じゃなかったのかよ?
実物を見たのは初めてだけどありゃどう見たって年寄りには見えねえんだけど。」
のんちゃんは少し強ばった表情で小さくうなずいている。
「おそらく封印中に再生したんだ。竜は休眠中に体の中から皮膚に至るまで全て新しく再生されて古いものを脱ぎ捨てる。そうして何千年と生き続けるからね。数百年やそこらじゃ再生は完了してないとにらんでたんだけど当てが外れたなぁ。」
「暴れられたらまずいんじゃね?」
「まぁ、この国と周囲三国が焼土になる程度で済めばラッキーってとこかな。」
のんちゃんの言葉にリークはもちろん私も固まってしまう。
冷や汗が吹き出してきた。
どうしよう、封印を解いたのは他ならぬ自分自身だ。
ギュッと体を締め付けられたような緊張が走る中、竜は周りの張りつめた空気を気にすることなくゆっくりと首を動かして壇上を見下ろした。
騎士たちにも一段と緊張が走り、剣が構えられる。
「この地を統べる王よ。騒がせてすまなんだな。
そして、国に混乱をもたらしたことも詫びておこう。
この地の均一を保つためとはいえ、いささか荒い手段であった。」
竜は偽ニリーナを見つめてからゆっくりと視線をアリアドネ様、のんちゃん、私へと巡らせる。
シュッと風を切る音がした。竜の巨大な尻尾がゆっくりと会場を一周するように弧を描いて床に着地し、一瞬の後会場内に残っていたたくさんの人々が崩れ落ちるように床に沈み込む。
壇上にいたたくさんの騎士や治療士たちも同様で変わらずに立っているのは陛下とエライザ妃、アリアドネ様とその背後に立つフードを被った一人の治療士だけだ。
一方私たちの方はのんちゃんに私、それにリークと少し離れた場所にいるアスターさん、ソリーさんにお父様だけが目を見張りながら立ちつくしている。
「無闇に混乱させることはない。
事情を知っている者だけで話せば良かろう?」
両手を組んでその上に顔を乗せくつろいだ姿勢をとった竜がのんびりそう話す。
「眠ってるみたいだ。」
慌ててイライザに駆け寄ったリークが立ち上がりながらホッとした様子で言い私たちも少し胸をなでおろした。
「えっ?待って。じゃあアスターさんとソリーさんも知ってるってこと?」
しれっと立ちつくしていた二人は顔を見合わせている。
「そういうことになりますわね。」
無邪気な笑顔を浮かべたアスターさんに続いてソリーさんもコクっとうなずいた。
お、恐るべき情報網。私以外はあまり驚いてないから当然のこと…なのかな…?
一人アワアワしている私を竜が面白がるように見つめていることに気づいて私は再び固まった。
「面白いものだ。同じ特性を持つもの同士似通うのだな。姿形は血のつながりで似るのは分かるが。」
そうしてのんちゃんに視線を戻し、フゥゥっと鼻から息を吐き出した。
「そなたをこの地に転生させたことは思わぬ幸運であった。いささか予想外すぎることもあるが。」
竜はのんちゃんの足元から肩にピョンっと飛び乗ったリーダーに目を向けながらゆっくりと瞬きをした。
「こたびの騒動の始まりを作ったのは我だ。巻き込んでしまったことを詫びたい。
そなたら各々望みがあらば叶えよう。
時空を司るものとして多少の無理は効く。
転生する以前の地に魂を戻してやることもできるぞ。
特にそなたは早く帰りたいと常々言っておったであろう?」
急に話しかけられた相手はアリアドネ王弟妃様だった。
本人も、まさか自分が話しかけられると思っていなかったようで目を丸くして固まっている。
え?え?まさか…戻すってどういうこと?アリアドネ様がこの国からいなくなっちゃうってこと?
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