悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

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第三章 魔法学園

クライマックスの始まり (偽ニリーナ視点)

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やたらと金ピカにした会場にヒラヒラ着飾った子供たちがはしゃいだ顔をして一人前の大人みたいに社交辞令丸出しで互いを褒め合ったり遠回しに牽制したりしているのを眺めるとまるでおままごとに無理矢理参加させられているようで虫唾が走る。

あの忌々しいスリジェの娘もおなじみの仲間に取り囲まれて嬉しそうに笑っている。
服の趣味はまぁ悪くない。一目見ただけで誰を意識して着ているかは丸分かりだし。あんな服を着るくらいあいつに惚れ込んでるってことはそれだけ今日の成功率も上がる。


馬鹿な男どもはあの娘に惚れ込んでるみたいだし、あの子が本当に好きなのは…っとそれぞれに散々焚き付けたから今日この会場では面白いことになるだろう。
婚約者がいながら将来有望な人物にばかり粉をかけ、もて遊び、本当に惚れ込んでる奴には捨てられる。

周りからの視線も厳しいものになるだろうし。あたりがキツくなればなるだけ絶望は深くなる。

ヒロインなんてなるもんじゃない。ハーレムルートなんて現実ではただの尻軽女。祝福なんてされるわけない。

あの笑顔が絶望に変われば…
あの強大な魔力が暴走すれば、必ず。必ず隙が生まれる。
聖女と謳われたあの子が作り出した空間を解き放つことができる。

そうして彼が目覚めれば…目覚めれば…

この当方もない長い年月。異形の主、竜について調べ尽くした。

竜の加護を受けた人間についても。

そうして分かったことは私を更に追い詰めるようなことばかり。

歳を重ねることも死ぬことも許されない身体。
着々と人外に近づいていく自身に恐怖を抱いて躍起になってあの子の封印を解こうと人の欲望につけ入り森を焼き払ったこともあった。森の守護者であるヴェルフィアウルフを減らさせてもみた。

そのどれもが大した成果もなくただ人間の欲深さばかり見せられただけだった。

快楽に弱く、満足を知らず、他人と比べたがり奪いたがる。

まさにこのままごとのような会場がその縮図のようだ。

見つめすぎたのかあの娘がこちらを振り返った。

出したままにしていた画面に彼女から私への好感度が現れる。

【-100%】

ニコッと無垢な笑みを振りまいてきた彼女に思わず後ずさる。

これほど嫌っている相手にあんな笑顔を向けられるなんて。

これだから人間は恐ろしい。

合わせるようにニコッと笑顔を返しながら私は身震いした。

あの娘と手を焼いていた男が転生者なのは分かっている。

あの娘がまだ幼かったあの日、あの頃籠絡していたリトア王国の王との謁見の間で読み取ったから。

瞬く間に成長した彼女がこんな悪女に成長するとは思わなかったけれど。

本当は赤ん坊のうちに奪い去って私が育てるつもりだった。

あの母親が、大した魔力もなかったくせに完璧に姿を消さなければこんなまどろっこしい手段を選ばずに済んだというのに。

イライラと思考を巡らせているうちに辺りがシンと静まり返っていた。
壇上に目をやるといつの間にいたのか皇太子となるエドワード王子が花束を持ってスピーチをしている。

あぁ、今はかなり薄れてきてしまった記憶のゲームのクライマックスにこれと同じ光景が流れていたな。

この世界に放り込まれる前の感情を久しぶりに思い出してしまった。
私は軽く頭を振って不要な感情を振り払う。

この大事な時に気を逸らしている場合じゃない。
私も急いで王子の言葉に耳を傾ける。

「今日、この記念すべき日に私は大切な決断をしたいと思う。そしてこの場にいる皆さんにその証人となっていただきたい。」

柔らかく優しげだが有無を言わさない響きに皆が大人しくしたがっているように思われる。

「この身をこの国をより良いものにすることに捧げ、王族の責務を正しく公平に行い励むことを改めて誓います。

そして、そんな私と共にその責任と戦い、いかなる時も手を取り合い助け合っていく相手を…


貴女に引き受けていただきたい。」

男性にしては華奢な白く美しい手がこちらに差し伸べられた。
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